開校日2
庭園を歩き回るが特に異常はなく。一安心と帰路に就く。
先ほどの会話を思い出すと恥ずかしい。揶揄っているのだと分かるけれど、実は核心を突かれて挙動不審になっていたなんてエルには分かるまい。
最近よく考えるのは、あとどれほど一緒にいられるだろうか。エルも王子の婚約者が決まれば彼自身の婚約者も決めなくてはならないだろう。婚約者が決まったら私はその光景を我慢して見ることができるだろうか。ズキッと痛んだ胸が答えな様な気がする。私の存在が精霊の様であるから傍にいられる。でも、そのせいで彼の隣に立つことができない。なんて滑稽な立ち位置なのだろう。
心の整理がつかずに教室へ帰るのを少し後にしてどこへ向かうでもなくブラブラする。
自分の心が荒んでいると他人が幸せに見える現象に名前はあるのだろうか。
人気のある所を避けているとあまり人気でないエリアがあるようで小さな噴水のあるエントランスからそう遠くない1番小さいであろう庭園に着いた。
空いていた椅子に座りどことなしに眺めると嫌な感じに引っ掛かる。その感じは少し向こうの茂みの中から。
まさかね?そんな都合よく私の前に現れるなんてとドキドキする胸に手を当て立ち上がる。
茂みを覗き込むが何もない。さらに奥に進むととぐろを巻いた黒光りしている蛇がいた。
胃が収縮するのを感じつつ、頭を働かせこんな魔物は図鑑で見たことがないと結論付ける。エルと勉強しているだけあって私もそこそこ知識が付いた。魔物に関しては面白いのでよく読んでいるけど、私の知る限りこんなにどす黒い蛇はいなかったと思う。
少し距離を取って転移でエルの所に戻ろうとするとスカートが茂みに引っ掛かった様で揺らしてしまう。
音に目を覚まし警戒したのかとぐろがうねうねと動き出しどんどん大きくなっていく。
まさか本当に事件が起こるなんて!しかも私の目の前で!こんなヒロイン特性いらない!っというかでっかい蛇コワイ!
蛇は私2人分くらいの高さになると急にこちらを向いて何か吐き出した。
まずいと思ったものの反応が遅れた為無詠唱でも防御が間に合うわけもなくできるだけ被害を少なくしようと横に飛ぶ。しかし、転ぶようによけたことで来るはずの痛みが…来ない。
ハッと顔を上げると大きな蛇は大きな水晶玉の様なものに包まれている。
(このまま攻撃して1発で仕留められなかったら人的被害出るよね…)
開校日でなければ試すのもありだけれど、今日はまずいだろう。
人命第一と考え、ざっとこれからどうするか考える。
(この近くの庭園から人を逃がして、エルと師匠に報告。後は彼らに任せる。よし!)
周りの木々をある程度の範囲凍らせ、その中で残しておいた木々に火を放ち火災を作り出した。
水晶玉はまだ割れることなく、蛇は鬱陶しそうに中で動いている。
火が回り始めたのを確認すると庭園に向かって走る。
「火災です!学校の外へ逃げてください!」
私の後ろで上がる火を見るとみんな青い顔をして逃げていく。
庭園に人気がなくなったのを確認してエルの元へ転移する。
「エル!出ました!蛇が!大きいの!」
状況は呑み込めてないだろうに私の腕をつかむと転移し、目の前に師匠が現れた。
「師匠。大変です。話通りになったようです。パール、説明を」
要点を掻い摘んで早口で説明する。
「…という訳で水晶のようなものが現れてそこに閉じ込められてます。ただあとどれだけ持つか分かりません。とりあえず、火を起こして近くの庭園からは人がいない状態になっています」
「そう。よくやったわね。防壁は後大体10分くらいかしら?」
「なぜわかるんです?」
「だってあなたにあげたお守り2つの効果だもの。壊れているはずよ?」
慌てて確認してみると石にはひびが入り、もう1つは半分どこかに行ってしまっていた。
大事にしたかったのに…ショックだ…。
「さ、時間が惜しいわ。エルとパールはレイフ先生と合流して蛇の元へ。私は非難の指示を出してから向かうから先に何とかしておいて、はい宜しく」
師匠はいい終わるや否や私達をレイフ先生の元に校長室の転移陣を使い移動させた。
レイフ先生も待機命令が出ていたのか校内の研究室にいた。
エルが簡潔に状況を説明して私の転移で3人とも蛇の元に向かう。
「大きいですねー」
「で、先生。これは一体なんですか?」
「呪術の一種でしょう。実際見るのは初めてなのでとりあえず、浄化してみますか」
そう言い終わると浄化を蛇に掛けるが水晶が邪魔で届いていない。
「ミルドは本当魔法が上手だ。ま、あと2、3分で解けるでしょうから、無駄に力を使わず解けた瞬間にやってみましょう」
緊迫した状況なのにいつもの、のほほんとしたレイフ先生を見ていると緊張感がない。
防御癖も張っておきますねーとレイフ先生がこれまたのほほんとマイペースにやっている。
「緊張感が…」
ボソッとエルに呟くと彼も珍しく何とも言えない顔をしている。
「緊張しているよりはいいのではないか…?」
「そーですよ。いらない緊張は判断を鈍らせますから」
少し前で防壁を張っていたレイフ先生はいつの間にか近くにいてにっこり会話に入っている。
そんな緊張感の無さもすぐに終わりを迎え、甲高いパリーンという音と共に水晶玉が消えた。




