作戦実行中2
「はぁ…」
誰もいない庭園で私のため息が響いた。
現在、放課後。いつも通りレイフ先生と接触と言う任務を遂行し帰宅途中足を止めた庭園でぼーっと空を眺めていた。
最近の生活は以前にもまして単調で、ゲームの中なら次から次へと何かが起こるけれど現実はそうではない。単調ながらもコツコツ積み重ねなければ何も起こらない。スキップできないのは当たり前の事なのにモヤモヤしてしまう。
そんな中で変わったことなんて些細で、前にもまして睨まれるとか、意図してぶつかられるとか、こそこそ嫌味を言われるとか等々。イベント的な大きなものが起こらないのは私が偽物のヒロイン役のせいだろうか。
寮生活となりエルにも師匠にもほとんど会えていない。子ぎつねの時の穏やかな時間を欲してしまうのは、他人からの悪意ある視線で精神をすり減らしてきているせいだろう。
再度ため息をつくと足音が聞こえてきたので、その場を立ち去ろうとベンチから立ち上がる。
足音に背を向けて立ち去ろうとしたが名前を呼ばれ振り返るとリーナが居た。
「あ!ルー。珍しいね。いつもレイフ先生の周りにいるのに」
「リーナ。珍しいね。こんな遅くに。お手伝い終わったから帰る途中。ちょっと息抜きしてただけ」
「あー。任務とは言えどこに行っても注目されるのは疲れるもんね。お疲れ様」
「ほんと変わってほしいなー」
冗談を言うと居た堪れないのか何とも言えない表情になったリーナに思わず笑みがこぼれる。
「もー!意地悪!」
「ごめん、ごめん。でも、ゆっくり学生生活楽しめてないんだから、ちょっとの冗談位許されるでしょ?」
「まぁ…最近元気ないなって思ってたから今回は許して差し上げます!」
おどけて言うリーナに可笑しくなって2人で笑う。
「元気ないって…そんなに分かりやすかった?」
「うーん。私は事情を知っているから他の人よりもルーを観察しちゃってるんだと思う。他の人は分かってないんじゃないかな?で、どうしたの?疲れちゃった?」
初日から今日までリーナはそれとなく近くにいてくれる。どんなに仲良くなっても他の人だとリーナ程気を許すわけにはいかないので気持ち的にかなり助かっている。
「うーん…嫌がらせの頻度は増えてるのは任務だからってあんまり気にならないんだけど、それ以外何の進展もないでしょう?単調で前の生活とか思い出しちゃうからかな?」
「そっか。ルーが前はどんな生活していたか分からないけど、いつも気を張っているから疲れてきたんじゃない?だから、きっと前の生活が恋しくなったんだね」
「うん…そう、なのかも」
「そう言う時は全く違うことをするとか、会いたいなって思った人に会うとか、自分で自分をいたわってあげないと倒れちゃうかもよ?私にできることがあるならいつでも言ってね?」
会いたい人に会う…リーナの言葉を聞いて真っ先にエルの顔が思い浮かぶ。
そっか。会いに行けば良いのか。
最近はこの体に馴染んで霊体で行動することなんてしなかった。…っというか思いつかなかった。まぁ…宿題に手間取ってそこまで頭を働かせる時間がなかったことはこの際忘れておこう。
エルと校長の覚えがめでたく、さらにレイフ先生のお眼鏡にも叶ったことになっているので先生たちの期待の目が痛い。サラッと私に追加の課題を出す先生がいるのも悩みの種だ。たまにこれあなたの趣味では?と言うのがあるけど真面目にこなすのは日本人の性だろう。当初は値を上げてエルや師匠に唯一関連書籍を進めてくれるだけ。頼ろうとしたら「後々、役に立つだろうから自分で何とかしろ」って手伝ってくれない。 下地のない私は何度発狂しかけたか…。任務頑張っているんだからもう少し私に優しくしてくれてもいいと思う。
閑話休題。
「ありがとう。リーナには今度買い物に付き合ってほしいな!まだ街に行ってないからお薦め教えて欲しい」
「いいよ!いつでも声かけて!」
「とりあえず、今日はやりたいようにしようと思う!眠いからいっぱい寝る!」
「うん!それが良いと思う。じゃ、私も行くね。また明日クラスで」
そう言うとリーナ笑顔で手を振りながら去っていった。
さて、部屋に戻って寝たふりして、この体から抜け出しますか!




