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俺の影にはGがいる  作者: 赤の虜
第一章 小鬼スタンピード
25/25

25 決死の一騎打ち

 ゴブリンキング戦はこれで最後です。

 ルード村と魔界の境界で、俺は両腕を失ったゴブリンキングと相対している。

 俺以外にゴブリンキングに立ち向かう者はいない。

 セリーヌさん、ナンちゃん、アマちゃんはゴブリンキングによって、意識を失っている。すぐにでも安否確認をしたいけれど、それはゴブリンキングを倒してからだ。

 今はこの危険な状況を抜け出すことが第一だろう。


 このゴブリンキングの戦闘能力はこれまで俺が遭遇してきた魔物の中でも頭一つ抜け出ているので、傷を負っていることで慢心する気はない。そもそもが隻腕で俺達を圧倒したのだ。俺とこいつには大きな実力差があると思っていいだろう。

 とはいえ、ミズキ達魔蜚蠊には影に下がってもらっているから、俺がやるしかない。勝利を目指すならば、魔蜚蠊の助力を請うべきなのだろうが、今回はその選択をしたくなかった。

 こんな俺でも配下にいつまでも守られる自分に我慢できなかった。正直負けることは怖くない。もちろん、死ぬことは怖いけれど、負けることはこれまでの人生でわりとよくあったことだから。

 だが、何もせずに負けることは嫌なのだ。足掻くことなく、呆然としているうちに全てが終わることは我慢ならない。親友達が倒れ、幼馴染みとの明るい未来がある少女が倒れる中で、己の最善を尽くすことなく敗北する屈辱には耐えられなかった。

 あとは俺一人だってやれるという意地だろうか。下らない動機だと自分でも思う。


「今だ、ナンちゃん!」


 そんな動機だったからだろう、俺は勝てれば別にいい。正々堂々なんて興味がなかった。

 だから、俺の初手は嘘だった。

 俺の言葉に反応し、慌てて背後を伺うゴブリンキング。

 

 まんまと騙されてるぞ、王様。これで奇襲できる。


「雷撃」


 ゴブリンキングは咄嗟に回避しようとして、バランスを崩し、雷撃が直撃する。おそらく、両腕を失い、バランスをとることができなかったのだろう。ゴブリンキングは雷撃によって、全身から湯気が上がり、口を大きく開いて佇んでいる。

 普通の魔物なら致命傷となる雷撃だが、俺はすぐに腹部の痛みに耐えながら硬直するゴブリンキングへと駆け足で距離を詰める。


 キングさんからの起源還元によって、身体強化(小)が還元されている今の俺は常人よりも膂力があるので、肉弾戦も立派な戦闘方法として機能する。

 拳は握り締め、力の限り殴り飛ばす。喧嘩などの暴力行為から縁遠い日々を送ってこなかったので、拳に体重が乗らず、あまり威力はなかったかもしれない。

 それでも、体勢を崩しているゴブリンキングは地面へと倒れ込んだ。倒れた衝撃で目を覚ましたらしく、うわ言のようにゴブリンキングは何かを呟いている。


 くそ、こんなことなら王城で格闘戦の心得くらい聞いておけば良かった。いくら身体強化(小)があろうと使いこなせないなら宝の持ち腐れだ。


 歯嚙みしながら、続けて手を翳し、雷撃の照準をゴブリンキングに合わせる。

 魔力量が乏しくなってきているのだろう、吐き気がどんどん強くなる。

 だが、雷撃を使用しないという選択肢はない。現状では最も効果的にダメージを与えることができる攻撃手段なのだ。ならば、まだ俺の魔力量とゴブリンキングの耐久力とのチキンレースをする方が無難だろう。


「いい加減やられろ!」

「いやだいやだいやだいやだーーーー! しにだくなーーーい!」


 突如、暴れ出したゴブリンキングは体を転がすことで、雷撃を開始する。


 しぶといな! それに魔物のくせにやけに人間味のあることを言う奴だな。やりずらいったらない。それにもう吐き気がヤバすぎて雷撃撃ちたくない。


 ゴブリンキングはうつ伏せ状態から、足で地面を何度も何度も蹴り飛ばし、前のめりになりながら、前進しつつ体を起こし、勢いそのままに俺に向かって駆けてくる。


「ホラー映画みたいな起き上がり方で突っ込んでくるなよ!」

「しにたくなーーーーーい!」

「なら、魔界に帰ってろよ!」


 両腕がないゴブリンキングなら攻撃手段は足だろうと俺は予想する。

 しかし、ゴブリンキングは勢いのままに俺の腹に頭突きをしてきた。大剣で腹を抉られている俺には一番効く攻撃だった。


「くそ……人の弱点になんてことを!」

「死にたくない。おで……死にたくない!」


 ゴブリンキングは俺の腹部、それも傷口に思いっきり嚙みついてくる。

 激痛に声を上げ、のたうち回る。

 

 本当に不味い。このままだと俺が先に死ぬ。


 俺は無心でゴブリンキングの頭部に両腕を添える。


 今までは雷撃は空からしか放ったことがなかったが、これは自然現象の雷じゃない。雷撃はあくまでスキルだ。ならば、スキルとして俺の身体から放出することもできるはず。というか、できないと死ぬ。


「これで終わりだ!」

「自由に……なりたい! おでの邪魔……するなあ!」

「俺だって死にたくないんだよ! 勝手なことばかり言うな! 雷撃!」


 幸い雷撃は俺の腕から放つことができた。

 だが、本当に魔力残量が少なかったのだろう。吐き気を通り越して、俺の意識は遠のいていく。


 まだ……ゴブリンキングが死んだかどうか確認して……。


『ご主人様! 死んじゃいやだよ!』


 ミズキの念話を受けて、俺は下唇を嚙みしめ、痛みで意識を繋ぐ。

 雷撃の余波を受けたのか、全身が痺れて思うように動かない。加えて、体が重い。

 それでも、なんとか俺の上で黒焦げになったゴブリンキングを見ると、何かを呟いていた。

 仮にこれ以上ゴブリンキングに余力があるのなら、俺には対抗手段がない。そんな諦めと共に俺はゴブリンキングの呟きに耳を傾けてみた。


「かあ……ちゃん。おで……自由に……。みんなの分まで……死にたく……ないよ」

「…………はは。事情は知らないけど……そりゃあ魔物にも家族はいるよな」

 

 俺は深々とため息を吐き出す。


「……あー、後味悪い勝利だな」


 俺はそこで意識を失った。

 予約投稿のストックがなくなり、毎日投稿はもう無理そうです。とりあえず、一章までは早めに投稿する予定です。二章からは投稿までに1、2週間ほど期間をおく予定です。余力ないと精神的に辛いので。

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