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俺の影にはGがいる  作者: 赤の虜
第一章 小鬼スタンピード
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24 狂気の鬼王

「……ゴブリンキング」


 セリーヌさんの呟きに、俺はそれほど驚きはなかった。

 このゴブリンは普通のゴブリンよりもはるかに体つきが良いし、上位種にしても身長が大きすぎる。となれば、考えられるのはゴブリンキングかゴブリンジェネラルくらいだが、ゴブリンジェネラルという風格ではない。


 鋭い眼光に、隻腕、それに全身が傷だらけという既に瀕死な格好をしていても、そこから感じられるのは、弱々しさよりも歴戦の戦士と相対したようなプレッシャーだった。


 仮にこの個体がゴブリンキングだったとして、既に瀕死というのが気になる。

 もしかすると、ゴブリンの集落に向かった神使一行によって集落に大打撃を受け、逃げてきたのかもしれない。それならば、隻腕や傷だらけであることにも納得がいく。


「なあ、セリーヌさん。あのボロボロのゴブリンキング、俺達で戦ったとして勝てそう?」

「わかりません。私も実際にゴブリンキングと相対したことがない身です。討伐経験のある騎士の話は聞いたことはありますが……正直に言って、今回のゴブリンのスタンピードは異常なので、頼りにするのは危険かと」

「なるほど」


 要するに、何も変わらないということか。

 勘弁してほしいな。天童君よ、やるなら倒してくれよ。聖剣召喚なんてチートな固有スキルあるんだから、わざわざ逃がしてくれなくてもいいんだよ。そんなことされても俺達、死んじゃうだけだから。


 俺の嘆きなど知りもしない隻腕のゴブリンキングは、俺達を親の仇のように睨みつけ、声を発した。


「…で……たくない。ファ……った。お……ら……れば、もう……くていい」


 聞き取れなかったけれど、隻腕のゴブリンキングの俺達への怒りはひしひしと伝わってきた。

 戦闘は不可避だろう。まあ、後ろに俺が殴って気絶させてしまった村長を筆頭とする観客気分の村人達がいるからね。退路は味方によって塞がれているのだ。

 ……最悪。


「ナンちゃん、アマちゃん、随分とゴブリンキングさんがお怒りのご様子なんだけど、何か心当たりは?」

「さあ? 俺にゴブリンのお友達はいないから」

「俺にもいないな。……まあ、もしかすると昨日集落で暴れたときに顔を覚えられていたのかもしれないけど……」


 アマちゃんの予想に納得する。

 なるほど。ありそうな理由だ。言われてみれば、昨日調子に乗って集落にちょっかいを出したのは俺達でしたね。それは恨まれるな。


「お三方っ、来ますよ!」


 セリーヌさんの呼び掛けで、俺はすぐにミズキに念話をする。


(ミズキ、出し惜しみはなしだ。どうせもう魔力量は少ないからな。魔法の弾幕で短期決戦を狙う)

『うん、ミズキもそれが良いと思う。あのゴブリン、今までのどの魔物よりも強そうだから』


 そりゃあ、ゴブリンのキングだからね。当然だと思うよ。


 ミズキ達魔蜚蠊達約140匹が俺の体を這い回り、戦闘準備が完了する。

 本来なら発狂ものなのだが、今は隻腕のゴブリンキングの動きに注視しているので、あまり気にならない。というか、気にしていられない。


 俺は隻腕のゴブリンキングに手を翳す。


「魔力量が少なくて気分が良くないんだ。一撃で終わらせる! 雷撃!」


 俺が言い終わると同時、ゴブリンキングは予備動作もなく、弾かれるように真横に跳んだ。移動後、ゴブリンキングがいた場所に空から雷撃が落ちる。

 当然のように無傷で回避したゴブリンキングの表情が怒りで歪む。


「…………たくない。……たくない。な……えを……すしかない」

「ミズキ! 急いで弾幕を張れ!」

(わかった!)


 隻腕のゴブリンキングが持つ大剣が地面から持ち上げられるのを見て、俺は慌ててミズキに指示する。

 

 こちらに向けて、足を曲げ、突進寸前のゴブリンキングに魔蜚蠊達の色彩豊かな魔法の弾幕が浴びせられる。

 俺の視界に魔法が溢れる。


 ――――しかし。

 大剣を握り、円を描くように疾走し、弾幕から逃れるゴブリンキングの姿が一瞬、よぎる。

 避けられている!


 俺は急ぎ、コマのように方向転換して、ゴブリンキングの姿を追う。その動きによって、魔法の弾幕もゴブリンキングを追随するが常に一歩分、届かない。

 完全に出遅れたことを後悔していると、ゴブリンキングが反撃に出た。


 ワンテンポ有利になった中で、もう一歩大股で踏み出し、足が着地するまでの間に反転し、いつの間にか逆手に握った大剣を空中で俺に向けて投擲する姿勢をとった。


 そして。大気を裂くように大剣が俺へと直進してくる。

 意識が大剣に集中していたことが幸いして、魔法の弾幕が大剣の斜線上に重なり、衝突する。

 大剣は魔法の弾幕にも揺らぐことなく、接近してくる。反対に魔法の弾幕は次々となぎ倒されながらも、徐々に大剣の速度を低下させていく。

 だが、大剣の勢いを止めるには、決定的に一発一発の威力に欠けており、大剣はわずかに向きが変わるも、俺を射線上に捉えたままだった。


(ご主人様! 危ない!)


 大剣が俺の横腹をかすり、後方の木に突き刺さる。

 傷を押さえると、手のひらが血でべっとりと濡れていた。思い出したように傷口が鋭く痛み、その場に蹲る。

 ゴブリンキングは魔法の弾幕が止んだことで、這うような低姿勢で大地を駆け、俺の目前に。

 そして、無情にも走った勢いを乗せた回し蹴りを放ってきた。風船のように軽々と、俺は宙を舞い、受け身もとれずに地面に叩きつけられる。

 魔蜚蠊が緩衝材となり、衝撃はあまり伝わらなかったけれど、大剣に斬り裂かれた腹の痛みが消えない。


『ご主人様、しっかりして! 死んじゃやだよ! ご主人様!』

(大丈……夫、だから……ありがとう、ミズキ)

『でも、ご主人様っ! 血が出て……ミズキがいたのに……ミズキが守らないといけないのに……』


 ミズキの念話でなんとか意識を繋がれた俺は、首を起こし、なんとかゴブリンキングの動向だけは目で追う。

 次にゴブリンキングの標的となったのは、セリーヌさんだった。

 隻腕のゴブリンキングは唯一の武器であった大剣を投擲したので素手。加えて、戦闘開始からずっと隻腕であるので片腕、そして傷だらけである。

 対するセリーヌさんは騎士の鎧と剣を両手に持ち、万全の状態だ。

 だが、安堵はできない。俺の現状を思えば、あのゴブリンキングが多少の不利で楽に勝てない相手であることは確信している。


(ミズキ……、俺が怪我したのは俺のせいだから……自分を責めるなって)

『でも……ミズキが守るって約束したのに……約束したんだよ!』


 見た目に似合わず、本当に優しい子だな、ミズキ。

 俺は生死に関わる状況にもかかわらず、笑ってしまう。


 こんな優しい配下に頼ってばかりで情けないなあ、俺。


 一直線にセリーヌさんの眼前に迫るゴブリンキング。

 セリーヌさんの対処は上段から剣を振り下ろすというものだった。

 相手が前進し、慣性に身体の動きを制限されている中では、良い選択だとは思う。

 思うが……今回は相手が悪かった。


 ゴブリンキングは身体の負荷など考えない動きで、強引に斜めに踏み込み、側面からセリーヌさんの振り下ろした剣を殴り飛ばした。

 

 武器を失い、呆然とするセリーヌさんにゴブリンキングの裏拳が当たり、セリーヌさんは倒れてしまった。


「セリーヌさんに何してんだ、お前!」


 背後からナンちゃんのチャージ&リリースがゴブリンキングを襲うも、しゃがみ込むことで回避され、そこから腹部にカウンターをくらう形でナンちゃんも倒れてしまう。


 ……早く立たないと。

 

 俺は体を起こし、息も絶え絶えにゴブリンキングの動きに注視する。


 止まれ、止まれ……動きが止まれば、狙える!


 残るはアマちゃんだけだった。

 エイちゃんゴーレム一号を側に置き、五体のクレイゴーレムに盾とアタッカーを任せるために前衛に配置している。


 ゴブリンキングがアマちゃんに狙いを定めて駆け出す。エイちゃんゴーレム一号の土操作によって、足場を不安定にするも、ゴブリンキングはそのまま疾走するのを止めない。

 立ち塞がるクレイゴーレムにしても、鎧袖一触。拳に、蹴りをくらう度に粉々にされ、その度に再びクレイゴーレムを生成するが明らかに生成よりもゴブリンキングの殲滅速度が上回っていた。

 そして、あっという間にアマちゃんに迫り、最後の砦であるエイちゃんゴーレム一号と相対する。

 土操作によって生成された土製の対の巨腕がゴブリンキングに振り下ろされるが、ステップで簡単に避けられてしまう。速度差が大きすぎて、到底捉えきれていない。


 エイちゃんゴーレム一号は最後には己の手の平サイズの体で止めようとするも、一蹴。

 ゴブリンキングは見下ろす形で、アマちゃんの前に立つ。


「え……いや、これどうすれば……」


 遮るものは何もなく、アマちゃんの頭がゴブリンキングに鷲掴みされてしまう。

 必死に暴れるアマちゃんだが、ゴブリンキングの拘束が緩むことはない。


 俺はゴブリンキングの片腕を指差し、その様子を見つめていた。


 ゴブリンキングがアマちゃんを拘束しているので、雷撃は使用できないだろう。使用すればゴブリンキングだけでなく、アマちゃんにも雷撃が伝わってしまう。

 ならば、ここで放つべきは魔蜚蠊の魔法だ。だが、弾幕は雷撃と同様の利用で放つことができない。魔法を使うなら、一点集中。アマちゃんを拘束する隻腕を打ち抜かないといけない。

 

(ミズキ……俺が指差してるゴブリンキングの片腕、ピンポイントで狙ってくれ)

『でもでも……ミズキなんかにできるかな?』


 珍しく弱気なミズキ。きっと、俺に傷を負ったことで自信を無くしてしまっているのだろう。

 ……つまりは俺のせいか。


(できるさ。これまでゴブリンの大群にも他の魔物と戦ったときだって俺を守り続けてくれたミズキなんだ。今回はちょっと失敗したかもしれないけど、きっとできる)

『ご主人様……』

(信じてるからな、頼れる配下のミズキさん)


 ミズキはカサカサカサと、ゴブリンキングを指差す俺の指先に移動する。


『……えへへへ。ご主人様がそこまで言うならミズキ、がんばる!』

(おう、頑張れ)


 ここさえ、どうにかしてくれたら、後は情けないご主人様が引き受けるからな。


 俺の指先に大きな漆黒の槍が形成されていき、徐々に凝縮されていく。途中、凝縮を押し返すように槍が膨らみかけるが、ミズキが抑え込む。


『ダークスピア!』


 ミズキから漆黒の槍が放たれる。槍は一直線にゴブリンキングを目指して空を裂き、見事アマちゃんを拘束ゴブリンキングの隻腕を肘の部分で切断した。


『やった!』

「よく……やった」


 隻腕を切断され、ゴブリンキングは腕を無くした。

 そんな状態で、不意打ちに成功した俺に対して、射殺さんばかりの眼光を向けてきた。


『あ……でも、もうミズキも魔力がない! 待ってて、他に魔力の残っている魔蜚蠊を……』

「ミズキ……大丈夫。後は休んでいていいよ」

『でも、それじゃあご主人様が……』

「うん、一人でやるよ。幸い相手は両腕ないし、俺はキングさんから雷撃に、身体強化(小)なんてもらっているからね。余裕だよ」

『………………わかった』


 ミズキ達魔蜚蠊が一斉に俺の影に入っていき、戦闘できるのは俺だけとなった。


「……さて小鬼の王様、これから俺が完膚なきまでに倒してやるから覚悟しな」

「……まえたち………せば……になれる」


 俺とゴブリンキングの一騎打ちが始まった。

 今回はゴブリンキングのターンでした。

 栄作のターンは次回となります。

 また、神使一行についてはゴブリンキングとの戦闘を終わられてから触れていきつもりです。

 戦闘中に、画面が何度も切り替わると私が混乱してしまうので(; ・`д・´)

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