もたらされた希望
ノックの音で目を覚ますと外が明るくなっていた。
帰宅するや否やエルを見に行くと気持ちよさそうにすぅすぅと寝息を立てていたので安心した。まさか魔力量の多いエルが倒れるなんて思わなかった。
帰宅の道中、エルから取った精霊のメガネを掛けた師匠は私を安心させるようには色々話してくれた。
エルの使った時空の迷路は時空間と闇の複合魔法で難易度が高く使える者が少ないとのこと。魔力の使用量も格段に多い。それ以前にも魔法を使っていただろうし、あんな状態の人形をみたら気が動転して使用量を把握できなかったのではないかと言う事だ。
さらに聞く話によると時空の迷路と言われる魔法は前世で言うダークホールの様だ。物理的な物も飲み込むし、魔法の攻撃も飲み込む。もちろん人も。見た目よりもかなりエグイ技だったんですね…。
「ま、パールが無事で本当によかった。人形を見た時は心臓が止まるかと思ったわ。エルが落ち着いていたから大丈夫だとは思ったけど…合流が遅くなってごめんなさいね」
師匠は師匠で避難の指示や騎士の手配フィルさんへの連絡等速攻で片付けたが、あの時間になってしまった様だ。
そんなこんなで校長室近くで師匠と別れた後、帰宅してエルを確認して安心すると事情説明をするために子ぎつねに入りヴォルフリートとビアンカを探して事の次第を伝えた。
公爵家には師匠が連絡すると言う事が伝えられていたので2人はここでエルの看病をしていたとのこと。
2人共エルの倒れた原因がわかってホッとした様だった。
その後霊体では肉体の疲れはないはずだが、精神的にかなり消耗していたようで自室の窓際のクッションに体をうずめるといつのまにか寝ていた。
「パール様、エルランド様がお呼びです」
ビアンカさんに抱かれエルの元へ行く。
もう食事を済ませたのかダイニングでエルと合流して師匠の下へ向かう。
「も大丈夫なんですか?」
「ああ。もうすっかりいつも通りの魔力量に戻っている」
顔色も悪くないし嘘ではないだろう。良かった。
校長室の前に着くとエルがドアをノックして部屋へ入る。
エルの体調は良さそうだが、今度は師匠が死にそうな顔で机に座っている。
私と別れた後寝る暇もない位動き回ったようで屍一歩手前だ。
「さて、粗方方向性は決まったから話しておくわ。昨日話した通りルーナは死亡。遺体は辺境爵家へ返還された。学生とはいえ何もないのはおかしいから事情を陛下に話して学生を守った報奨金が辺境爵宛に出るわ。パールのお金になるから何か欲しくなったらエルに渡して買ってもらいなさい。ここまでいいわね?」
2人してこくんと頷くと師匠はシファさんについて話し出す。
「あの学生。シファ・ダグラスと言う生徒だが処罰はまだ決まっていない。禁忌の呪を操るので下手に死なれて呪が国に及んでは困るという意見と呪の力が増す前に死罪と言う意見が割れている。リークリングにも話を通さなければならないし、この学生の行方は当分未定ね」
気になっていた呪の禁忌の書は〈ファンブック〉の裏話の情報を駆使してストーリーで偶然見つける子よりも先に見つけたそうだ。春の祭事や学校での流行り病もシファさんが呪の力を使ってストーリー通りに話を勧めようとした結果らしい。
どうしてこんなに迅速に話が聞けたのかと師匠に尋ねると、事情聴取をした人を無視していたようで師匠が呼ばれ、それでも頑なだったので「エルランドにも協力を頼むか」と脅したところスラスラと話し出したらしい。…エルって前世のなまはげか黒いサンタとかかな?
ともあれ、シファさんの供述通り保管してあった禁忌の書は無事回収され王家の禁書エリアに保管されることになったそうだ。
現状を聞いていると校長室の扉が叩かれた。
師匠が返答するとリーナとレイフ先生。
レイフ先生はいつも通り飄々として見えるが、リーナの表情は暗い。
事件解決後ルーナのことが公表されたことでひどく悲しんでいるようで大変申し訳ない。
中身の私はしっかり睡眠をとり健康そのもの。一刻も早く真実を伝えてあげたい。
師匠もエルも同様に感じたらしく単刀直入に事件について秘匿することを条件に真相を話すことを告げ、2人共承諾した。しっかり誓約書もサインさせたのは言うまでもない。
「─────と言うのが事件の全容よ。さて、最後に嬉しいお知らせをしましょうか」




