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神殿にて2


正面に座った新たなイケメンはフェリックスさんというらしい。エルとは聞いていた通り知り合いのようで今は少々雑談中だ。


「では、本題に移りましょうか。今回神殿を訪れた理由は未知の体験記述に関する関連資料の情報収集でしたか?」

「はい。実は先日公爵家に保管してある貴重本にて面白いものを見つけまして。体と魔力の分離についてです。著者は幽体離脱のような体験をし、精霊に会いともに魔法を使ったと記述されておりました。しかし、どうやって魔力が離れ、そしてどのように体に戻ったか記載されてませんでした。そんなことが可能であれば何か今後の役に立つのではと調べ始めたのですが魔法に関連する本ではそのような事例を説明できず、神殿の書物であれば何か手がかりがあるかと思いお時間のある時にとお願いしたのですが、まさかこんな忙しい時期にお時間を作っていただけるとは…」


エルは少し申し訳なさそうにしながらもフェリックスさんの反応を待つ。

ほんの少しの間思い出すように考えた後申し訳なさそうに首を振る。


「私が知る限りその事例に関連する物は神殿にもないと思われます。一応、今後時間のある時に探してみますが、あまり期待しないでください」


そんなに簡単に解ることではないと理解していたつもりだが、やはりショックだ。

シュンとしてしまうと同時に彼は今後探してみてくれるらしいから期待せずに見つかることを願っていよう。


気を取り直して頭を上げるとフェリックスさんと目が合った。驚いて目を見張る私とは対照的に何やら楽し気に見える。



「ここからは注意点兼お説教です。エルランド様」


エルはギョッとしたようにフェリックスさんを見る。


「まず初めに。公爵家の貴重本の話の嘘はなぜです?私が公爵家の事まで知らないと思いましたか?そう思ったのならそれは間違いです。普通の本なら分かりませんが、あなたは公爵家の貴重な本っと言ってしまった。貴重な本ならば総量は多くない、私が重要書物を記憶している可能性を忘れている。私の職業わかってますよね?」


「…はい」

「次にこの仔がこの場にいる意味。先ほどの話だと関連性はない。しかし、私はあなたがわざわざこの仔を連れてくることを手紙で明言していたことも知っています。エルランド様は合理的なお方。愛玩動物だとしても今回連れてくる意味は?若しくは不自然に見えない様どうにかして話に絡ませるべきだった。以上の点から今回の話はこの魔獣の仔に関係している。しかし、何かしらの事情で大っぴらには聞けない。そうではありませんか?」



うわー…核心ついてる…。

呆然とフェリックスさんの話を聞いていたが、なんとも理路整然と話を進めていく人だろう。


正論にエルは石化中だ。



『どうしましょう?』

『これはもう正直に話すしかない。パールには申し訳ないが…。この人の興味をひいてしまったが最後どうせ調べ尽くされるんだ…』


何それ怖い…でも、先ほどからの雰囲気とかから見て悪い人ではないと思うんだよ。頭もいいし。


『勘が大丈夫と言っているので、話してしまいましょう。助っ人は多い方が良いですし』




エルはふーっと息を吐いた後再びフェリックスさんに視線を戻す。


「私もまだまだと言う事ですね…」

「いえ、仮に相手が私でなければ問題なかったと思います、が、相手を考慮していなかった判断の甘さは否めませんね」

「覚えておきます…では、この件は重要案件です。神と王に誓って無断で情報を開示しないと宣言してください。そうでなければ話せません」


え、エル、それ重いよ…

一方フェリックスさんは少し眉根を寄せた後見極めようとエルをじっと見る。


「この国に対する不利益になるのであればできない」

「それはあり得ない。寧ろ宣言により利益を享受できる可能性の方が高いかと」

「…わかりました。私、フェリックス・グランは神と王に誓って秘密を秘すると誓います」

「ありがとうございます。では…」


そこから今まであった要点を掻い摘んで説明する。そして、私が体に戻る方法を探していることも。


「なるほど。利益の方がありそうですね。まさか精霊王様のお気に入りとは…あと、ここまで聞いておいて難ですが一応姿を確認させてもらえますか?」



エルはメガネを渡し、フェリックスさんが掛けるとこちらを見て頷く。それを合図に子ぎつねパールから出るとフェリックスさんが固まっている。初めて師匠の前に出た時を思い出す。


懐かしくも可笑しくもあり思わず笑うと彼の目が更に見開かれた。


「女神…」


ボソッと呟かれた言葉は私の耳にまで届くことはなかった。


『初めまして。エルランド様にお世話になっていますパールと申します。宜しくお願い致します』


フェリックスさんはわざわざ私の向かいに足を運び恭しくお辞儀をする。


『副神官長をしております。フェリックス・グランと申します。あなたのお力になれること嬉しく思います』


そういった後私の手を取ろうとするがもちろん触れることは無い。


『触れることはできないのですね』


「フェリックス?何をしようとした?」


何やら急に不機嫌そうになったエルがフェリックスさんを睨む。

そんなことを気にする様子もなくフェリックスさんは少し考えた後私に向き直った。


「パールさん。今はエルランド様があなたの保護者と言う事で間違いないですか?」


「はい。それがどうかしましたか?」


私の返答を聞くと楽しそうに笑いエルに向き直って驚くことを言い出した。


「エルランド様はパールさんの保護者と言う事、ならば念のため了承を取るのが筋かと…」


「何を言っている?」


楽しそうなフェリックスさんとは対照的にエルはかなり戸惑っているように見える。珍しい。


「いえ、簡単なことです。パールさんに一目惚れしました。これから口説いて行こうかと思うのでご了承ください」


フェリックスさんはそれはそれは爽やかに爆弾発言を投下した。


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