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俺の影にはGがいる  作者: 赤の虜
第一章 小鬼スタンピード
23/25

23 ゴブリンウェーブ

 Wi-Fiの調子が悪いせいで、下書き→スマホで打ち込む苦行。

 きつい!

 (*ToT)

 村長に思いの丈を吐き出した俺は、セリーヌさんと共にすぐに戦場に戻っていた。

 戦闘は相変わらず熾烈を極めているけれど、遠距離から弓矢や魔法で攻撃を加えてくる面倒なゴブリンがいないこと。そして、俺とミズキ達という高火力。最後にセリーヌさんという援軍が加わったので、戦線維持が容易になった。


 しかし、一向にゴブリンの無限ポップには終わりが見えないのも事実。いつ終わるのかという焦りが常につきまとい、落ち着かない。

 今ならあのゴブリンの大群が工場で大量生産されていますと言われても信じられるくらいには数が多い。

 辛い。逃げ出したい。


 俺達に余裕ができるにつれ、ゴブリンへの対処は変化していた。

 まず、エイちゃんゴーレム一号が最前線に立つことは同じだ。これは魔力消費という観点から一番効率的なので変化はない。

 次にクレイゴーレム五体による補助。これも上記同様に変えないが、ここにセリーヌさんが追加され、安定感が増した。

 

 後方では俺とミズキ達、ナンちゃんとアマちゃんがいるが、ここではアマちゃんは戦力にはカウントしない。

 というのも、ゴーレムという戦力を常時展開しているのだから当然だ。これまでにゴブリンファイターやゴブリンリーダー指揮下のゴブリンにクレイゴーレムが倒される度、新たにゴーレム生成をしていたので、最も魔力を消費し、疲弊しているので、これ以上を求めるのは酷だろう。

 残りのメンバーの内、動きが変わったのはナンちゃんである。ナンちゃんもアマちゃんほどではないけれど、魔力消費が多いのだ。だから、今は俺とミズキ達が交互にアタッカーを担っている。


 具体的には、エイちゃんゴーレム一号の土操作で集められたゴーレムに対して、俺が雷撃を放ち、ミズキ達が数匹単位で魔法を使用し、殲滅していくスタイルをとっている。


「これ、本当にいつ終わるんだ?」

『うーん、こんなにいるならもっと数がいるから……もっと増やさないと!』


 あのミズキさん、もういいからね。これ以上のハイペースでGが増えるのはちょっと……。

 俺が葛藤していると、状況に変化が起きた。


 ゴブリンが現れる速度が一気に上昇したのだ。

 それは広範囲から出現したというわけではない。これまではぞろぞろと姿を見せていたゴブリンが何かから追い立てられるように、それこそ死に物狂いの恐慌状態で侵攻してきたのだ。

 ゴブリンの表情にあるのは恐怖。躓き転ぼうが、知ったことかと這うように向かってくる。エイちゃんゴーレム一号の土操作の範囲内に入り、仲間が地を這っていようと、それを足場に突き進む。どの個体もなりふり構わずひたすら前に進もうとしていた。


 明らかにこれまでのゴブリンには見られない異常が起きていた。


「セリーヌさん、ヤバそうな顔したゴブリン達が向かってくるんだけど、アレなに!?」

「知りません! こんなの……私が聞きたいくらいです!」


 ナンちゃんの問いに、セリーヌさんは大きく首を振って、言い返した。


「そんなこと言ってる場合じゃない! エイちゃんゴーレムいつ……ああもうっ、エイちゃんゴーレム一号の足止めが機能してない! 誰でもいいから止めてくれ!」


 アマちゃんが大声で叫ぶ。

 噛むなら改名すればいいのに……。まあ、そんなことを言っている場合じゃないな。


「ミズキ、魔力節約するのはやめだ! アレを止めないとルード村にゴブリンがなだれ込む。全個体で押し返すぞ!」

『うん! まだ数には不安があるけど、今度こそ御主人を守るんだから。みんな、吶喊!』


 ナンちゃんとアマちゃんめ、ミズキに色々と言葉を教えすぎだぞ。何パターンあるんだ?


 それからはエイちゃんゴーレム一号とエイちゃんが配置転換した。

 うん、実にややこしいな。それもう両方俺じゃない?


 雷撃、そして、ミズキ達の魔法が乱舞する様はさながら最強技を連発して敵を殲滅するRPGのようだった。いや、敵が倒した端から出現している点を考えれば、無双系のゲームのようであったかもしれない。

 そこに適度にナンちゃんのチャージ&リリースもあって、恐慌状態のゴブリンの侵攻を抑えることはできた。


 しかし、根本的な問題として、そもそもどうしてゴブリンがこれほど怯えて突進してくるのか、その原因がわからない。

 最悪の場合、ゴブリンの荒波を乗り越えても、その後にゴブリンの恐慌状態を引き起こした存在と対面することになるかもしれないが、そんなことを考えている暇はない。

 そんな思考の間にもゴブリンは次々と倒されていき、ようやくのこと無限ポップが途切れた。


 短くも濃密な時間であり、俺とミズキ達の魔力量は大量消費されてしまった。

 昨日は吐き気に苦しむ親友達を遠目に眺めていた俺だったが、今度は俺が吐き気を感じる番だった。


 なるほど、確かにこれは効く。


 口元を抑える俺の前に、ナンちゃんとアマちゃんが進み出る。


「エイちゃん、その苦しさは昨日俺達も味わった。さぞ辛いだろう」

「あとは俺達に任せておくといい。エイちゃんは休むんだ」


 爽やかな笑顔で格好いいことを言ってくれる親友達に、俺は涙を堪えて頷く。


「頼んだ、二人とも」


 エイちゃんゴーレム一号が再び前に立ち、残った数十匹のゴブリンを土操作で一纏めにする。


「うっ……お前らのせいで何度説教されたと思ってんだ、ちくしよー!」


 後方に下がった俺だったが、ようやくゴブリンラッシュから解放されると思うと、自然と叫んでいた。


「吐き気に堪えながら逃げるのはもう懲り懲りだ!」

「目覚めたときに視界いっぱいに広がるゴブリンを見せられた俺に謝れー!」


 親友達も俺のように叫ぶ。

 俺達の視線がスライドし、黙っているセリーヌさんに固定される。無言の圧力というものである。


「ええっ! 私も言わないといけないのですか……勝ってマリウスに会いに行く!」

「「「お幸せに!」」」


 ナンちゃんが立つ地面が動き出し、ちょうどゴブリン達の真上まで運ばれる。


「止めはこの南郷西也がいただくぜ! 渾身のチャージ&リリース!」


 真上からの一撃によって、爆風が起き、耐える。


 視界が晴れると、そこにはもうゴブリンは一体もいなかった。

 やっとのことでゴブリンを倒し、俺達はようやく一息吐くことができた。


「ようやく終わった……ヤバイな、まだ気持ち悪い」

「仕方ないよ、エイちゃん。その吐き気は魔力が回復するまではずっと続くから」

「いてて……着地考えてなかったな」


 神使三人で喜びを分かち合っていると、セリーヌさんだけが、臨戦態勢で未だにゴブリンの大群が来た方角を険しい顔で、睨んでいた。


「お三方……残念ながら、まだ魔物は残っているようです」


 セリーヌさんの忠告の直後。


 ザザザッ。ザザザッ。ザザザッ。


 と、徐々に大きくなる何かを引き摺る音。


 木々の隙間から姿を見せたのは既にボロボロの一匹のゴブリンだった。

 そのゴブリンは異様だった。

 身長は百八十センチくらいで体つきも良いが、その全身には切り傷や歯痕、片腕が根本から無い隻腕で、もう一方の手には身の丈ほどの大剣を引き摺っている。

 見るからに瀕死だが、俺はそのゴブリンを見て、異世界で初めて本物を殺意というものを味わった。昨日は調子に乗っていて、サーチ&デストロイをしていたので、ゴブリンの大群にしても考えている余裕がなかった。

 だか、それを抜きにしても恐ろしい。


 そのゴブリンは大きく目を開き、この世の全てを恨むような強烈な眼光を放っており、俺はそれだけで恐怖した。


「……ゴブリンキング」


 セリーヌさんの呟きが不思議と耳に響いた。

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