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俺の影にはGがいる  作者: 赤の虜
第一章 小鬼スタンピード
18/25

18 新たな力

 switchのドラクエ11に熱中してました。とりあえず、魔王は倒したので、こちらでも魔王と戦わなければ……(; ・`д・´)

 怒涛の説教をくらった後、俺達は夕食の時間を細々と過ごした。

 辺境であるルード村にウェストリア王城のような贅沢な浴場があるはずもなく、布を絞ったもので身体を拭くことになり、心なしか夕食時の女子達からの嫌味の切れ味が増していたような気がする。


 そして、そこからは自由時間。

 そうは言っても、夕食を食べ終わってから遊ぼうという猛者は俺達のクラスにはいない。調子に乗りに乗っていた俺達はともかく、他のクラスメイト達は初めて魔界という魔物の領域に入り、騎士団のお守り付きとはいえ、その討伐を経験してきたのだ。

 少なくとも今日のところはあの住田でさえ、顔を青くして、おとなしく就寝する旨を漏らしていた。

 

 かく言う俺達も、ゴブリンの大群に苦い思いをし、精神的な疲労はクラスメイト達の比ではなかったけれど、死にそうな思いをしたからこそ、確認しておくことがあった。


 セリーヌさん救出にあたり、いきなり俺が魔法を使い始めたことに対する仲間内での情報共有である。何せこれまで配下頼りとのたまっていた奴が急に覚醒して魔法を使い始めたのだ。誰だって不信に思う。

 また、ナンちゃんとアマちゃんの魔力枯渇による吐き気も、天童君の説教から間を置かずに回復したので、時間のとれる夜に話し合いの席を設けることになった。

 メンバーはセリーヌさんを除いた昼間に探索に出掛けた俺、ナンちゃんとアマちゃんというお約束の面々である。


 ルード村は辺境なので、就寝にしても村長宅に女子、男子は馬車で寝ろとい女尊男卑の激しい取り決めが女子達によって強制決定されることになった。

 ちなみに、天童君は宿でもいいとか言われてたよ。まあ、男子は男子でいると爽やかに断っていたけれど。

 というわけで、男子達はまとめて複数の馬車に詰め込まれるという酷い扱いを受けているわけだが、こんな場所でスキルの情報という生命線について話すほど俺達は愚かではない。ゴブリンの大群に無策で突撃する愚か者ではあるけれど。


 そんなわけでこっそり馬車から離れたいわけだが、当然のように神使の寝床の周りには警備という名の夜勤に励む騎士の面々がいる。


「また、どこかに行くつもりですか、お三方」


 騎士団長からの非常に面倒くさそうな態度に、再び申し訳なさで土下座したくなるけれども、気を強く持つ。


「流石に無茶するのは懲りてます。今回は魔物との戦闘で感じたことを三人で話し合おうと思って……うーん、言うなればあれです。反省会的なものです。他の神使の前では話しにくいので……」


 実際、反省会という側面もあるのだが、本命は俺がナンちゃんとアマちゃんにスキルを隠していたわけではないという弁解の場を持ちたいというのが目的である。

 しかし、いくら親しくしている騎士団長とはいえ、なんでもかんでも話したいわけではない。スキルという個人情報なんて以ての外。


 バレたなら、潔く教えるだろうが、腕っぷしの強さが命綱の神使として、こちらの全てをウェストリアに知られているのは魔王討伐後が恐ろしいからな。

 俺達は魔王を倒しても帰れない。その事実に変化はない。

 ならば、後に待っているのは神使の懐柔策か抹殺だろう。

 なかなか殺伐とした発想だとは思うが、魔物の王を倒せる実力者を野放しにさせるのか。客観的に考えれば、現実的にそういった選択肢があり得るところが恐ろしい。


 まあ、所詮はささやかな抵抗である。もし騎士団長に言えと言われたら、すぐに言うつもりだし。将来の不安のために、騎士団に不信感を持たれてしまっては本末転倒だからな。


「心情は察するが……君達だけで行動させるわけにもいかないな」


 信頼関係は大事だ。こういうとき、君達なら大丈夫と言われないだけの信頼なのだと、ひしひしと痛感する。


「ならば、私が監視しておきます」


 さて、どうしたものかと困っていると、背後から声が掛けられた。

 そこには警備と同じ鎧姿のセリーヌさんがいた。

 あれ、でもたしか……。


「セリーヌ、お前には身体を休めておくよう、言ったはずだが?」

「はい。……ですが、お三方が何かしでかしそうで眠れませんでした。なので、私が見張っていますから騎士団長は安心してください」


 まさか、今日初めて会ったセリーヌさんにそこまで読まれていたとは。別にこれから悪さをするわけではないけれど、女性の直感というものはここまで鋭いものなのか。


「お前にお三方を止められるのか? 今日のような失態を何度も見過ごす俺ではないぞ」

「心配無用です。全ては神使様のため、次は言葉ではなく、この拳で説得するつもりですから」


 爽やかな笑顔で恐ろしいことを言う、騎士団期待の美人騎士。


 まあ、危うくゴブリンの大群に殺されそうになったのだから、暴力に訴えてでも止めようとすることに納得はできる。

 できるけれど……。


 その言葉の衝撃はオタク達には重かった。

 常日頃、暴力的なことから距離を置く人種である俺達にとって、拳での説得という言葉の衝撃は大きかった。

 三人揃って一様に、「えっ」という顔でセリーヌさんを見つめてしまうくらいには大きかった。

 今日、神使の中でもトップレベルで魔物を屠ったであろう俺達だが、それはそれ、テンションがハイになっていたからこそできた芸当。素に戻ると、どうしようもない小物だった。


 そんな俺達の表情を見て、騎士団長は笑いを堪えながら、


「しっかりと見張るというなら、お前に任せよう」


 と言った。

 完全に楽しんでいらっしゃる。


***


 なんだかんだで俺達は人気のない場所で腰を下ろすことになった。

 天気も曇りなのか、あんまり神使達を警護する騎士団から離れると、暗闇で視界が確保できないため、少し離れた場所に騎士団長が見える位置取りという少し落ち着かない場所である。


「それで……俺とアマちゃんが何を聞きたいのか、わかっているよな? エイちゃん」


 仏のような朗らかな顔で俺に問いかけるナンちゃんに、自然と俺は背筋を伸ばす。

 

「まあ、あれのことだろうなとは思っているよ」

「あれというと、私も疑問に思っていた雷撃のことでしょうか?」


 さらっと正解してしまう優等生ことセリーヌさんに、ナンちゃんは厳かに頷く。どうやらナンちゃんはこの詰問スタイルを続けるらしい。

 セリーヌさんに関しては、ゴブリンの大群から逃げるときに思いっきり雷撃を見られているので、教えても構わないだろう。

 必然的にその情報が騎士団、ひいてはウェストリア王国に知られることになるだろうが、正直やることなすこと全てを秘密にするのは面倒だし、何よりセリーヌさんにも自慢したい。

 俺って強いんだよと言いふらしたい。そして、住田を完膚なきまでに倒したい。


「そうそう。あの雷撃はいったいどういうスキルなのか知りたい。今日、ゴブリンの大群に追われて思ったんだけど、遠慮して秘密にされると命を落とす」


 …………。

 アマちゃんの言葉が俺達に重くのしかかる。騎士であるセリーヌさんでさえ、今日のことはショックだったらしく、真剣に頷いている。

 もっともな意見だった。


 俺もアマちゃんの立場ならそう言うだろう。

 しかし、別に俺は雷撃のことを秘密していたのかと言われれば、その答えは否だ。

 別に隠していない。知らなかったのだ。

 なんだが屁理屈というか言い訳じみているけれど、それが事実だった。

 

 +++

 かつら 栄作えいさく


 固有スキル:生むは易し→起源還元:雷撃、固定生成:G

 スキル:精神耐性(小)、雷撃、身体強化(小)

 配下:雷魔甲虫キング1/100、魔蜚蠊ミズキ23/100、魔蜚蠊×200

 +++


 これが俺のスキルウィンドウ。

 わりと変化しているので、順番にいこう。


 まずは、みんなが気にしている雷撃についてだが、これはそのままスキルで雷撃という名前がついている。

 どうもこの雷撃、いつの間にか進化していたらしい第一の配下である戦闘狂のカブトムシ、キングさんの恩恵らしい。

 というのも、ログにこんな文面があるのだ。


<配下である魔甲虫キングがオーガキングを倒しました。一部の経験値が主に還元されます。>

<配下である魔甲虫キングからの経験値還元が上限に達しました。これより魔甲虫キングは進化します。>

<配下である魔甲虫キング雷魔甲虫キングに進化しました。主への経験値還元がリセットされます。>

雷魔甲虫キングからの起源還元により、主にスキル:雷撃、身体強化(小)が還元されました。>


 うん、完全にキングさんからの恩恵だ。

 色々とツッコミどころが多い。

 まず、オーガキングをさくっと倒してしまったのか、キングさん。俺なんてゴブリンに追われて死にそうな思いをしていたのに。

 続いて、雷魔甲虫になっている点。進化しちゃったか、キングさん。元々手の平サイズの大きなカブトムシだったが、いったいどれほど高みを目指すのだろう、あの昆虫。

 そして、最後。これが俺にとっては一番大事なことだが、スキルの還元という部分である。


 一応、予想はしていたけれど、まさか起源還元というスキルが配下からおこぼれをもらうスキルだったとは……。それによく見ると、魔蜚蠊であるミズキにも表示が増えているので、これから魔物を倒していくとミズキもキングさんみたく進化して、何かしら俺にスキルを恵んでくれるということなのだろう。

 名付けをしていない魔蜚蠊も魔物を倒していたはずだが、表示はなかった。名付けした配下だけと限定でもされているのだろうか。

 なんか配下と主という関係なのに、俺ばかりいい思いをしている気がしないでもないが、利益を得ているうちは黙っておこう。


 まあ、大体はこんなところか。

 ちなみに、魔蜚蠊がいきなり60匹増えているのは間違いではなく、ミズキ指令官の命令の下、魔蜚蠊が子どもを産んだからだそうだ。

 なので、200匹いるうちの60匹はまだ幼いのだが、その成長速度は一週間で成体になるという驚異的なもの。

 なんでも今日のことで、俺をゴブリンの大群から守れなかったことを悔いているらしく、本格的な増殖に踏み切るらしい。

 つまり、これから俺の影の中では加速度的にGが増えていく、工場の生産ラインのような状態になってしまったらしい。


 断りたかったが、ミズキの純粋な思いを拒むこともできず、了承してしまった。未来の俺よ、グッドラック。


 

 と、まあ、そういった現状を三人にはスキルウィンドウを開示しながら、懇切丁寧に説明した。

 一々スキルウィンドウを見せる必要はなかったかもしれないが、誰かに話さないと気が済まなかった。


「なんというか、エイちゃんの固有スキル、そんな機能もあったのな」

「まあ、強くなれたならいいじゃない」

「あれが……今日だけで40匹も増えた?」


 若干距離を取りつつもナンちゃんとアマちゃんは受け入れてくれたが、セリーヌさんだけGが影に200匹いるという現実に呆然としていた。

 気持ちはわかるよ、セリーヌさん。

 でも、それを口に出してはいけないよ。ミズキの純粋な心だけは守らないといけないんだ。

 たとえ、見た目が黒光りして、カサカサしていようとも。

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