師匠3
それからしばらくして完成したようで近くに呼ばれた。
足元では何も見えないので失礼ながら机の上に飛び乗らせてもらった。
「ところで、エル。パールにはこれが何だか説明したの?」
「した…か?」
聞いてないのでフルフルと首を振る。
「パール…あなたが破壊したから手伝ったらしいけど、エルがもし悪い人だったら?これで誰かを害するかもしれないのよ?そういう人なら本当のことを言う可能性は低いけど、でも、ちゃんとどんな物なのか、あなたが何をしているのか確認を怠ってはダメよ。あなたも後味の悪い思いは嫌でしょう?」
ため息と共にそう言われ確かにそうだと思う。
あの時はパニックになっていたが、確かめずに信用できるほどエルの事は知らなかった。運よくエルはミルド様からの課題をやっていたから良いものの、誰かを傷つけるようなものを作っていたなら私はきっと自己嫌悪になるだろう。
思わずシュンとしてしまうとミルド様はやさしく続ける。
「だから、記憶がないことを言い訳にせず学びなさい。本も読んでいる様だし、エルと一緒にできるだけ授業も受け、その知識を活用しなさい。知識は駆使すれば魔力にも勝る武器よ。無知をかわいいと思うような子は後々痛い目を見るわ。でも、あなたは違うでしょ?今回の事を反省している様だし、次に生かして同じ間違いは繰り返さないように精進なさい。いいわね?」
「はい!師匠!」
「…いつから君は師匠の弟子になったんだ?」
つい師匠と呼んでしまったが、確かにちょっと違ったかな?
「いいじゃない?不愛想な弟子だけじゃ味気ないもの。それに弟子は師匠の言うことをちゃんと聞くものでしょう?私もその方が都合良いもの」
なんだか思ったよりも不穏な物をミルド師匠から感じた気がするが…気のせいだと思おう。
「さて、エル。ちゃんとパールに説明しなさい」
それからエルが説明してくれたことを要約すると、今回の魔法陣は転移の時空魔法の魔法陣の補助するものだという。無属性で時空魔法の補佐をして通常の人数に数名上乗せして転送できるらしい。理論等何やら難しい説明を受けたが、今の私にはチンプンカンプン。…勉学に励みます。
「何となく分かったかしら?」
「はい。でも、理論は全く分かりませんでした…なので凄さもいまいち…普通は何人位一緒に転移できるものなんです?」
「魔力量と距離によるわね。王宮に仕える平均的な魔法使いでここから普通の馬車で片道2~4時間くらいの距離ね」
「この魔法陣は施術者が残り他人を目的地の魔法陣に飛ばす時のみ使用できる。メインの魔法陣の周りにサブで書かれ、無属性の魔法の魔力をメインの魔法陣に流し補助するものだ。時空間魔法が希少なのでそれを別の方法で支える新しい方法だ」
「これがうまくいけば他の国への外交も今より簡単に行けて、経済の活性化にもつながる可能性のある結構凄いものなのよ?ま、お偉いさん方が使うから検証は慎重にしないといけないけどね。色々対策等もあるから実用化はかなり先になるわ」
色々説明してくれるが難しい。自分で頭の中で要点をまとめると、こっち魔法陣の空間からあっちの魔法陣の空間に送る魔法陣があって、長距離だと普通は何回か中継地点へ立ち寄ってから目的地に着くということらしい。人数が多いと1回で送れないのでそれを解消するために新しい魔法陣が開発された…ということだろうか。
「はぁ…なんかどこでもド〇的な感じと言うことは分かりました」
「なぁにそれ?」「なんだそれは?」
2人とも不思議そうに尋ねてきたので、扉を開くと目的地に着くとても魅力的な道具が描かれていた何かを前世で聞いたことがあることを伝えると2人は難しい顔をして何か考えている。
「あの…?」
「師匠。このアイディア使えますね」
「そうね。ドアに魔法陣を仕込むとなると床との魔法陣を連結する必要があるわね。または魔道具で単独で使える様に」
「あのー…?」
「あら、ごめんなさい。丁度いいアイディアを貰ったから、ついね」
「何が丁度いいんですか?」
「王宮仕えの中には転移を嫌がる者が実は結構いるんだ。自分は飛ばされるだけだからちゃんと着くかもわからないことが怖いらしい。時空間が下手な魔法使いがどこかに行ってしまった例があるからな。王宮の転移で起こることはまずないというのに…だから君の扉のやり方だと相手側が見えるので少し安心感がある。術者も視覚でも接続が確認できる。両者が安心して使える様になる」
なるほど。確かに理解できない状況に放り込まれるってただ大丈夫だと言われても怖いかも。
「扉にするって簡単なことなのに思いつかないものなのね」
なるほどっと感心して2人の説明を聞いて居ると私のお腹がかわいらしく鳴った。
「あ、なんかこの体でもお腹空いたみたいです」
恥ずかしさを誤魔化すようにかぶせる様に言ってみた。
「やっぱり体は機能しているようね」
「でも、これが初めての食事です。約1週間ほど何も食べてません」
「必要最低限機能しているということか、それとも魔力で補っているかのどちらかだな」
「ま、この話は今度にして、お昼もとっくに過ぎているみたいだし王宮の食堂に行きましょうか」
そう言って師匠は私を抱きかかえて食堂へ向かった。
ストック切れ&予定が少々立て込んでいるので今週は更新をお休みさせていただきます。
来週からまた再開しますので引き続きご愛読いただけると嬉しいです。




