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その夜1





泉からは転移できないということで、妖精に案内されて出口へ向かった。




出口から無事森へ出るとエルランドの転移で寮に戻った。


エルランドは食事の為ダイニングへ向かったが私は特にお腹が空いているわけでもなかったので部屋に戻った。


そう言えばいつの間にか部屋の扉にペットドアが付いていたので出入りが楽になった。執事ヴォルフリートの心遣いだろうか?




部屋に入って窓辺で寛ぐ、何とも濃い1日だった。


王子たちに撫でまわされ、精霊たちに会いに行ったらなぜか精霊王様に出会い。名前を命名させられるという無茶ぶり。


でも、みんな優しい良い人たちだ。幽霊になってから今日まで本当に人に恵まれている。


この家の人達もそうだ。メイドのビアンカはいつもお風呂に入れてくれて丁寧に洗ってくれる。執事のヴォルフリートは殆ど関りがないが色々手配してくれている。時々視線を感じるので監視しているだけかもしれないけど。


(あの日、エルランド様が私の存在に気付いてくれてよかった)




ドアがノックされビアンカが入ってくる。


「パール様。お風呂の時間です。今日もキレイに致しましょうね」


ビアンカはいつも優しく丁寧に洗ってくれる。この時間がかなり好きだ。


ドライヤーの様な魔道具で乾かした後いつも優しく撫でてくれるとこもまた良い。


「はい、パール様。今日も綺麗になりましたよ。本当フカフカでいい毛並みですね」


今日も丁寧に撫でてくれる。


この体のせいか、元々なのか、撫でられるのが好きだということに気づいた。


人の温かい手は本当に気持ちいい。






いつも通り部屋に戻されることなく違う部屋へ連れていかれる。


ビアンカがドアをノックし、声が返って来てドアが開かれる。


なぜここに連れてこられたのだろう…?




「エルランド様、パール様をお連れしました」




「ああ、ありがとう」




エルランドは窓辺近くの長椅子に座り、本を読んでいたようだ。


彼ももお風呂を済ませたのか服装がいつもより軽装で、濡れている髪がなんだか艶っぽい。


ビアンカは私を入り口で降ろす。どうするべきか分からずその場でエルランドとビアンカを交互に見る。




「何してる?来い」


少しだけ本から顔を上げ、ぶっきらぼうに言う。


「エルランド様、お言葉ですが。もう少しお優しいお言葉を使われた方がよろしいかと。いくらパール様はエルランド様のペットとはいえお言葉がきついかと。今から慣れておかないと婚約者探しで苦労しますよ」


私が動き出す前にビアンカのお説教だ。


ここ数日で分かったのはビアンカはメイドとは言えエルランドの年の離れた姉の様な感じだ。


この前も研究室に籠りすぎるエルランドに外で体を動かすように言い聞かせていた。


エルランドも色々言いつつも頭が上がらないようだ。


「婚約者など腐るほど来るだろう。この態度でも地位が欲しい家は気にしないさ」


「またそんなことを言って!旦那様、ましてや奥様がそんな方許すはずないじゃないですか。エルランド様が思いを寄せる方が現れたときにそんな物言いでは怖がられてしまいますよ!」


「現れないかもしれないだろ?そしたら政略結婚だ。このままでも問題ないだろ」


ビアンカは盛大にため息をついた。…何となくその気持ちわからなくもない。


「全く…後々焦っても知りませんからね!」


「ビアンカは私がやればできる子だということを忘れているのではないか?」


ニカっと笑って立ち上がるとこちらへ歩いてきた。


私の目の前でしゃがむと特上の笑顔で両手を広げた。


「きれいになったねパール。ほら、おいで」


変わり身の早さとも思うがなぜか心臓がうるさい位に波打っている。いまエルランドの元に行くのは難題だ。


しかし、ビアンカがいる。ペットなら広げられた腕の中へ行くものだろう。


そんなことを冷静に頭で考えてはいたが、体は既にエルランドの元へ歩き出していたようで気付くとエルランドに抱えられていた。


「ほら、やればできるだろ?」


「結婚とは一瞬で終わるものではないんです。それを毎日やっていくんです。偽ると後から痛い目見ますよ」


「ちょっとづつ素を出せばいつか自然に慣れるだろう」


「…受け入れてくれそうな心の広い方を見つけるんですね。…長居してしまいましたのでこの話はまた後日。失礼いたします」



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