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俺の影にはGがいる  作者: 赤の虜
第一章 小鬼スタンピード
14/25

14 余裕があると調子に乗る人種 中編

 クラスがまだ村長宅で休む中、俺とナンちゃん、アマちゃんの三人は一足早く魔界の入口へと移動を終えていた。

 仮にクラスと同時に動いて、カースト上位勢や住田に難癖をつけられたくなかったのだ。


 そして、もう一人。

 同行する者がいる。

 

 ウェストリア王国騎士団の期待の新人にして、俺達の護衛役に選ばれた騎士のセリーヌさんである。

 名前からのわかる通り、彼女は女性騎士。

 ポニーテールにした金髪にキリっとした目つき、鎧を着こんでいるためにスタイルはわからないが、きっと良いのだろう。


「お三方の魔物退治に同行させていただきます、セリーヌです。戦闘は剣術スキルをメインにしています。魔法は火魔法が少し使えますが、実戦で使えるほどの出来ではないので前衛という認識でお願いします」


 敬礼しつつ、自己紹介するセリーヌさん。

 この時点で、彼女が真面目な人間なのだとわかった。

 新人の身で騎士団の精鋭に選ばれている時点で実力は言うまでもない。


「セリーヌさんは他の騎士に比べてお若いですね。他の騎士さんはなんというか年齢的に明らかに年上だったので、年の近そうなセリーヌさんが同行してくれて安心してます」


 数が上回れば、コミュ力の低い人間でも強く出れるもの。

 俺は自然と切り出した。


「確かに私は他の騎士よりも若いですね。まだ騎士団に入って二年目ですし、年は十六ですね」


 同い年かよ。

 セリーヌさんに限らず、ウェストリア王国の人達は元の世界で言う西洋人のように大柄な人が多いので、分からなかった。


 しかし、騎士とはいえ、同い年の女の子に護衛されるのか、俺達。


「セリーヌさんは彼氏とかいるの?」


 俺が落ち込んでいると、ナンちゃんが突然直球な質問をぶつけた。


 あのナンちゃんの目、見覚えがある。

 あれは確か去年の春、まだナンちゃんと出会ってすぐの頃。体育の授業で、とある女子が生き生きとプレイする姿を見て一目惚れ。まだ授業中だというのに、告白し、その場で振られたときの決意の目だ。

 思えば、あれ以来、俺とアマちゃんはナンちゃんのことをどこか勇敢なる戦士のように尊敬し始めたような気がする。


「彼氏ですか? 彼氏はいませんが、婚約者ならいます」

「あ……そうですか」


 ナンちゃん撃沈。告白の段階にすら進めなかったようだ。


「へえ、セリーヌさんの婚約者なら、きっとイケメンなんだろうね」


 アマちゃんが質問を引き継ぐ。


「それほどでもないですよ。マリウスは幼なじみで、平民の出です。私が騎士爵の次女なので、今は王都の文官として働き、私に相応しい男になると張り切ってます。別にそんなこと、私は気にしないのですが……」

「騎士爵って貴族だったんだ、セリーヌさん」

「俺達も敬語使った方がいいのでは?」


 アマちゃんの言葉に、俺が冗談を言うと、セリーヌさんが「とんでもない」と慌てる。


「神使様は騎士爵などに敬語で話す必要はありません! そんなことされたら私が困ります!」


 全力で拒否された。

 座学で知ったことだが、人界での神使の扱いはなんでも神に準ずるらしい。

 つまり、権力的には神様以外に従わなくていい、というのが常識となっている。とはいえ、横暴に振る舞い、人界から総スカンされたら生きていけないだろうけど。


 それにしても、セリーヌさんとお相手のマリウスさん、青春してるじゃないか。話を聞いて、落ち込んでいたナンちゃんも、「いい話じゃないか」と感動している。


「まあ、私とマリウスが婚姻を結ぶにしても、まずは魔王を打ち倒すまではお預けですね。子どもをつくろうにも安心できませんから。だから、私もその一助になるため、騎士団に入団したんです」


 そう言って、微笑むセリーヌさんの笑顔が眩しかった。

 言われてみれば、当然の話だった。

 この世界では決まって百年周期で人界を取り囲む四界に王が誕生し、人界に攻めてくる。さながらゲームのようだと考えていたけれど、現実なのだ。

 民衆感情として、子どもを生むなら四界の王を倒してからと考えるのは当然だろう。

 彼らはそんな現実を過ごしているのだ。

 それにしても……。


「セリーヌさん、めっちゃ良い子」

「「同感」」

「お三方! いきなりどうされました?」


 セリーヌさんの良い子っぷりに感動した俺達は揃って泣いた。


 こういう子のために魔王のいない素晴らしい未来をつくらないとな。

 

 そこからは、俺達の自己紹介となった。

 今から入口近くとはいえ、魔界に入るのだ。共有できる手札は共有しておいた方が連携もしやすいだろう。


「俺は南郷西也、二人からはナンちゃんってあだ名で呼ばれてる。固有スキルはチャージで、蓄えた力を解放できる。一撃必殺なら任せろ」

「甘粕天星、あだ名はアマちゃんで、固有スキルはゴーレム生成。今のところ、クレイゴーレムしか出せないかな。数は一度に三体が限界で、魔力はクレイゴーレム十体分くらいでギリギリ」

「お二人とも強力な固有スキルですね」


 そして、俺の自己紹介の番が来た。

 さて、これから固有スキルの説明に入るわけだが……。


(ミズキ、セリーヌさんに紹介するから驚かせないように)

『また、外に出れるの! やったー!』


 うーん、聞いてないな。まあ、良いだろう。どうせあの程度は驚くことになるだろうし。


「俺は桂栄作、あだ名がエイちゃんで、固有スキルは……まあ、見てもらった方が早いか」

(出でよ、我が配下達!)

『出発ー!』


 少しノリ良く念話をすると、ミズキ達が影から出て来た。

 そう、ミズキ達である。

 現時点では、戦闘狂のキングさんを除いた百を超えるGが、俺の影に潜んでいるわけなのだが、その全てである。


 あ、注意するの忘れてた。


「え…………ひゃああああああああ!」


 カサカサカサカサカサカサカサカサ。

 俺の影から次から次へと、溢れ出すGに騎士として魔物などにも耐性があるであろうセリーヌさんが悲鳴を上げた。

 

 ふむ、やはり女性とGの組み合わせダメなのか。


 決して足元は見ないように、周囲を伺うと、なぜか事情を知っているはずの親友二人が俺から十メートルくらい離れていた。


 いや、遠いよ、二人とも。


『参上!』


 悲鳴を上げるセリーヌさんに、決して足元を見ようとしない主、真顔で距離を取る親友達、そして元気いっぱいで『参上!』を決めるミズキというカオスな光景は収拾にしばし、時間を要した。


「神使様の配下に対して悲鳴を上げた失礼をお許しください。私も騎士として醜悪な魔物を倒した経験がある身、これからは普通に対応させていただきます」

 

 模範的な謝罪を口にするセリーヌさんだったが、さっきから頑なに顔が俺と魔蜚蠊を見ようとしない。

 顔が若干引き攣っているし、完全にドン引きされてしまった。


 気持ちはわかるよ、セリーヌさん。

 何せ俺が今、冷静にいられるのは足元を絶対に見ないようにしているからなんだもの。

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