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面倒なお嬢様1


「エルランド様!ご機嫌よう。今日こそ一緒にお昼などいかかですか?」


廊下にヴァレリアの声が響く。

エルよりも1つ上の学年の彼女はどこからともなく現れ、凝りもせずエルを食事に誘う。


ここ数日彼女の突撃を最低1日に1回は受けている。相変わらず香水の匂いがきついので逃げたいところだが、道ずれだとばかりにがっちりとエルにホールドされている。初日に1人で逃げたのをまだ根に持っている様だ。



「いつもお誘い有難いが、今日も軽く食事を済ませたら開発中の物があるので研究室に向かう為遠慮させてもらうよ」


「まぁ毎日大変ですわね。そうですわ!でわ、放課後に私とお茶でもいかがです?ずーっと部屋に籠っていては体に悪いですわ」


「いや、どこで区切りがつくか分からないから待たせてしまうのも悪い。区切りがいいところでパールの散歩をさせるから大丈夫だ」


「あら、ではそのお散歩の道中少し顔を出していただければいいですわ。頭を使うんですもの糖分補給は大事ですわよ」


「有難い誘いだが、パールは散歩中は留まることを好まないからまた機会があれば参加させてもらうよ」


「でしたら、私のお友達が代わりにお散歩して差し上げますわよ、ね?」


先日の取り巻きAとBの方を向き迫力満点の笑顔で尋ねる。2人は引き攣った笑顔で是非っと言う。嫌々感ありすぎだろ…。そんなことを気にせずヴァレリアはエルに再び詰め寄る。


「2人ともかわいい動物が大好きですのよ。2人ともこう言っていますし、息抜きをしてはいかかですか?」


「そうしたいのは山々なんだが、パールは私の事が大好きでね。彼女を置いて女性と仲良くしていると拗ねてしまうんだよ。私も彼女がかわいいのでなるべく彼女といる様にしている。だから、人に預けることはほとんどない。申し訳ないがそろそろ行かなくては。失礼する」


ちょっと!なんてことを言いだすんだ!大好きなんて言ったことないよ!聞いているこっちが恥ずかしくなり悶えたくなるようなことを言ってくれるんだ…。




エルは食堂に寄らずにそのまま研究室へ向かう。


部屋に着くと私を下ろし、部屋にカギを掛ける。前までは施錠していなかったが、先日ヴァレリアの差し入れという名の突撃を受けた為施錠し出したのだ。


「はぁ…毎日毎日よく飽きないな…」


疲れたようにドカッと椅子に腰を下ろす。


「同感です。私なら心折れている頃です」


「だろう?私は悪いとまではいかないがかなり素っ気ない対応を取っているなのになんで毎日くるんだ?」


「興味のない人に燃えるタイプの人なんじゃないですか?っていうか私を理由に使い過ぎです!しかも、最後あれ!何恥ずかしい事いってくれちゃってるんですか!」


先ほどの発言を思い出して顔が熱くなる。本当毛皮で覆われていて良かった。そうでなければたぶん顔が赤くなっている。


「仕方ないだろ?君を使うのが一番角が立たない。彼女の家は伯爵位だがあそこの家は財力が桁外れにあって扱いが面倒なんだ」


エルの反応になんだかガッカリする。…私はエルになんて言ってほしかったのだろう。

考えても答えは出そうにない。

そんな私を尻目にエルは話し続けている。


「彼女の兄はあんな感じではないからきっとあのがめつい父親に似たのだろう。兄が健康でこの学校に在学していたら彼女の振舞いも少しはマシだろうに…」


「彼女にお兄さんがいるんですか?」


「ああ。本当なら最高学年、年子だから彼女と同じ3年生だ。昨年の新年度前に体調を崩してから休学している。感染力の強い病だから家族以外は面会できていないのでどの程度ひどいものなのか分からないが、今も登校していないところを見ると芳しくないのだろう」


「え?あの子は学校に来てていいんですか?」


「なんでも予防薬があるそうで家族や家の使用人はそれを飲んでいるから罹らないらしい。社交の場にほとんど行ってないから詳しくは知らないが」


予防薬があるなら治療薬があってもいいはずだけど、あの子のお兄さんには効きずらいのかな?


それにしてもあの子と違って良識のあるお兄さんが今ここにいてほしかった。連日ともなると突撃されているエルだけでなく私もうんざりしてきた。


「そういえば、お昼まだですね。食べないんですか?」


私は今のところ食べなくてもいいが、エルは仕事を始める前に何か食べた方が良いだろう。


「いや、彼女たちが居なくなったら食べようと思う。今日は午後が自由時間で良かった」


「じゃ、エルが何かやってる間に食堂見てきましょうか?」


「そうだな。頼んだ」


「体置いていきますね」


くるっと丸くなり体から抜ける。エルは念のため時空間魔法を掛けてくれる。


行ってきますと言い残して部屋を出た。


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