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俺の影にはGがいる  作者: 赤の虜
第一章 小鬼スタンピード
19/25

19 いざ、神使一行ゴブリン退治へ

 夜が明けた。

 昨日の俺達の報告により、急遽神使の魔物退治という予定は、ゴブリンの大群の殲滅へと目的を変更されることとなった。

 神使達は辺境故にまばらな人の道をつくり、次々と声援を送るルード村の村人達によって送り出されていく。

 先頭を進むのは固有スキル:聖剣召喚を持つ天童君。爽やかに笑顔で村人に応えている。流石である。

 出陣前のパレードのようなものなのか、騎士団の精鋭達は村人と神使との間を護衛として進んでいく。おそらく、村を出れば魔物退治に慣れている騎士団が前面に出て、斥候を務めるのだろう。


「行っちゃったな、みんな」

「仕方ないでしょう。昨日の今日でお三方に好き勝手動かれたくないんですよ、きっと」


 出発した神使一行を俺達やらかし組は村人に紛れて見送った。その中には昨日護衛として同行していたセリーヌさんもいる。

 名目上は神使一行がゴブリンの大群を殲滅する間、ルード村を守っておくという役目を与えられたのだが、実際は邪魔だからここにいろ、という騎士団長とクラスメイトからのメッセージなのだろう。


「まあ、また魔力枯渇したくないからいいや」

「だねー。意識飛んでるのにエイちゃんから叩き起こされるのはもうごめん」

「アマちゃん、あのときはごめん。本当にゴブリンが近づいていたから、必死で加減できてなかったかも」

「気にしなくていいよ。俺も起きてすぐに目の前にゴブリンの壁が迫って、すごく怖かったからお互い様」


 俺達はゴブリンの大群に挑む神使一行を羨ましいなんて少しも思わなかった。むしろ、四人ともゴブリンの大群がトラウマになっているので、行かなくていいなら行かないと即答するくらいには喜んでいた。


「そう言えば、俺のゴーレム生成なんだけど。スキルウィンドウを見た感じだと、そろそろ石でゴーレムもつくれそうかも」

「おっ、ストーンゴーレムか! それはいい。俺のチャージと勝負だ!」

「えー、やだよ。ナンちゃんの火力おかしいから」

「なら、俺の雷撃の試し打ちさせて!」

「そっちも火力おかしいんだよなー」

「緊張感のない神使様達だな、本当に……」


 セリーヌさんが深々とため息を吐いていたが、俺達は別に気にしない。

 面倒だと思っていたゴブリン退治は、天童君を筆頭に他の神使達や騎士団の精鋭が担ってくれるのだ。俺達は次の魔物退治に備えて、英気を養うことが必要なのだ。断じて警備とか面倒だからやってやれないとか情けない理由ではないことだけは言及しておこう。


 そこからの俺達の行動は平穏なものだった。

 セリーヌさんが真面目にルード村の警備を担当する中、アマちゃんのゴーレム生成に使用する石選びで吟味を重ねていたのだが……。


「ゴーレムに使えそうな石とかなくね」


 ナンちゃんがふと呟いた言葉がすべてだった。

 そう、ライトノベルとかではすんなり登場するストーンゴーレムだが、そもそもあんな巨体を形成する石なんて辺境の村に普通に落ちているわけなかった。

 となれば小型化しようと考えたけれど、それもまた難しい。

 いや、正確にはゴーレム自体はできたのだが……なんと言えばいいのか、非常に出来の悪い、具体的にはそもそも立てないという欠陥品ゴーレムが誕生することとなったのだ。

 理由は見るからに明白で、手足を形成する石がゴツゴツとしていて、バランスが取れないこと。そして、関節の接合部が土製のクレイゴーレムよりも圧倒的に不安定なので即座に崩れてしまう。

 そんなわけで、ストーンゴーレムは要検証の必要性があることを理解した俺達は検証に没頭することになった。


 まず、石の形状に大きな問題があるということで石と石をぶつけて削れないか試してみた。俺は身体強化(小)の効果もあって石は壊せたけれど、破片が飛び散り、危なかったので断念。

 ならばとナンちゃんのチャージ&リリースという固有スキルを利用して石を砕き、その石でストーンゴーレムを形成することになった。

 作業はごく短時間の力のチャージを指先に集め、解放するというもので単純かつ簡単なもので、幸い破片は飛び散らせず、細かい石をつくることは容易だった。


「この細かい石を接合部にすれば関節は大丈夫か」

「足の形はどうしよう?」

「足裏部分だけ平らにしておけばいいじゃない」

「まずは立つことが大事」


 周囲の視線など気にしない。

 ルード村に警備を任されたはずの神使三人が楽しげにストーンゴーレムづくりという石遊びに熱中しているところを村人達は不思議そうに見ていたけれど、無視する。

 何度か幼い子ども達が何をしているのか尋ねてくることもあったが、断固として無視する。

 

 黙々と石を削っていると、ふと気づく。


「あっ! 今って別にクラスメイト達いないよね」

「何を当たり前のことを……。さっきみんなで見送ったじゃん」

「そうそう。ありがたいことにクラスメイトはあの凶悪なゴブリン退治を請け負ってくれたじゃないか」


 ナンちゃんとアマちゃんに確認をとるも、一蹴される。

 だが、別に確認が目的だったので構わない。


「なら、石削りはミズキ達に任せてみる?」

「ええ、でもゴキブリって石削れるか? 何日もかかりそうじゃない?」


 ナンちゃんが疑問を口にするが、その点について俺には問題視していない。


「いや、普通ならそうなんだろうけど、うちの子達はほら……全個体が魔法使いだから」

「ああ……、そう言えばそうだった」

「なら、あとは精密作業ができるのかを試すだけか」


 アマちゃんは自分のゴーレムのことだけあってか、俺の意見にも意欲的だ。


(ミズキ。今、ちょっといい?)

『いいよー、なにー』


 呼びかけてみると、相変わらずの可愛らしい声で返事をしてくれる。

 可愛らしい女の子との親し気な会話。

 うん、本当に影の中にいてくれると、本当に最高のシチュエーションだな。


(今、アマちゃんのゴーレム生成を石で試してみようと思ってるんだけど、ミズキ達の魔法で石をゴーレムの形にするみたいな作業とかできる?)

『たぶん、できると思う! みんな交替で魔法の練習しているから!』


 なんと俺の影ではGのプラントという役割だけでなく、魔法の練習もできる空間が存在するらしい。すごいな、影の中。

 一度中に入って……みたくはないな。Gがいっぱいらしいから。とはいえ、どんな空間なのかには興味がある。

 しかし、今はアマちゃんのストーンゴーレム生成計画が第一だ。


(今回は手の平サイズのストーンゴーレムをつくる予定だから必要な分だけでいいからね)


 俺と親友達の精神のためにも。


『手の平サイズ……キングサイズだ! わかった、たぶんミズキだけでどうにもなりそう』

(じゃあ、ミズキだけでお願い)


 それにしても、手の平サイズの覚え方をキングサイズとは……確かにキングさんのことを話したことはあるし、そのときに手の平サイズだと言った覚えはあるけれど……。手の平サイズなのにキングサイズ……ややこしい。


 かくして、ミズキが俺の影からササッと登場する。以前は影から飛び出ていたが、注意したので今はこの登場である。ミズキからは格好良くないと不評ではあるが、こればかりは俺も退けなかった。ここで退くと、周囲から俺が退かれるからね。

 そんなランクダウンした登場でも、親友達は少し肩をびくつかせているので、やはり飛び出るのは危険だ。


「ミズキだけでも石の加工はできそうだって」

『アマちゃん、最高のゴーレムをつくってあげる!』

「ありがとう」


 アマちゃんは目を瞑り、感謝した。

 この方法は俺達の間ではもはや定着しつつあるもので、ミズキの可愛すぎる念話だけを拝聴することでありがたみが十割増しという画期的な発見である。

 

 ミズキの魔法適正は光と闇だが、今回は闇を利用する。光は回復やアンデッドなどへの対応以外ではミズキ的には重宝していないらしい。なんでも格好良くないとのこと。ミズキも闇に魅力を感じるお年頃なのだろう。

 使う魔法はミズキの体長と変わらない小さいダークボールで、それを鑢のように滑らせて石が削られていく。石同士とぶつけ合わせていた俺達とは比較にならない効率である。


「ミズキ、魔力を使いすぎない程度でいいからね」

『これくらいなら余裕!』


 念のために注意しておいたが、杞憂だった。


 そして。

 ミズキデザインのもと、手の平サイズの俺の石製フィギュアが完成された。


「いや、なんで俺?」

『最高のストーンゴーレムをつくったよ! どう、嬉しい? ご主人様!』

「まあ、ミズキが俺のためにつくってくれたなら嬉しいかな」


 困惑する俺に気づかず、達成感を滲ませて尋ねてくるミズキを無碍にはできなかった。


「「ひゅー、ひゅー、モテモテだなー、エイちゃん!」」

「うるさい、アマちゃんも早くストーンゴーレムを動かしてみて!」

 

 恥ずかしくなり、アマちゃんを急かす。


「はいはい。……行くぞ、起動せよ! ゴーレム生成、タイプストーンゴーレム、目覚めよ、エイちゃんゴーレム一号!」

「余計な名前つけるな!」

『いけー、エイちゃんゴーレム一号!』


 俺の羞恥心などお構いなしに、造形の問題の解決した、初のストーンゴーレムが生成された。


 エイちゃんゴーレム一号は大きく深呼吸するように両手を掲げ、下ろす。

 そして、何を思ったのかシャドーボクシングを始め、左手を拳を握った状態で天に掲げ、右手は腰に当てた決めポーズをとった。


 なんだ、このゴーレム。すごく腹が立つ。姿形が俺とそっくりなのに生成直後から個性が俺とは似ても似つかない個性に溢れている。

 それに苛立ちを増幅させる理由がもう一つ。

 このゴーレム、やたらと動きが滑らかで素早いのだ。さっきの動作にしても、人間のようなスムーズさで実行していた。

 つまり、高スペックなのだ。俺の似姿で腹の立つ決めポーズをする、このふざけたゴーレムが……。いっそ失敗してくれたなら、廃棄を提案できたのに、高スペックだとそんな提案もできないじゃないか。


「うおおおおおおおおお! エイちゃんゴーレム一号スゲーーーー!」

「エイちゃんゴーレム一号、これはメインで使用すること決定かも!」

『ご主人様の姿をしてるんだから、これぐらいはできて当然!』


 俺以外は大絶賛といったところ。まあ、俺だって自分がモデルにされてなければ素直に喜んだよ。でも、自分が決めポーズとっている思うと認めたくないという心情がある。


「エイちゃんゴーレムシリーズで俺は天下を取る!」

「そのシリーズで天下狙うのはお願いだからやめてくれる!」


 おそらく、ノリノリのアマちゃんに俺の抵抗は無力だろう。しかし、言わずにはいられなかった。


 


 ――――楽しいお留守番の時間はそれまでだった。

 そこからは止まった時間が動き出すように、加速度的に俺は危機を陥り、思い出すことになる。


「敵襲ーーー! 敵襲ーーー!」


 必死の形相で、息を切らせて村に乗り込んでくるセリーヌさん。彼女は即座に俺達を見つけ、駆けつけてながら叫ぶ。


「奴らが……昨日の比ではないゴブリンの大群がこの村に迫ってます!」


 圧倒的数による制圧。その恐ろしさを、俺達はまた、思い知らされる。

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