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5.

 アンゴール王国。人類連合の加盟国の一つであり、ウィンター帝国に比べれば国力も国土も劣る中堅国になる。しかし、その歴史はウィンター帝国よりも古く、また各国との繋がりも多く、何よりも他国より高い技術力を持っていた。そのために中堅国家とはいえ、連合でも強い発言権を持っていた。



 しかし、そのアンゴール王国の歴史は魔王軍によって幕を閉じた。



「スネネネネネネ! 任務完了ですねえ!」



 アンゴール王国の王都全体が火の海にのまれていた。人々は死に絶え、家や家屋なども無残に破壊されて燃やされていく光景はまさに地獄そのもの。そして、王都の中心にある王宮ですらたった一人の魔族の手によって落ちてしまった。無論、王宮の者は全て皆殺しにされてしまった。多くの兵士達どころか文官や使用人まで。そして王族全員がその魔族に殺されてしまったのだ。



「スネネネネネネ! これでアンゴール王国は滅亡ですねえ。この国は技術力だけなら世界一、技術力だけなら! だからこそ、滅んでくれれば人類の技術力も低下は必須! いやぁー、我ながら大役をこなしてしまいましてねえ! スネネネネネネ!」



 無残に転がる国王と王妃、それに幼い王子と王女の死体を床に転がしながら笑うのは、魔王軍大元帥『サルク・リバー』。魔界の狐獣人と吸血鬼との間に生まれた魔族であり、狡猾で悪趣味な性格で有名だった。普段は吸血鬼らしい外見だが、身体能力や食生活は獣人に近い。骨魔法を駆使していやらしく戦うが、有事の際は巨大な狐に変身できる。魔王の信奉者だ。


「流石は魔王様ですねえ。魔王様の御業『爆獣破』は広範囲にまで及びますが、王都を丸ごと叩き潰されるとは部下の私でも恐怖を覚えますねえ」


 アンゴール王国の王都が陥落したのは、サルク・リバーとその軍だけの力ではない。魔王自らが王都に強大な一撃を放ち、戦力を大幅に削いだのが最大の要因だったのだ。サルク・リバーは戦力の八割を失ったアンゴール王国を攻めただけに過ぎないのだ。


「さてと、用事は済んだことですし今度はのこのこ遅れてやってきた勇者を相手にしてやりますか。イラス君が生き恥をかいてまで持ってきてくれた情報を生かしてね。スネネネネネネ……」





 アンゴール王国、その跡地にて、魔王軍大元帥サルク・リバーと二人の勇者が激突した。『魔法剣の勇者』と呼ばれるセイブン・ケロノスと若き『剣聖』ヘルメイト・カラボックだ。



ヘルメイト・カラボックは、黒髪に茶色の眼の少年で、魔法を使わずに、剣だけで戦う戦闘スタイルの剣士だ。若くして剣聖と言われるほど剣士として極めて高い実力を誇り、勇者たちの中で最強の剣士とも言われている。剣で戦うセイブンですら、『剣技だけはあいつに勝てない』と言わせるほどだった。


しかし、


「骨魔法『骨の川』!」


「お、おのれぇ! サルク・リバー、貴様あああああ!!」


「骨魔法『骨拾い』!」


「くそったれが! この外道のくそ野郎が!」


その最強の剣士と魔法剣の勇者の二人が、たった一人の魔王軍大元帥の前に追い詰められていた。全身傷だらけにされ、立つのもやっとだという状態、しかも二人とも満身創痍になってしまった。


「スネネネネネネ! 勇者のお二人さん、そう喚かれても困りますよ……この私も結構ヤバったのですから……イラス君が生き恥をかいてまで持ってきてくれた情報がなかったらねぇ……」


いやらしい笑みを見せるサルク・リバー。アンゴール王国を滅ぼした後に二人の勇者と交戦するのは計画通り。元々そのための準備と対策もしていたのだ。だが今は、その頭の中には一切余裕がなかった。率いた軍勢が壊滅し、ここにいる魔王軍が自分だけだというのだから。


(やはり甘く見すぎたようですね。イラス君はいい仕事をしてくれましたが、過小評価するべきではありませんでした。しっかりと準備と対策を練って作戦に臨んだのですがね。まさか、二人の勇者相手にこの私がここまで……)


 それというのもサルク・リバーも無傷ではいなかったからだ。胸の傷口を抑えて息を切らしかけている。それ以上に使える魔法ももはや限られているから余裕もない。だが、ここはあえて余裕を見せてこっちも危険な状態だと悟られぬように言葉を尽くしていた。


(もしも、セイブンとかいう子供が持っているあの『聖剣』が覚醒しようものなら……想像しただけで恐ろしい。これは先に葬ってやるべきですね)


「とどめです! 骨魔法『螺死魂ラジコン』!!」


「「っ!?」」


回転する骨の槍がセイブンに向かって飛ばされる。

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