学園にて2
とりあえず、手に取れるかわからないが図書館を探そうと学校見学を続けることにした。
しばらく歩くと少し扉が開いている部屋があった。
試しに入ってみると薄暗い部屋の中、本や何かの道具が整頓されて置いてある。その奥に1人の美少年が机に向かって何かを一生懸命書いていた。覗き込むと細かい文字が円形に書かれた中に幾何学模様が書かれている。
書き終えたのか作者が無属性の魔法を流す。銀色の粒子が図形に流れるが1か所途切れている。
メガネをかけた彼がボソッとおかしい。ちゃんと光ってるのにと呟いた。途切れているところが見えてないのだろうか? 模様を見つめながらブツブツ何かつぶやいているが、一向に光っていない場所に目を向けない。
もどかしくなり、声が聞こえないことを忘れて途切れている場所を指さす。
「ここが原因ですよ。ここが光らなかったんです。ちょっと聞いてます?ここなんですって!」
真剣な彼を助けようと勢い余ってその部分に触れてしまうと図形が強く光り燃えてしまった。光のせいで身を引いた彼にけがを負わすことはなかったが、彼の物を燃やしてしまった。
机には四角く燃えた跡がついていた。
「なんだったんだ?!」
パニックに陥っているのか周りをきょろきょろ見回すと、私の方を見て固まる。
「お前はだれだ?!いつからそこにいた?!」
明らかに私に指をさしているが見えているのだろうか?
「えーと、扉が少し空いていたので少し前に勝手に入りました。ごめんなさい」
「話しているようだが、声が出ていない。しゃべれないのか?」
しゃべってはいるんだけれど、と思いつつ困ったように笑うと
「念話はできるか?」
やり方がわからないので首を振る。
「簡単だからやってみよう。言葉を相手の頭の中へ飛ばすイメージで話すんだ。口を開く必要はないが初めては目を閉じて集中するとやり易い」
言われたとおりにやってみるが、届いてないようなので目を閉じてさらに集中する。
「あの、聞こえますか?」
ようやく聞こえたようで彼も念話で話し始めた。
「ああ。で、なぜ君は私の部屋にいた?」
「学校を見学していたらここの扉が少し空いていたので、気になって入ってしまいました。ごめんなさい…」
「で、私の研究を燃やしたのはなぜだ?」
問いただす笑顔が怖い…。
「燃やす気なんてなかったんです!1か所光ってなかったのでお知らせしようとしたら、ちょっと指が当たってしまって、そしたら急に光って燃えだしたんです」
「光ってなかった?それはどこだった?」
「ええと…確か左上あたりだったかと」
「そうか。この精霊のメガネでも見えないものが、君には見えていたのか…ところで、なぜきみは先ほどの魔法陣のように光っているんだ?」
少し落ち着いた彼が不思議そうにこちらを見ている。
「えーと、それはたぶん私が幽霊?だから、ですかね?」
「はぁ?」
今までの尋問が嘘のように間抜けな声がした。
とりあえず、端的に事の次第を話す。死んでしまったこと、気付いたらこの町にいたこと、魔力の流れを見てここに来たこと。
「なるほど。幽霊になって事で魔力が見えるようになったっと…」
疲れたのだろうか、メガネを取って目頭をもむ。
フッと顔をあげると驚いて固まった。
「どうしましたか?」
「……いや、メガネを取ると君が見えないんだ。念話の声は聞こえる…本当に普通の人ではないのだな」
改めてメガネをかけなおしてこちらを見る。
「暗いから分かりにくいが、確かに少し透けて見えるな」
「そのメガネは何なんですか?」
美少年にマジマジ見られる居心地の悪さに耐えかねて質問をする。
「これか?精霊のメガネと言って魔力の流れを見ることができる。魔法陣や魔道具作る際に魔力の流れを確認するために使っている」
メガネをかけた人に会えば見えてしまうのだろうか?それはいい事?いや…除霊の可能性が高まってしまうだけではないか?
「それってどこで買えますか?」
「はぁ?馬鹿を言うな。こんな貴重なもの簡単に買えるわけないだろ?!公爵家の私ですらこれ以外実物を見たことはない」
「公爵…?」
少年を改めて見ると品がある。青髪にヘーゼルの瞳で精悍な顔立ち。
「そういえば、名乗ってなかったな。私はカッセル公爵家の長男エルランド・カッセル。この学園の2年生だ。君は?」
「えっと…パール。名前はパールです。ごめんなさい…他の事はわからないんです。気が付いてから記憶が曖昧で…」
「そうか…」
空気が重い…。重くしたのは私だけど…
「で、では、お邪魔しましたー」
居たたまれずそう言ってくるっと入口の方へ体を向ける。
「おい。待て」
まだ何かあるのだろうかと首だけ振り返ると、また笑顔でキレている彼の顔が見えた。
なんで?この短い会話で何か怒らせることを言っただろうか?
「な、なんでしょう?」
「私の研究を壊したまま逃げようとするとは。それとも、都合の悪いことはすぐ忘れられるポジティブな頭をしているのかな?」
「あ…えっと…すみません?」
「へー。パールさん。謝っただけでいいと思ってるの?あれが形になるまで1ヶ月以上掛かったんだよ?君には誠意ってものがないのかな?」
笑顔の彼から発せられる言葉がグサグサ刺さるんですが…
「えぇと…何か幽霊の私にでも手伝えることはありますか?」
言い終わるや否や勝ち誇ったように微笑まれなぜか冷や汗が出る。
「そうか!有難い。手伝ってくれるか。君の目は魔力の流れを正確にみられるようだ。助手として存分にその能力を発揮してもらおう!」
罪悪感を煽って完全に彼のペースに乗せられた。
「おっと!もうこんな時間か。私は寮に帰るが、明日またここで。行くところがないならここにいてもいいが…いや、君は色々破壊しそうだな」
前科はあるとはいえちょっと失礼ではないか?
「ご心配頂きありがとうございます。夜は夜景を見ていようと思うので明日また来ます」
「なら、学校の時計塔に行くと良い。普通は施錠されているが君には関係ないだろう」
「ありがとうございます。行ってみます」
「では、明日」
ヒラヒラ手を振り彼を見送って閑散としている校内を進んで時計塔に向かう。




