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俺の影にはGがいる  作者: 赤の虜
第一章 小鬼スタンピード
17/25

17 怒涛の説教

 往々にして、困難を乗り切った後の人間というものは、物事の前後がなかったように振る舞うもの。


「それで、お三方は私が護衛のために随行させた騎士の忠告も聞かず、ゴブリンの集落に乗り込み、逃げてきたというわけですか……」


 呆れる騎士団長。

 無事にルード村に戻ることができた俺達は、セリーヌさんの提案で、真っ先に騎士団長のところに報告に行くことにした。


 説明を始めた当初は如何に意気揚々と魔物退治をしていたのかを自慢気に語っていたのだが、話がゴブリンの集落に話題になると、そもそも自分達の独断専行がセリーヌさんを危険に晒したことを思い出し、非常にたどたどしく説明をした。


「そうです、すみません」

「「すみ……ません」」


 依然として、吐き気で気分が悪いままのナンちゃんとアマちゃん。

 彼らがこの様子だと、俺が代表して受け答えした方がいいだろう。


「そうは言っても、セリーヌ。私が君にお三方の護衛を頼んだことも事実。何かしらの罰は覚悟しておきたまえ」

「はい……」


 俺達のせいで、セリーヌさんが罰を受けるなんておかしいだろう。


「騎士団長、あれは俺達が勝手にやったことなのでセリーヌさんだけでも許してくれませんか?」


 その思いはナンちゃんとアマちゃんも同じだろう。

 これが他のベテラン騎士ならば、俺は騎士団長に食い下がるようなことは決してしなかったろう。しかし、今回は将来的に幼なじみと幸せを掴むセリーヌさん。

 ここで彼女の評判が落ち、何かしら問題が起こることを危惧したのだ。


 しかし、返事をしたのは騎士団長ではなく、罰を受けるはずのセリーヌさんだった。


「お三方、これはウェストリア騎士団内の話です。神使様とはいえ、口を挟まないでいただきたい」


 そう言ったセリーヌさんの表情は優しかった。

 きっと俺達が騎士団長に対して、余計なことを言い、騎士団と神使との不和を招かないように気を遣ってくれたのだろう。

 やはり、良い子だ。


「でも、それじゃあセリーヌさんが……」

「心配無用です。私は年が若くとも騎士。騎士ならば騎士団長の命令に従うのは当然のことですから」


 尚も食い下がろうとした俺をセリーヌさんが黙らせた。

 俺が黙ったことで、騎士団長が口を開く。


「神使様も納得していただいたことだし、セリーヌ、君に罰を与える。とはいえ、報告にあったゴブリンの集落への対処が最優先のため、罰は王都に戻ってから実行されることになるだろうが……」

「はっ」

「君への罰は一月間の騎士業務の停止だ。期間は君が王都に戻り次第始まり、そこから一月間とする。……罰は以上だ」

「え……それって」


 何かに気づいたらしいセリーヌさんが騎士団長を見つめる。


「有望とわかっている部下を切り捨てたりはせん。その一月は婚約者と一緒に過ごすといい」


 騎士団長がそっぽを向き、呟く。


 …………ああ、そういうこと。

 騎士団長として、騎士団内外に示しがつくように名目上の罰が必要だったわけだ。

 要するに、初めから騎士団長にはセリーヌさんを罰する気などなかったのだ。


 俺が安心し、大きく息を吐き出すと、騎士団長が「とはいえ」と言って、俺達を睨みつける。


「お三方にはもっと反省してもらわないと困りますね。何せこちらは危うく優秀な部下の命を失うところだったのですから」

「……はい、すみません。すべて俺達のせいです、反省してます」


 その後、騎士団長からありがたい説教を受け、俺達はセリーヌさんと別れ、クラスメイトが待つ村長宅に戻ることになった。


 待ち受けていたのは、クラスメイト全員からの厳しい視線だった。

 おそらくだが、騎士団長に説教されている様子を誰かに目撃されたのか。はたまた抜け駆けし、和を乱したことに対する怒りなのか、明確な理由は分からなかったが、クラスメイトは怒っているようだ。

 そして、クラスの意思を代表すると言えば、あの人である。


「桂君、南郷君、甘粕君、ちょっといい?」


 そう、天童君である。

 返事を聞かずに、天童君は部屋から退出する。

 これはついてこい、ということなのだろう。

 仮にここで、俺達の返事を聞かなかったのだからと部屋に居座ろうものなら、クラスから早く行けと叩き出されること間違いなし。まあ、今回は完全に俺達が悪いので、不満はないのだが。


 俺達が天童君の後を追うと、その背後には天童君のグループである榊原、近藤さん、白崎さんが逃げ場を塞ぐようについて来る。

 

 なんだろう、こういう動きをされると逃げたくなってしまうな。すごく怖い。 


 ***


「君達さ、何がしたいの?」


 村長宅の裏側。

 人気のない場所にて、天童君が最初に放った一言は強烈だった。


「一応、住田君から君達が魔界に入って、護衛の騎士を危うく死なせてしまう事態だということは聞いたよ」


 なんで知っているんだよ、住田君。あいつは同行してないのに。

 さては奴が騎士団長に怒られているときに盗み聞きしていたのか。本当に厄介な……。


 しかし、今は天童君達への対処が先だ。

 何も怒っているのは天童君だけではない。その背後にはさっきついて来ていた榊原、近藤さん、白崎が控えている。

 包囲網は万全ということだろう。


「もう一度、言うけどさ、君達は何がしたいの?」

 

 珍しく天童君がお怒りであった。

 

「別にさ、君達が三人で行動したことを咎めはしないし、先に魔物退治をしていたことも恨んじゃいない。問題なのはさ、君達が独断専行した結果、ウェストリア王国の騎士団から死者が出るかもしれなかったという点だよ」


 言われて、気づく。

 天童君が異世界に召喚されてからも、終始冷静だ。

 そんな彼がどうしてここまで怒りを感じているのか、ようやく俺は察した。


 今、天童君が言った言葉がすべてだ。

 彼はこう言いたいのだろう。

 俺達の独断専行によって騎士が死ぬ。その結果によって、神使全体に対する信頼が薄れるかもしれない。それでなくとも、騎士団との仲には亀裂が入っていたかもしれない。

 そんな危険がある行為だったのだと、わかっているのかお前ら、そう言いたいのだろう。


「……ごめん。俺達、固有スキルがあるからって浮かれてたんだ。この力があれば、魔物だって楽勝に倒せるって、思い上がっていた」

「…………」

「ふん、お前らみたいなオタクが調子に乗ってんじゃねえよ。まあ、俺や唯人みたいな恵まれた固有スキルじゃねえくせに楽勝なわけねえだろうが」

「だよねー。そもそも私達、戦闘経験なんてないのに自信過剰過ぎでしょ? まあ、私達ならゴブリンなんて最弱には負けないだろうけど」

「あんまり危ないことはしない方がいいと思うな」


 天童君が黙ったのはきっと彼の友人の中にも思い上がっている連中がいるからだろう。榊原と近藤さんはまだ経験がないのだろう。圧倒的物量で攻められる経験が。

 まあ、俺達も知らなかったので、責める気にもならないけれど。


「うん、すみません」

「というか、何で住田に負けたやつがゴブリンの大群に挑もうと思ったわけ?」

「どうせ大した固有スキルでもないのに夢見ちゃったんだろうけどな」

「それは……」


 近藤さんと榊原の何気ない一言に俺は固まる。

 言いたい。言ってやりたい。俺は本当は140匹の魔法を使えるGという一大戦力を抱えていて、俺tueeeできる人材をあることを伝えたい。

 しかし、言ってもろくな目に遭わないから言えない。

 くそ、確かに住田には負けたさ、負けてやったさ。でも、あれば演技であって、本当の実力という意味で負けたというわけではなくて……、そもそも住田相手には俺の主力とも言える配下である魔蜚蠊を使用できない一身上の都合があったわけだから、負けたという表現自体が適切に物事の真実を表していないわけだから……。


「固有スキル云々はともかくとしても、君達の行動がウェストリア王国の騎士を危険に晒したのは事実だからね、しっかりと反省してほしい」

「はい、本当にすみませんでした」


 くっ、取り巻きはともかく天童君だけ正論だから謝罪が口をついて出てくる。


「それに君達を護衛してくれていた騎士は同い年の女の子だったそうじゃないか。彼女の命をこんなことで散らせるようなことはしないでくれ」

「はい、なんかもう生きててすみません」


 罵倒よりも淡々と事実を列挙され、自分達の至らなさを教えられることのなんと辛いことか。

 もう、ここからいなくなりたい。

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