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俺の影にはGがいる  作者: 赤の虜
第一章 小鬼スタンピード
10/25

10 ユーリさんの涙

 異世界召喚されてから、一月の月日が経過した。

 とはいえ、神使である俺達に大きな変化はなく、王城で固有スキルを使用した戦闘訓練と座学による情報収集といった生活が習慣化しただけだ。


 まあ、俺には日に日に増えていく心労があるけれど。


 +++

 桂 栄作えいさく

 

 固有スキル:生むは易し→起源還元、固定生成:G

 配下:魔甲虫キング95/100、魔蜚蠊ミズキ、魔蜚蠊×130

 +++


 まず、魔甲虫であるキングさんの起源還元の数値がカンストに近づいている。あの異世界産カブトムシの向上心は衰えることを知らないのか、起源還元の数値が増えない日はない。

 予想では、起源還元がカンストしたときに何かしらの恩恵があると考えている。しかし、過去に生成ルーレットなんて悪辣なことをしたスキルでもあるから、不安もあるけれど。


 そして、次にミズキ達魔蜚蠊について。

 一月のわりに数が異常に増えすぎ? まあ、俺は生み出したのは30匹だけだよ。あとはミズキ指令による魔蜚蠊増員計画によって産まれた個体だ。

 ミズキ曰く、魔力に限界がある魔蜚蠊で俺を守るには数が必要らしい。

 影に次々とGが増えるのは、複雑な気分ではあるけれど、俺を守るためと言われると断れなかったのだ。

 なので、現時点で俺の影には130匹のGがいる。苦手な人からすれば発狂ものだろうし、苦手でなくても耐えきれるものではないため、基本的にミズキ以外を影から放出してはいない。

 この精神に大ダメージを与える最終兵器である俺の影のことを、親友二人がリーサルウェポンと呼ぶ。意味を考えると嫌なあだ名である。


 そして。

 今日は淡々とした日々の訓練はない。

 ウェストリアの兵士達の護衛の下、魔界の入り口付近にいるゴブリンの討伐があるのだ。

 行程は馬車を乗り換えつつ数日移動し、宿は道中にある貴族領の領主に用意させるとのこと。

 つまり、遠征である。

 これまで、俺達は戦闘訓練はしても実戦経験はなかったので、緊張してしまう。


 自室にて、心の準備をしていると扉をノックする声がして、返事をする。


「ユーリです。遠征の用意ができましたので、入ってもよろしいですか?」


 了承すると、ユーリが入って来る。


 この一月。俺は親友二人との時間以外では最も長く話していたのがユーリさんだ。

 サイドテールにした美しい白銀の髪に、長くしなやかな脚、切れ長で鋭い銀の眼光が相変わらず綺麗だ。


 はっきり言おう。俺は完全に彼女に惚れている。なので、これまでも積極的に話しかけ、会話することはできている。

 しかし、どうにもユーリさんは仕事に忠実というか職務を全うすることを優先しているようで、なかなか仲を深めることができなかったことが悔やまれる。

 これから遠征があり、長期間会えない焦りもあったのだろう。


「あの……ユーリさんはいつも仕事熱心ですね!」


 俺は自然と話しかけていた。

 ただ、会話の糸口が見つからず、変なことを言ってしまう。


「仕事ですからね。私がなすべきことをなすことをきっと両親も望んでくれていると思うので」


 珍しく、いつもは見せない悲しげな様子を見せるユーリさん。

 

「えっと……ご両親のためだなんて、ユーリさんはご両親のことが好きなんですね」


 俺の言葉に、一瞬、ユーリさんの表情が凍る。

 だが、すぐに顔を綻ばせ、優しい笑顔をつくった。


「ええ……そうかもしれません。私は未だに両親のことが好きなのかもしれません……」

「……笑顔」

「えっ?」


 俺はこの一月で初めて見た彼女の笑顔を心の底から綺麗だと思った。

 だから、日頃は緊張して何も言えなくなるのに、考えるよりも前に言葉が発していた。


「あ、いやっ、その……ユーリさんは笑っているときが一番魅力的だなと思って……あ、すみません! 急に何言ってんだ、俺は」


 慌てて弁明するも、ユーリさんは予想外といったように固まり、涙を流したのだった。

 このとき、後にして思えば彼女は俺なんて見ていなかったのだろう。


「パパ」


 ユーリさんはそう呟いて、俺を見つめてくる。

 唐突のことに、俺は驚く。


 いきなり、クールだったユーリさんが泣き出したこともそうだが、パパ発言は謎過ぎた。

 当然が俺が彼女の父親であるという超展開などありえない。そもそも年上だろうし。


「すみませんっ、急におかしなことを言ってしまって!」


 顔を赤くして、居心地悪そうに下を向くユーリさん、かわいい。


「少し……エーサク様の言葉が父に似ていてのでつい……。本当にすみません」

「僕の方こそ余計なことを言っちゃったみたいですみません」

「いえ、父の面影を思い出せて嬉しかったです。本当に……ありがとうございます」


 その後、ユーリさんの涙を見てしまい、俺の方が気まずくなる。

 

「あのっ、エーサク様。一つ聞きたいことがあるのですが……」 


 ユーリさんはこれまでより少し強引に質問をしてきた。反射的にユーリさんの目をして、その銀の瞳に吸い込まれるような錯覚に陥る。


「うん、なんでも聞いて」


 言葉が自然と口から出る。


「エーサク様の固有スキルについて教えてください。ほら、召喚された初日はよく分からなかったみたいだけど、もう色々検証もできたと思うから」


 俺の固有スキル? それを知って、ユーリさんはどうするのだろう? 

 まあ、いいか。ユーリさんが教えてほしいって言ってるんだから教えればいいや。


 俺はスラスラと自分の固有スキルについて、彼女に話していく。

 自分の固有スキル:生むは易しは配下を生み出せる能力であるということ。

 しかし、最初に呼び出した配下は戦闘狂だったので、魔の森に向かわせ、自由行動させていること。

 キングから起源還元によって、何かが蓄積されているようだが、一向に身体には変化がないこと。


「それで……」


 順調に固有スキルについて話す中、俺は言葉に詰まる。


 これで、配下に魔法を使えるGの大群が影のいることを伝えたら、俺はユーリさんに嫌われるかもしれない。それで彼女に嫌われるのは耐えられない。


 そんな考えがよぎる。


「どうかした?」

「いや……それでキングを生み出してからは新たに配下は増えていないんだ。だから、俺はキングの腰巾着って感じ」


 俺はユーリさんに嫌われたくないので、嘘を吐いた。


「そう……あなたの固有スキルはそういうものだったのね。これで全員わかったわね。話はそれだけだから、遠征の荷物はそこに用意してるからもう行っていいわよ」

「わかった」


 いつの間にか、ユーリさんの口調が変わっているような気もするが、まあいいや。

 これから、遠征があるのだから気を引き締めていかないと!

 俺は自室にユーリさんを残し、退出した。

 この話を書いていて、慣れないことはするものじゃないと痛感しました。

 特にユーリの心情描写が全然うまくいかない( ;∀;)

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