カトリナの記憶2
カトリナさんが話し終わると室内はシーンと静まり帰っていた。
ある程度予備知識のある私でもびっくりする内容だっただけに、みんな自分の中で消化中なのだろう。
1で師匠はお助けキャラだったのか…攻略対象だと思ってた…。っというか2ndなんてあったんだ。え?カトリナさん主人公?主人公なしで話が進むなんてありなのだろうか?
「あのー…皆さん大丈夫ですか?パールさん…?」
誰一人言葉を発しない状況に痺れを切らしてカトリナさんが恐る恐るこちらを窺っていた。
「あ、すみません。色々知らないことが多すぎて混乱してました」
「いえ。分かります。内容濃すぎですよね」
お互い顔を見合わせて苦笑いしてしまうのは仕方ない。
「因みに、1の攻略対象は王子、フリクセル、トビアスで合ってます?」
「ええ、後は隠しキャラのエルランド様ですかね」
「私⁈」
何か考えていたエルは名前が呼ばれたことにかなり驚いていた。
「はい。見たところ1の主人公は王子狙いの様ですのでエルランド様には特にこれと言って注意することは無いかと」
「ちょっと待て。王子には注意することがあるのか?」
王家絡みと会って師匠の視線が鋭くなる。
少し怯えたように体を固くしたカトリナさんは弱弱しく内容を話したが、ほとんどは主人公が危険で王子に危機があるとすればそれに巻き込まれる可能性だけだという。
彼女の言っていた誘拐事件イベントってもしかして私が攫われた奴?内容は違っていたが、そのイベントでは攫われた主人公を王子が颯爽と助けに来てくれるらしい。…知らないうちにイベント潰したのかな…ごめんね、リサさん…。
「因みに2ndで師匠が話に出ている様ですが特に気を付けることはありますか?」
「確証はありませんが、読んだ情報だとレイフ先生ルートは他のキャラクターの登場がほとんどないらしいです。ミルド様の話は無かった様に思います。唯一、水の精霊様が出てくるらしいという位しかわかりません…」
「そうですか。みなも様にも今度一応お話しした方が良さそうですね…」
最近バタバタしている師匠の呼び出しに答えられるよう森には行ってなかった。この際いい機会だから遊びに行って来よう。
気分が少し上向いたところでドカッという音で現実に引き戻された。
音の発生源は師匠のようで、疲れたように椅子の背に身を任せている。
「あの…師匠?大丈夫ですか?」
「んなわけないでしょ!何よ。わけわからないったらありゃしないわ!」
「師匠!地が出てます!カトリナさんが…」
「出てるんじゃ無くて出したのよ。この子とはこれから長い付き合いになりそうだしね。これが地よ。よろしくね、カトリナ嬢」
この美丈夫の変化に耐えられなかったのかカトリナさんは見事に石化している。
「師匠、カトリナ嬢には刺激が強いのでネコ被ってた方が良かったのでは?」
「できなくないけど、このメンツでいる時位気を抜きたいじゃない?この子も悪い子ではなさそうだし。この事秘密にできるわよね?カトリナ嬢?」
うわぁ…イケメンの微笑みに脅しが乗るとここまで怖いのかっと他人事のように見ていると石化から今度は青くなったカトリナさんが一心不乱に頷いている。
「ほら、約束取り付けた。ま、これバラされて痛い事なんて特にないんだけど。ようやくオネェ疑惑が薄らいできたからぶり返されるのも面倒だしね。寧ろ私の秘密を知ることで簡単には裏切れなくなったでしょ。そうよね?カトリナ嬢?」
あっけらかんと笑う師匠を見たカトリナさんはギギギっと音がしそうなほどぎこちなくこちらに〈この方誰ですか⁈〉と言う視線を寄越した。
「ま、そのうち慣れますよ?」
他に何と言ったらいいのかわからず事実を述べる。だって、私なんだかんだで慣れたもの。
「いやいや!待って!え?ミルド様の性格違い過ぎるんですけど!あのミステリアスでちょっと冷たそうな感じどこ行ったの?」
「え?元からこんな感じですよ?」
「マジか…ゲームと現実とは違うと思ってたけど、王子もフリクセルもトビアスもそのままぽかったから…じゃ、私の推しモブさんも性格違うのかな…」
「ま、元気出して?」
「疑問形で言われても元気出ません…」
しょぼーんっとしてしまったカトリナさんをどうにかできないかと男性2人を見るが顔に〈お前に任せる〉と書いてある。
「でも、王子達は性格そのままだったんでしょ?そのままの可能性も捨てきれませんし、それにモブですよね?性格は分からないんじゃないですか?」
「いえ、彼はモブと言っても出てくる回数はそれなりにあったんです!制服みたいなのを着ていて顔は隠れてたんですけど、名前はあって、キュラスさん。今のところその名前の方に会ってないんですよね。1の情報屋さんで攻略対象や主人公にお助けキャラからの伝言を内密に伝える役で数回出てくるんです。得体のしれない感じと立ち絵が素敵でコアなファンが結構いたんですよ!絶対イケメンオーラ凄いんですから!しかも、幸運にも私の買ったスペシャルエディションでは音声付きで!思っていた通りの柔らかい声がドンピシャだったんです!その声でサラッと主人公を気遣う感じ!この尊さわかってくれます?!もし3が出るなら攻略対象になるんじゃないかってネットで盛り上がってたんです!」
先ほどの意気消沈はどこへやら今度は前のめりに説明してくれる。ちょっと待って。カトリナさん息継ぎしてる? ま、でも元気になってよかった、のかな?
この後少しの間カトリナさんの推し話は続いたのだった。
評価、ブックマーク、誤字報告ありがとうございます!投稿前に何度か見直してはいるんですが、誤字の多さに戦々恐々としました…修正して下さった皆様ありがとうございます!総合評価も増えていてとても嬉しいです!今夜いい夢見れそうです(笑)いつも読んで下さり本当にありがとうございます。




