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1.

―――『魔王』、それは様々な種族の魔族を統率し国家を興して軍隊をも構築する強大な力を持った魔族を指す存在にして圧倒的強者だ。そして今の時代は魔王が率いる魔王軍と地上の人類が戦争をする時代だったのだ。


 魔王軍の被害は多大なものであり、各国は人類連合軍を編成し魔王軍と戦争を繰り広げているが戦況を有利に動かすことが出来ず、どの国もその連合軍に有力な冒険者や傭兵を参加させて戦況打破を目指していた。


 しかし、それでも戦況は変わらず、戦いは奪い合い、殺し合い、憎しみ合うを何度も繰り返すばかりであった。 



 人類側が七人の勇者を選定するまでは。





 ウィンター帝国の領地にして今は人類と魔族が争う最前線のこの場所で、一人の若い魔法剣士の少年が魔法剣を振るっていた。



「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


「「「「ッあああああああ!!」」」」



 少年の魔法剣から発せられる斬撃は、敵を切り刻み、周りに衝撃波を起こし、絶大な力を発揮した。敵とは魔王軍であり、魔王軍五大元帥の一人『イラス・ティスィティ』もいた。



「くっ、一体何者なんだあの少年は!? この大元帥であるこの僕がこんなに追い詰められるなんて!」



 黒い豹獣人とダークエルフとの間に生まれた魔族であり、睨みつけている様にしか見えない目つきで青い瞳の美形で丸眼鏡の青年風の黒い毛皮の豹の獣人が驚愕で叫ぶ。彼こそがイラス・ティスィティだった。五大元帥の中で一番弱いが、作戦指揮官で参謀役を務める立場であり、有事の際は闇魔法と伸縮魔法を駆使して戦ったり巨大な黒い豹に変身できる。

 

 だからこそ、追い詰められる今も敵の分析を行っていた。



「あの少年……短くて濃い目の金髪に緑の瞳、そしてあの膨大な魔力による魔法と魔法を纏わせた剣を使って戦う戦法……そうか、あの少年こそが人類に選定された新米勇者『セイブン・ケロノス』か!」



 イラス・ティスィティの分析は正しかった。今、魔族とその将たる大元帥を追い詰める少年こそが後に『魔法剣の勇者』と呼ばれるセイブン・ケロノスなのだ。



「ちっ、とてつもない才能を持っているとして人類史上最強になれるかもなどと聞いてはいたが、これほどまでとは……! 悔しいがこれは撤退して作戦を根本的に組み直すしかない。情報も持っていかないと。伸縮魔法『ノビールノビーター』!」



 イラス・ティスィティは、伸縮魔法を駆使して腕を伸ばしたり足を伸ばしたりして、部下たちに撤退を指示しながら戦線を離脱する。



「全軍撤退せよ! 全軍撤退せよ!」



 魔王軍の撤退行動に気付いた少年――セイブン・ケロノスは、祖国で暴れた魔王軍を許さず、大元帥イラス・ティスィティを追い詰めようと突撃した。



「まてこらああああああ!! 逃げんじゃねえ、テメエ!! ぶっ倒してやる!!」



 このまま仕留める勢いで突撃しようとしていたセイブンだったが、味方の方から予想しなかった指示が下された。



「セイブン! もういい! 戻って来い! 深追いはするな!」


「はあぁ!? 何でだよ、オルカート!?」



 セイブンは振り返って指示を出した青紫の髪に青い瞳の少年に文句を叫ぶ。その少年とはセイブンの同僚であり、同じ勇者でもある『オルカート・ウィンター』だった。


 オルカートはウィンター帝国の皇子であり、希少な光魔法とそれを纏わせた剣で戦う『聖騎士』だ。立場では平民出身のセイブンよりも上なのだが、二人はそんなこと関係なく友人になっていた。



「ここから西側の地域で戦況がだいぶ不利になったとの報告が入ったんだ! おそらく、そこを守っているタヒナ達も追い詰められている可能性が高い!」


「何だって! タヒナが!?」



セイブンは血相を変えた。タヒナとはセイブンの幼馴染の少女のことであり、共に勇者に選ばれた戦友でもあり、セイブンの大切な恋人でもあるのだ。だからこそ、文句など失せて西の地域に走っていった。



「え、ちょっ、セイブン!? 回復は!?」


「そんな暇あるか! オルカートも一緒に来い! 逃げ出した大元帥の相手なんか無駄だかんな!」


「ああもう、さっきと態度が違うよ!」



 ……ということで、何とかこの場所を死守することに成功したセイブンとオルカート達は仲間が戦っている西の地域に向かうのであった。




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