作戦会議
「さて、どうしますか…」
とりあえずカトリナさんには今日のところはお帰り頂いた後師匠の執務室に移りいつもの3人で今後について話し合う。
「なんとも信じられない話だったけど、嘘は無さそうなのよね…パールも特に変なことは感じなかったでしょ?」
「はい。私よりも多くの事を知っていましたが、話の内容に嘘はないと思います」
「しかし、彼女の知っている話しと今流行っている病とは齟齬が応じているようですが?」
「そこよねー。寧ろ話のままなら即解決とまでいかなくても、もっと簡単だったのだけど…」
師匠はだらしなく机に寄り掛かり頬杖をつく。
確かに話の通りであれば流行り病の方は師匠程の人ならある程度目星をつけることは簡単だったのだろう。しかし、現実では呪いの可能性は皆無。私に見えていないし、カトリナさんが浄化を試したようなのでその線はあり得ない。でも、ゲームと同じ流れと言うのが気になる。
救いなのは重症な生徒が出ていない事。回復魔法で治って、2,3日安静で済んでいる様だし…男女関係なくかかっている。
「そういえば、気になってたんですけどレイフ先生って人気なんですか?」
瓶底眼鏡のホワホワした人っていう印象しかないのだけれど…
「ああ、私は最近魔法の授業に呼ばれてないから聞いた話なんだが。なんでもメガネが壊れて新調してから雰囲気が変わりレイフ先生に熱を上げている生徒が多いようだ。エルフは見目が良い物が多いから先生も例に漏れないのだろう」
あー…納得。見た目良し、性格も優しくてちょっと大丈夫かな?って思わせる感じが母性本能をくすぐるのだろう。
「ってことは、カトリナ嬢の話した物語と今の状況に大きな差異はないってことよねー…ま、救いは私が攻略対象ではないってことかしら」
(この状態の師匠が攻略対象って…うん…カオス…)
「何?なんか2人共言いたいことがあるようだけど?」
エルも似たようなことを思ったのだろう。2人して師匠にジト目で睨まれる。
「ある意味、予言を聞いたことになりますが問題は話の主人公がいないことが悪い方に影響しないと良いんですが…」
ゴホンと咳ばらいをしたエルが師匠のジト目を避ける様に話題を変えた。
「そうですね。可能性としたらやっぱり前回の呪いと話の中の術者は同一人物と見做すのが適切でしょうか?」
師匠もエルも呪いは禁術と言っていたそんなに簡単にできる者ではないと信じたい。いや、寧ろ怖いから同一人物で合ってほしいと若干希望が込められている。
「なんとも言えないわね。禁術を使える者が他者に教えないとも限らない。寧ろ他者を利用している方が可能性的には濃厚じゃないかしら…使用条件とかあるかもしれないし、私たちが分かるのは表面上の知識だけだから何とも言えないわね…」
カトリナさんと言う情報源だけでは足りずまた行き詰ってしまうのか…ゲームのように選択肢が提示されていれば話はどんどん進んでいくのに。やっぱり現実には無数の可能性があり、進にもそれぞれの可能性を潰す必要がある。時間が掛かってしまうことは仕方ないのだろう。
「黒幕が出て来るとか問題が解決まで行くかは分からないけど、1つだけ進展が望める案があるんだけどねー」
「嫌な予感がします」
「あら、エルにはそこまで体力的な負担ないと思うんだけど?」
何か含みのある言い方をした師匠にエルは何となく師匠が良からぬことを考えていると分かっているようで眉根がギュッと寄っている。
「いい話の予感は全くしませんが、一応聞きましょう。このままでは先に進みませんから…」
師匠は少し呆れたように相変わらず可愛くないわねっと愚痴を零してから続きを話し始めた。
「私たちがわかっていることは、現状がある程度カトリナ嬢が話した物語に沿っていると言う事。このまま自然に任せるのもアリだけど、どんな展開になるか分からない。なら、物語に合わせる様に動く方がある程度対策がしやすいでしょ?」
「確かに。一理ありますね」
「今、その物語に足りていないのはカトリナ嬢がなるはずだった主人公。だから主人公を復活させればいいのよ!」
「ま、待ってください!それではカトリナさんが危なくないですか?」
聞いた内容だと主人公は魔獣に襲われる可能性がある。しかも、最悪呪われる可能性も…そんな危ないことをさせる訳にはいかない。師匠の事だからたっぷり警護を付けるんだろうし、万全の態勢で臨むんだろうけど…
「あら、誰もカトリナ嬢とは言ってないわよ?しかも、彼女他国の留学生だし、責任問題になっても困るしね」
「カトリナさんじゃなくてもこの国の貴族のお嬢様がやるには危険が多すぎます!」
「それも面倒でしょ?傷物にしたなんて言われて無理やり私に嫁がせるとかそう言う政的な画策されても困るし。で、パール、では問題です。他国出身でなく、貴族でなく、自衛ができる私が信頼できる女性ってだーれだ?」
そんなにっこり微笑まれてこちらを見つめらられば答えを言っている様な物でしょ…思わずため息をついてしまうが、私は悪くない。
「私ですか…」
「正解♪あなたなら信頼できるし、警護を厚くする必要もない。って言うか国内最高峰に常に警護されてるしね」
「私は容認できかねます」
今まで黙っていたエルが不機嫌そうに言う。
「あら?いい案だと思うわよ?エルは他に何か案があるなら聞きましょう」
彼の懐に入った人に優しい気質で心配してくれたエルには申し訳ないけど、私も1番進展が望めるのはこの案なはず。
師匠に尋ねられてグッと黙ってしまったエルも分かっている事だと思う。
「1番いいのは分かりますが、狐の姿ではなく人型となると私や師匠と常に行動を共にすることは叶いません。常に警護されているとは言えないのでは?」
「そうね。呪いとか魔法の心配より人の悪意の方がこの場合は問題ね。学校で接点の少ない私はその点で力になれるか微妙だけど、可能な限りエルと一緒にできる様に取り計らうつもり。それ以外はレイフ先生とカトリナ嬢に応援を頼みましょう」
顔に渋々とあからさまに書いてある顔でエルが頷いた。
その後作戦会議は夜まで続いた。




