授業2
漫画なら1番大きい怒りのマークが頭についているだろう。そして私の顔は青いだろう。
「みんなすまない。こいつは私のだ。週末山に行った際に助けて懐かれた。学校にも許可を得ているし、害さなければ温厚な性格だ。安心してくれ」
ここは懐いてますよーアピールをしてご機嫌を取っておこう。
エルランドが他の生徒を安心させるためそういい終えると私は彼の足に体を擦り付ける。
そんな私をエルランドはひょいっと持ち上げて抱っこする。
私が嬉しそうにきゅう!っと鳴くと別角にいた女子生徒からは「かわいいー!」と言う声が聞こえてきた。
エルランドは私を連れ中庭の奥の方へ向かうと同時に念話でお説教をされる。
奥の方には特別グループなのか王子や護衛の3人がいた。その人達に指導をしている人に向かってエルランドが話しかける。
「レイフ先生、突然抜けてすみません。うちのペットが勝手に抜け出してきたようで回収してきました」
「そうなんですね~。急に走り出したからビックリしましたが無事に回収できてよかったですね」
その人はネコ毛のふわふわした髪に瓶底眼鏡、でもそれより気になったのは彼の耳。人のそれより長く尖っている。
『エルランド様!もしかしてレイフ先生はエルフですか?』
『ああ、そうだ。街にはあまりいないから初めて会うのか?』
『はい!初めて会いました!』
『なぜそんなに興奮しているんだ?』
愚問!前世の記憶がある身としてファンタジーとくれば魔法!そして魔法のエキスパートのエルフが続くだろう。初日があんなに落ち込んでなければ精霊たちに会えたことも十分興奮する出来事だ。今週末会いに行こうかな。
「エル君。この仔って狂暴?」
レイフ先生が私を指差しながらのんびり尋ねる。
「いいえ。とても賢い温厚な奴です」
「じゃ、僕が預かるからさっきの続きを王子たちに教えてあげて」
「…わかりました。お願いします」
抱っこしてもらわなくても逃げないんだけど、そんなことは先生にわかるはずもないので大人しく抱っこされている。
レイフ先生はエルランドたちを見て指示を飛ばしながら時々背中を撫でてくれる。結構気持ちいい。
王子たちは他の生徒と比べると格段に強い魔力を持ち、技術も高い。しかし、エルランドはさらに別格の様でその王子たちに何やら指導をしている。
(魔力の強さはエルランド>王子>黒髪の子>アッシュブロンドの子って感じかな)
彼らが使う魔力の小川の太さを見えそう思ていると頭にポンと手が置かれた。
「君は僕らと一緒で魔力を感じられるのかな~。君はなんか不思議な感じがするんだよね~」
見上げるとそんなことを言われてし少しヒヤッとする。実際感じるよりもはっきり見えているんだけど…。
でも、話が分かるというのも秘密だから素っ気なく視線を戻した。
そんなこんなで授業が終わるとまたエルランドに返され、抱っこという名の連行をされている。
『全くなんで寄りにも寄って魔法の実技に顔を出すんだ!危ないだろ!』
『申し訳ありません…魔力の流れが多いのが気になりました…』
『来るなら来ると言ってくれれば、それ相応の準備をしたのに』
やっぱり何か面倒な手続きがいるんだ。
『本当にすみません。お手数をかけるくらいなら自分でみた方が良いかと思ったんですが、逆に余計な手間をかけてしまいました』
エルランドは大きくため息をついて研究室に入り私を下ろす。
「いや、ある意味踏ん切りがついた。これで良かったんだろう。明日から付いてきたいならついてきていい」
なんで急に許可が下りたんだろう?面倒な手続きを毎回してくれるということか?
「でも、毎日は手続きが大変でしょうから時々でいいです」
「手続きなどないぞ?」
「え…?ならなんで?」
少し考えた片手で口元を覆い、いつもよりも小さい声の呟き声が聞こえた。
「かわいい小動物を連れている絵面が恥ずかしくて…」
「はい?…え?」
「だから!似合わないだろ!私にかわいいものなんて!今週は心の準備をして来週から連れ出す予定でいたんだ!君は我慢できなかったみたいだが、こんな事なら来週からだと言っておけばよかった…」
え?何そのかわいい理由。そういうお年頃なのかな。
少し耳を赤くしてそう告白するエルランドに私は思わず笑ってしまった。
かわいいきゅきゅという鳴き声が部屋に響く。
「君のせいなんだから、笑うのはおかしいだろ」
じろっと睨まれるが、なぜか怖くない。
「すみません。でも、かっこいい男の人とかわいいものってギャップ萌えでいいと思うんです」
「ギャップ萌え?」
「性質の違う2つの物がお互いの性質を高めること、とでも言いましょうか…」
「なるほど相互作用の事か。なら、まぁいいか。誉め言葉として受け取っておこう。かっこいいと言われて悪い気はしないしな」
気を取り直したのかいつもの調子に戻った。ニヤリとからかう様にこちらを見てくる。
「い、一般的に見てエルランド様はかっこいい部類だと思います」
動揺をできるだけかくしていうが、それまで見越してからかっているようでなんだか癪だ。
「っていうかよく私がいるってわかりましたね?」
「うん?ああ、言ってなかったか。その首輪は君が魔法を使うと居場所がわかるようにしてある」
「あ!だから山で私の場所に来れたんですね」
「まさか、こんなに便利な機能になるとは思ってなかったが」
ジト目でみられて何となく謝る。
「ああ、そうだ。魔法で思い出したが、その許可のメダルは君の魔法に制限を掛けている。校内では護身の魔法しか使えない。攻撃魔法は私の許可が必要だ。だから先ほどのような状況でも防御しかできない」
「そうなんですね。元々攻撃はするつもりありませんでしたし、これからも特に問題ありません」
「さて、今日はもう授業に出なくていいので、君の破壊した魔法陣の修復作業でも始めるか」
エルランドはそういうと少し意地悪に笑った。
「わかりました。名誉挽回と行きましょう!」
私も負けじとニヤリと笑って見せる。
その後エルランドを手伝い気付けば夜になっていた。
「」は普通の会話(パールは常に念話ですが…細かい事は省きます!笑)。『』は念話で書き分けています。