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お茶会1

あれから師匠とエルの転移の扉(仮)の製作に付いて行ったり、エルと共に授業を受けたりして何事もなく日々が過ぎていった。



しかし、今日は朝から周りが騒がしい。耳を澄まして周りの雑音を拾うとどうやら王子の婚約者選定が始まると通達があったようだ。果たしてミルド師匠の言っていた通りこれから色々大変なことになるのだろうか。


そういえばゲームの主人公って婚約者候補に入れるのかな?王子たちの絵は嫌という程見せられたから思い出したけれど、スチルの主人公は顔が見えない感じで書かれていたからクラスの中でそれっぽい子を見つけたけど確信がない。逆に悪役令嬢は簡単に見つかった。何となくでも聞いた話を覚えていたから見た目も分かるし、それに地位と雰囲気を加味すれば1人しかいない。とりあえず2人の動向には気を配っておこう。



今日は午後の授業だけ出席するエルに付いて授業を受ける。


授業が終り教室を出て研究室に向かおうとするとある女子生徒に呼び止められる。


エルが振り向くとそこにいたのは主人公と思しき女の子。名前は確かリサ、リサ・スバルド。


スバルド子爵家長女。茶髪のゆるふわミディアムに明るい茶色の瞳。前世で見慣れた配色がなんだか落ち着く。スチルの髪色と同じだ。主人公なら定説は男爵家だが高位ではないのと名前が日本人ぽいのでたぶん主人公で間違いない。そんな子がどうしてエルに話しかけてきたのだろう。


「何か用か?リサ嬢」


「いきなり呼び止めてしまって申し訳ございません。実はこの後女子寮でお茶会があるのですが、もしお許しいただけるのであればパール様をしばらく貸していただけないでしょうか?」


「理由を聞いても?」


「単純な理由ですが、密かにパール様は女子の中で人気なのです。ふわふわで小さくていつもそっとエルランド様の傍にいる忠犬さ。近くで愛でたい女子が多いのです。なぜか皆様にお願いされて私がお声を掛けましたが、みなさんお近づきになりたいと思っているのです」


な、なんだか恥ずかしいことを言われた気がするが気のせいだろう。



『どうする?』


大人しくしていたらエルから念話が飛んできた。


色々情報収集するのにいい機会だろう。主人公と悪役令嬢の関係性も見ておきたいし。主人公と攻略対象達との関係性もうまくいけば分かるかもしれない。


『行ってきますよ。特別何するわけでもないでしょうし。あ、でも帰りは送らなくていいって言っておいてください。適当なところで抜けるので』


『分かった。とりあえず、師匠の言ってたこともある。誰にも懐くなよ。一応彼女にも釘を刺しておくが気を付けてくれ』


はーいっと返事をするとエルはリサさんに向かって返答する。


「わかった。君の後ろを付いて行くように言い聞かせた。困ったことがあれば話しかければ大概の事は理解するから何かあれば話しかけると良い。あと、 基本友好的だがそれでも一応魔獣だ。君たちが怪我しない為にも軽く撫でるくらいにしておいてくれ。気まぐれなとこもあるからお茶会中に姿が見えなくなっても探さなくていい。勝手に帰ってくるから送り届ける必要はない」


「わかりました。ありがとうございます。お借り致します」



エルに行ってきますと言って腕の中から飛び降りる。


しばらくリサさんの後ろを歩いていると反対から王子一行が歩いてきた。

リサさんは端に寄って礼をする。


やっぱり彼女が主人公だろう。こうも簡単にこの広い校舎で攻略対象達に会うんだから。状況把握したい私にしてみれば願ったり叶ったりなんだけれど。



「やぁリサ嬢。君がパールと一緒にいるなんてエルはどうしたんだい?」


「これから女子寮のお茶会なのですが、みなさんパール様と戯れたいということでエルランド様にお願いして少しの間お借りしたんです」


「そうか。パールは可愛いからね。女性は好きだろうね」


「よくエルが貸してくれたな。いつもはあんなにべったりパールにくっつているのに」


「フリクセル…エルに聞かれたら怒られますよ」


相変わらずフリクセルは一言多いようでトビアスに突っ込まれている。

そういえばエルから離れて違うところに行くなんて初めての事かも。


そんな2人の様子をリサさんが微笑んで見ている。

うーん…恋愛感情はなさそう。


そんなことを思っているといつの間にか王子が目の前に屈んでいた。

気付くと優しく微笑みながら撫でられる。王子さまは意外に?動物が好きなようだ。


「今度私もエルに頼んで借りようかな」


「ウルリク王子の執務の間の癒しになってもらえばいいかもしれませんね。仕事の効率が上がるかも」


ニヤっとしながらフリクセルが言う。この人は結構皮肉屋なのかな。

そんなやり取りを聞きながら、フッとリサさんを見ると顔が赤い。視線の先にはウルリク王子。どうやら主人公は王道路線を進んでいる様です。


「みんな待っているだろう。呼び止めてすまなかったね」


「い、いえ。では、皆様失礼いたします」



王子の元を去って少ししてからリサさんはいきなり止まって片手を壁に突いた。

何やらブツブツ言っている。周りに誰もいないからいいものの完全に不審者だ。

何を言っているのかと耳を澄ます。


「あの笑顔反則…心臓止まるかと思った…今日の運はもう絶対使い果たした」


思った以上に王子の事が好きらしい。確かに好きな人が優しく微笑んでいる姿を見たら悶えたくなるよね。あの場で耐えたリサさんは流石令嬢ということだろう。 この2人はゲームのように上手くくっ付く事が出来るのだろうか。あとでエルにさり気なく聞いてみよう。




彼女が落ち着くまで待って、メインのお茶会へ向かう。

私がいることを思い出したリサさんは歩き出す前に恥ずかしそうに「今のは内緒ですからね」とかわいらしく言った。流石主人公。動物にも気配りも完璧だ。


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