解決へ4
夜が明けるとエルと別れて雇い主の部屋へ行く。
彼は朝食を取り終わるや否や執事と共に部屋を出て外に待機させてあった馬車へ乗り込んだ。
外はとてもいい天気で私はその雰囲気を楽しみつつ馬車の屋根の上で目的地到着を待つ。
時間的には2時間位立っただろうか。王都に入ると大きな邸宅が立ち並ぶエリアで場所でスピードを落として止まるそぶりを見せた。
馬車の止まった入り口の門で御者の執事が訪問旨を告げると門が開かれた。奥の家は赤い屋根に白い壁。とてもかわいらしい印象だ。この家の人がホワイトフォックスを欲しがったのだろうか?
邸宅の入り口に着くと相手の執事が出迎えていた。馬車から降りた雇い主の男性を確認すると挨拶の言葉を簡潔に述べ彼の主人の元へ案内する。
外の可愛い外見とは違い中はよく言えば豪華絢爛、悪く言えば目がチカチカする。センスは…まぁ私の主観で言えば余り良いとは言えない。眼球疲労を感じ始めそうになってきたところで目的地に着いたようだ。
いよいよ依頼主の登場か。
執事が明けた扉を通って室内へ入る。執務室の様な部屋で机に向かっていた中肉中背の男性が顔を上げた。着ている服が主張が激しく顔に注意が向かない…。
「来たか。そこに座って暫し待て」
机の右側に配置されたローテーブルを指してそう言うとまた手を動かし始めた。
先ほど部屋を出たこの家の執事がお茶を入れ終わると同時にこの部屋の主が雇い主の反対側へ腰を下ろした。
「まったく。たかが小さい魔獣を捕まえるだけの簡単な仕事を大事にしおって。お前のツテを見込んで依頼をしたというのに…」
「申し訳ありません。公爵令嬢方がなかなか魔獣を引き渡さなかったようでして…」
「次に私からの依頼があったらもっと質の良い者を雇うことだな。そうでなければもうお前に頼むことは無いだろう」
「申し訳ありません…その、公爵令嬢達はいかがいたしましょう?できれば、穏便に済まして頂きたく…」
「フン。お前はあの公爵家ともやり取りがあるんだったな。私も万が一にでも公爵家に感づかれたくない。ここは早々に家に帰ってもらう必要がある」
そういうと依頼主の男は暫しの間宙を眺め、視線を雇った男に戻した。
「この後令嬢の元に戻ったら2人を馬車に乗せ北の山道へ向かわせろ。それと同時に誰か適当に手配して王宮に公爵令嬢らしき人物を乗せた馬車を見たと報告させよ。王宮の騎士たちが来たら馬車を捨て退散。令嬢共を騎士に救出させればこの件はこれ以上調べられることは無いだろう。お前も指示が終わったら早々に退散、今回使った屋敷周辺には当分近づくな」
「畏まりました。そのように。では、魔獣はどういたしますか?」
「令嬢達とは別に魔獣ももっと遠い僻地にでも移しておけ。この件が落ち着き次第魔獣を他国に売りに行けば良い。変わり者公爵子息も見つからなければすぐに諦めるだろう。たかが魔獣。公爵家が本当に欲するならばすぐにでも違う個体が手に入るはずだ。寧ろこれを機会に近づくか…お前の扱う物の中にあの魔獣よりも質のいいペットはいるか?」
もう今回の件についての話は聞けそうにない。…にしても、私の扱い雑じゃない?
良いさ。今のうちにいい夢見ていれば。
私は彼らのいる部屋を後にして屋根の上に出ると師匠をイメージして転移する。
目の前の景色が揺れ、いつもとは違う部屋にいる背の高い男性の長い黒髪が目に入る。
師匠は真剣な顔で資料に目を通すと近くで待っていた男性に視線を移す。
「……状況は分かった。上出来だ。後は私の元に連絡が来れば兵を動かす指示を伝える。それまで持ち場で待機していてくれ」
いつものふにゃふにゃしたしゃべり方でない師匠は何度見ても違和感だ。かっこいいけど。
話しかけれかけれた男性は恭しくお辞儀をすると部屋を出て行った。
『師匠ー。パール只今戻りました』「うわ!」
流石に見えてないところから声がしたせいか師匠を驚かせてしまったようだ。
「もう。分かってはいたけどビックリしたわ。見えない事は良し悪しね。で、首尾の方は?」
「はい。男は黒い柵の入り口に赤い屋根の大きな邸宅にいます」
「正確な住所は…分からないわよね?」
「申し訳ないんですが、そこまでは…」
「いいわ。そこまで期待してなかったし。近くまで私を連れて転移して。エルに教わったからできるわよね?」
そういい終わると同時に師匠は私に近寄り魔力を流す。
師匠の魔力は静かにやさしく照らす月明かりのようだと思う。
師匠の魔力を感じ取り、今転移してきた家の屋根へ戻る。
「ふーん、やっぱりね。いいわ。こちらはもう大丈夫だからエルの元へ戻りなさい」
そういい終わるや否や師匠は転移で消えて行った。
よし!解決まであと少し。
私もエルの元へ転移する。




