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師匠2

「さて、元の話に戻しましょうか。この仔は普通のモンスターじゃないだったかしら。でも、念話だけならできる魔獣もいるわ。他にもあるんでしょ?」


「ええ、寧ろモンスターではなく精霊に近い人間と言った方が正しいかと。あと前世の記憶持ち」


言われてもピンとこないのか明らかに疑問に思っている顔をしている。


「言われても意味わかりませんよね…分かります。私もそうでしたから。一見は百聞に如かずです。師匠、このメガネを掛けてください」


「あら、これ精霊のメガネ?なんか綺麗になってるわね」


エルはその話は後でと言い、私に霊体バージョンになるように言った。


子狐の体から出るとビックリしている師匠と目が合った。


『初めまして。エルランド様にお世話になっているパールと申します。よろしくお願いします』


ペコっと頭を下げる。


「ご丁寧にどうも。エルランドの魔法の師、ミルド・シーデーンと申します。こちらこそよろしく」


ビックリしながらもそういい終わったミルド様はキラキラした顔でこちらを見ている。


既視感があるのはエルのせいだろう。この顔は実験対象(いいもの)を見つけた時の喜々とした顔だ。


そんなことを思っている間ミルド様はメガネを外したり掛けたりしていた。


「師匠…挙動不審です」


「だって仕方ないじゃない?こんな子見たことないもの。なんでもっと早く紹介してくれなかったの!」


鼻息荒くエルに詰め寄る。


「落ち着いて下さい。色々下準備等があったんですよ。私も彼女に会ってからまだ1ヶ月も経っていないんです。早い方ですよ」


濃い出来事が多いせいかエルと出会ってからの日の浅さはなんだか違和感がある。気分的にはもう1年位立ったように感じてしまう。


「その割に2人とも仲いいわね。もっと長いかと思ったわ」


「日々の内容が濃いんですよ…」


少々ため息交じりに答えたエルだが、次の話題で生き生きし出した。


「その濃い日々の中でも昨日は特にそうでした。この国の水の精霊王にお会いすることができたんです!このメガネも精霊王様のご厚意で浄化して頂いたんです」


2人は私をそっちのけで昨日のみなも様の話をしている。


エルランドの話を聞いているミルド様も生き生きしていると言うことは同じ穴の狢ということか。




暇を持て余しているのでとりあえず子ぎつねパールに戻る。


一通り話を聞き終えたミルド様は私を持ち上げた。


「エルの話だと魂の破片と魔力の集合体だからこの魔獣に入れたのかもしれないわね」


「どういうことですか?」


「解明はされてないけれど、魔獣の核は魔力を有するでしょ?ある説ではモンスターの核が回復魔法を自然にかけているという説があるのよ。要はパールの魔力で一定量体を回復させている。だから動ける。それと同時に剥製に掛ける時空間魔法が切れるのも他の魔法がかかっていると仮定すれば一応の説明は付くでしょ?」


「なるほど。でも、それだとパールの魔力を常時消費してますが彼女は消えたり、彼女の意思に反して体から出たりすることはありませんよ?」


「そこが疑問なのよね…。また仮定だけど彼女自体が魔力を引き寄せていれば魔力切れは起きない。このメガネで見える魔力の流れと同じ光が彼女に見えるから、そうも考えられるけど。証明は難しいわね。あら、良い毛並みね」


難しいことを話しながら撫でていたミルド様はこの仔のモフモフがお気に召したようだ。

いつもビアンカが綺麗にしてくれてますからね!


話すまでもないのできゅうと鳴いておく。


なんだか癒しねと言いながらサラサラと撫でられる。


「それで、この子の人間の体を探したいんでしょ?エルの考えは?」


流石師匠、簡単に答えはくれないらしい。っと言っても問われているのはエルだけど。


「1つは彼女の本体を見つける。私の年齢で寝たきりや病気の者、魔法が急に使えなくなった者の情報収集。魂が1部だけ抜けるということは本体に何かの異常があるはずです。魔力も持ってきているということは本体は魔法は使えないと仮定してよいかと。彼女の見た目からして私の年齢とあまり変わらないでしょう。身なりもきちんとしていることから貴族、若しくは大きな商会の娘の可能性が高いと思われます。もう1つは体の本体を見つけるにしろ、見つけられないにしろ体へ戻る方法。うまくいけば体を見つけられなくても戻ることができる。しかし、情報収集は難航するでしょう。魔法に関する本は粗方読んでいますが、彼女の様な話は聞いたことがない。手始めに神殿の神官長に話を聞きに行き、神話等の域まで調べるのが今のところ最有力な方法かと」


なんか物凄く大変そうなんだけど…本当にお願いしてよかったのだろうか…。でも話を聞いている限り私にできそうなことは残念ながらない。


「そうね。それがいいでしょう。情報収集はあなたのお父様にお願いするのが速いでしょうけど、説明が面倒よね…。それに国が絡む大事にはしたくないわね…よし、またコネにちょこっとお願いしてくるわ。情報収集の方は私が動いた方が話が早そうだし。その代わり神官長への謁見の方は自分でやりなさいね」


「わかりました。ありがとうございます」


エルに続いて私もお礼を言う。まさかエルだけでなくミルド様まで協力してくれるなんて思わなかった。


そんな私をみてミルド様は妖しく笑う。


「いいのよ。その代わり色々お願いすると思うけど協力してね」


女性的なしゃべり方の印象が強すぎてわからなかったが、モテ過ぎて困ったのは間違いない。妖艶な雰囲気がある彼に惹きつけられた女性は多いだろう。

ただ今はその妖艶さの後ろにかなりの好奇心が見え隠れしているので私は魅せられているというより蛇に睨まれた蛙状態だ。


ぎこちなく頷くと嬉しそうににっこり笑う。


所々ミルド様の行動でエルを連想するのは師弟関係が良好ということだろうか。

現実逃避をしかけたところでひょいっとミルド様の腕から体が浮いてエルの匂いに包まれた。


「師匠。お手柔らかにお願いします。パールが怯えてます」


「ひどいわね、パール。私が女性に無茶振りするように見える?」


見えますなんて言ったら吹っ飛ばされそう…しかしエルは気にしないようだ。容赦なく突っ込む。


「見えますよ。好奇心には勝てなそうですからね」


「あら、気遣いのないエルには聞いてないわよ」


「言いにくそうなので、代弁したまでです」


「にしても、エルにだけは言われたくないわ!」


「私はもう少し落ち着いて判断します」


『いや、エルも似たか寄ったかだよ?』


ついポロっと本音が出てしまった。

エルがまた綺麗に微笑んでいる…。ミルド様はそれ見たことかとこちらは万遍の笑みだ。




その後エルとミルド様の言い合いを暫し聞いた後。エルに出されていた課題の話題に移ったので私は部屋の端で大人しく2人の会話を聞いていた。


真剣にけれどなんだか楽しそうに話2人の和やかなでそれでいて活気のある雰囲気を私は心穏やかに楽しんでいた。

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