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12.

――十年前――。



人類連合軍は戦争の終結を目的として、魔王の討伐のために少数精鋭を選んで魔界に送った。その時のメンバーは、若かりし頃のバイパーを含めて約十数人以上。その誰もが抜きんでた実力者であった。


このメンバーであれば魔王の討伐は成功する。当時のバイパーとメンバーの誰もがそう思っていた。



 だが、魔王にたどり着く前に作戦は失敗することになった。それは、魔界にそびえたつ魔王宮殿が見えた頃のことだった。精鋭部隊の前に一人の魔族が戦いを仕掛けてきたのだ。


 その魔族は、普段は竜の角が生えた青い毛皮の狸の獣人のような姿。本人曰く、魔界の竜人と魔界の狸獣人との間に生まれたらしい。数百年以上生きてきたため、魔王軍大元帥になる以前は魔王とはライバル関係にあったとか。


 その魔族の名はドラクン・エモン。魔族の老人にしか見えなくても侮ることなく本気で立ち向かった精鋭部隊を叩き潰した魔王軍大元帥。その存在を人類連合軍に知らせたのは、精鋭部隊の数少ない生き残りの一人だったバイパー出会った。





「ドラクン・エモン! 十年前に人類連合軍が送り出した精鋭部隊の九割を戦死させたのは間違いなく奴だ! ただの青狸のジジイなんかじゃない! 年寄りな分だけ戦いの知識と経験を積んできたと思え! そして、忘れるな! 奴には奥の手として、巨大な青い竜に変身する『竜化』ができるということを!」


「「「「「「……!」」」」」」



 いつになく興奮して語るバイパーの真剣さに他の勇者達も臨戦態勢に入る。彼らもまた、十年前の情報はしっかり頭に入っていたのだ。魔王軍大元帥の筆頭にして、誰よりも魔王に信頼されているとされる魔族の存在のことを。



「ほう。吾輩のことを知っているということは、あの時の小僧か。大きくなったものだな、人間の成長は速いものだ」


「なっ、俺のことが分かるのか!?」


「ああ、上司たちに『お前だけでも逃げろ』と言われて涙ながらに地上に戻った小僧が子様であろう? まさか十年後に勇者になるとはな」


「……っ!」



 バイパーは驚愕した。まさか、ドラクン・エモンが二十年前の精鋭部隊の生き残りが自分だと覚えていたとは思ってもいなかったのだ。十年前とは体格も外見も変わったというのに……。



「……はっ! まさか、あんたが俺のことを覚えていたとはな……!」


「あの状況で逃げ切れるとは吾輩も思ってもいなかったのでな。おかげで人類側に結構な情報が渡ってしまったと吾輩も悔やんでいたのだ。そういう意味ではこの再会は幸運だった。今度こそ十年前の吾輩の汚点をそそぐことができるのだからな、『竜化』!」



 ドラクン・エモンの体が青く光りだした。そしてみるみるその体が膨れ上がっていくのだ。まるで、別の生物に変わっていくかのように。いや、実際に巨大生物に変わろうとしているのだ。



「マズい! 竜化だ!」


「何だって! いきなりかよ!」


「ここで最後の魔王軍大元帥と戦うことになるのか!」


「バイパーさん! 頼りにしてます……よ?」



 七人の勇者の目の前に現れたのは、巨大な青い竜だった。顔つきがどことなく狸よりに見えるが、その巨躯は紛れもなく雄々しい竜そのもの。それこそがドラクン・エモンが竜化によって変身した姿だった。



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