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俺の影にはGがいる  作者: 赤の虜
第一章 小鬼スタンピード
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06 戦闘訓練

 ウェストリア王国の訓練場は高校の運動場の規模を大きくしたような所だった。もちろん、サッカーゴールや野球のネットなんてものはない。

 代わりに、兵士の打ち込み用の防具が何台か並んでいたり、弓道の的みたく魔法用の的である案山子が用意されていたりするけれど、基本は何もなかった。


「神使様方を昨日の今日でお呼びして申し訳ない。しかし、いつまでも魔王は待ってくれないのでな。今日は戦闘訓練を行うのじゃ」


 王様が即席で用意された壇上に立ち、その傍らにはいかにも冒険者らしい出で立ちの者達がいる。

 とはいえ、いきなり戦闘訓練を行うと言われても、誰も彼もが困っている人がいたら、一緒に魔王を倒そうなんて考えない。クラスメイト達は怪訝そうに王様を見ていたり、目線を逸らして居心地悪そうにしていたり、一部では睨んでいたりする。

 そんな不穏な雰囲気のクラスではあるが、彼らが不満を爆発させていないのは各人の自制心によるものではない。

 クラスのリーダーである天童君、彼のお願いという名の指令を忠実に守っているだけだ。

 おそらく、として言えないが。

 本来ならクラス内で内々で連絡が回っていたらしいのだが、ほら、俺達はクラスで浮いてるから。その連絡網には含まれていなかったらしく、さっき天童君が直々に教えてくれた。

 酷いものである。流石に今後の異世界生活全般に関わってくるような決定を伝達すらされないとは。


 つまり、我がクラスの決定は天童君に委ねられている、らしい。まあ、俺やナンちゃんとアマちゃんは従うなんて言ってないから、変な決定だったら即離脱する予定だけれど。


 こうして、不安の残った状態で戦闘訓練が行われることとなった。


 なんでも、俺達が神使様という人類の希望なので、他国から魔物退治のプロである冒険者、その中でもトップであるSランクの人達を招聘して鍛えてくれるらしい。

 彼らは固有スキルを使用する俺達に随時アドバイスをしてくれるから、じゃあ頑張ってくれ、とのこと。


 前半までは手厚いのに、後半が雑な王様だ。さては集中力がすぐに切れるタイプだな。


 まあ、生命線である固有スキルを把握し、使いこなすことはそのまま今後の生死に関わることだから、必要だとは思うよ。まあ、俺は一身上の都合により使う気がないだが。

 下手にGを出して、駆除されたくないからね。いくら押しつけれるように配下になったGとはいえ、名付けまでした配下なわけだし。


 +++

 かつら 栄作えいさく


 固有スキル:生むは易し▶

 配下:魔甲虫キング3/100、魔蜚蠊ミズキ、魔蜚蠊

 +++

 

 スキルウィンドウを開くと、何かよく分からない表示が増えているので、タップしてみる。


〈配下である魔甲虫キングがゴブリンを倒しました。一部の経験値が主に還元されます。〉

〈配下である魔甲虫キングがコボルドを倒しました。一部の経験値が主に還元されます。〉

〈配下である……〉


 …………。

 キングさん、めっちゃ魔物倒してる。

 このログみたいなやつ、スクロールできるくらいには魔物倒してるよ。

 直近だと、何を倒してるのかな……。オーガ倒してるな。強いな、キングさん。鬼強いなんてものじゃない、鬼より強いじゃないか。


 それともう一つ。

 一部の経験値が主に還元される。

 きっと、これが生むは易しにあった起源還元ってことなのだろう。

 強くなった実感がまったくないんだが。経験値が満タンになるまで変化がないのか、それとも微力ながら強くはなっているのか、どっちなんだろう。


 まあ、分からないことを気にしても仕方ない。

 今は目先の訓練を乗り切らなくては……。

 何せ俺は固有スキルを衆目に晒せないからな。

 ここは友人であるナンちゃんかアマちゃんと一緒に訓練でもして、乗り切ろう。


 そう思って、二人を見つける。


「いくぜっ! うおおおおおおお、チャージ!」

「ゴーレム生成、タイプ:クレイゴーレム!」


 片やナンちゃんが固有スキル:チャージによって、右拳に力を溜め、もう片方ではアマちゃんが固有スキル:ゴーレム生成によって、二メートルくらいの土のゴーレムを生み出していた。

 昨日、入浴時に聞いた話だと、ナンちゃんの固有スキル:チャージは自分もしくは自分が接触している非生物に対して、時間経過で力を蓄えることができ、いつでもその力を解放できるらしい。

 ただし、蓄えすぎると強烈な腹痛に見舞われて、トイレと親交を深めることになるのだとか。

 対するアマちゃんの固有スキル:ゴーレム生成は魔力を代価にして土や貴金属などでゴーレムを生成することができるらしいのだが、なんでも魔物を倒した数によって、魔力が増えたり、生成・維持できるゴーレムの数が増えたり、より強力な素材でゴーレムが作れるようになるらしい。

「つまり、レベルを上げれば最強というわけだよ」ということをすごいドヤ顔で言われた。少しイラッっとした。


 そんな二人の訓練は、しかし、一瞬で幕引きとなる。


「リリース!」


 ナンちゃんが放った拳から凄まじい拳圧が放たれ、クレイゴーレムが一撃で粉砕されてしまう。


「ああ、クレーイ!」

「勝ったぞー!」


 打ちひしがれるアマちゃんに、ナンちゃんの勝鬨が降り注ぐ。

 それにしても、二人とも固有スキルを使いこなすのが早い。

 早く俺も混ぜてもらわないと。


 二人に近づこうとした俺だったが、残念なことに一足遅かった。


「おう、桂じゃねえか。一緒に戦闘訓練しようぜー」


 クラスの厄介である俺ですら、面倒で相手をしたくない相手、住田厚。

 ちっ、なんだってこんなときに厚顔無恥の住田と鉢合わせになるんだ。お前は大人しく、Sランク冒険者さんに性根を叩き直してもらえばいいだろうに。


 確か住田はなんの固有スキルを得たのだったか、興味もなかったし、関わり合いになりたくなかったからチェックしていなかった。


「まさか、嫌とは言わねえよな? な?」


 肩を組んできて、ドラマで覚えてきたんですかと尋ねたくなるような芝居臭いオラオラを発揮する住田に、俺の気分は最悪となった。

 

「いや、普通に嫌だよ。住田君、友達じゃないし」


 とはいえ、相手が住田なら俺の口も饒舌だ。人間は本能的に格上とは会話を成立しないほど緊張してしまうが、同格もしくは格下と思っている相手にはペラペラと話せるものなのだ。


「あ? 聞こえなかったんだけど」


 言いながら、自分と俺の体を影にして、動きが少なく素早い腹パンをしてくる住田。

 嫌だな、俺は平和主義者だってのに何なんだ、こいつ。そんなに戦いたいなら天童君に挑めよ。まあ、負けるからやらないんだろうけど。


『ねえねえ、ご主人様ー。この人間やっていい?』


 俺の不快感を察知したのか、影からミズキの念話が聞こえてくる。若干ミズキの声色に怒りが含まれているような気がする。

 そう言えば、腹を殴られたわりに痛くない。もしやこれが起源還元の恩恵なのか?


(って、そんなこと言ってる場合じゃない! いくら住田だからってクラスメイトをやるのは駄目だ!)

『はーい、ご主人様がそういうなら我慢する。ふんっ』


 どうやら、ミズキの機嫌を損ねてしまったらしい。

 おのれ、住田め、毎度余計なことしかしないやつだ。


(あれ? 俺、今口に出してだっけ?)

『ミズキ達には念話で話せるよ、ご主人様』

(そうなんだ。……まあ、とにかくだ。住田をやっちゃ駄目だよ)

『……わかった。でも、ご主人様も気を付けてね。さっきの攻撃はミズキが守ってあげたんだから、後でいっぱいヨシヨシしてもらうんだからね』

(あれ、痛くなかったのって、ミズキが守ってくれていたのか。てっきり起源還元のせいかと……。ありがとう、ミズキ)


「おい、返事しろよ、ああん?」


 おっと、そうだった。まだオラオラ住田の対応中だった。


「わ、わかったよ。やればいいんだろ」

(ミズキ、防御よろしく)

『わかったー。ミズキの闇魔法でご主人様を守る!』


 頼もしい配下である。

 仕方ない。やりますか。まあ、俺はひたすらミズキを信じて、住田にやられたフリをするだけだがな。

 大根役者、桂 栄作を舐めるなよ!

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