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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
一章:技のゴリラ幼少期
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嵐の前の淑女欠落

 ……眩しぃなもう。これじゃあおちおち昼寝も出来や……いや今はガチ睡眠終えた後じゃねーか。要するに朝だ朝だーよってこと。


「んぅ……んー!」


 よく寝た……いやさ、お布団が良いやつだからつい二度寝したくなっちゃうのよね。つまり私はもうちょい前に一度起きているのである! で、起こしてくれた子は?


「うみゅう……」

「デジャブだなぁ……っていうかこの子はいつまで私の部屋で寝るんだろう」


 シュレクが居ないから私んとこに来てると思ってたんですけど、だとしたら引きずり過ぎだと思う。何? 私の部屋のベッドそんなに好き? ベッド変えよか?


「アメリア―、もう寝かせっぱなしにはできないわよー、起きて―?」

「みぃ……おねえ、さま?」

「まあ、あなたが起こしてくれた時に起きなかった私も悪いけど、そろそろ、ね?」

「ふあい……うぅ、ん。あふ」


 はーい、髪が乱れてきてるから整えにいこーね―……うみゅ?


「珍しいと言うか……初めてよね、私の部屋に来たの」

「えぇ、まぁ……おはようございます、えっと。アメリア姉さまは?」

「そろそろ起きそうよ? あー……なら連れて行ってあげて、アレウス」

「分かりました。メタリア……さん」


 む、今回はさん呼びか……顔を合わせてくれるようにはなったし、会話してくれる様にもなった。とはいえ、そう簡単には姉さん呼びはしてくれない。四回に一回くらいだろうか。まぁ、糸電話がいらなくなっただけ良しとするべきなんだろう。


「う、あれうす?」

「アメリア姉さま、おはようございます。さ、あさのしたくにいきましょう」

「……ん」


 くそ、朝寝ぼけてるアメリア可愛いなチクショウ! 目ボケ眼で、何時もしゃっきりしてる顔がポケポケしてると、こう……温かいわ! 心が!


「……その、メタリアさんも、はやくしたくをしたほうがよいかと。朝ごはんは、あたたかいうちに食べたほうがよいとおもいますので」

「んー、そうね。ちょっとのんびりしたら行くわ。ありがとう」

「いいえ……では、しょくどうで……えっと、おまちしてます」


 ほいほーい……全く、ここに来たばかりの頃とは対応が全然変わったよ。まあ、完全改善とは言えない訳だけど。でもベスティの言ってた印象に近づきつつあるというか。


「いやぁ、やり遂げましたわ。ほんと。ドゥブルさんに頼まれた時はいよいよ悪役令嬢メタリアちゃんの快進撃も終わり、いよいよもって私はこの先断罪ルートを歩まねばならぬと思っていたのだけど……いやーなんとかなるもんですなぁ!」


 殆ど勢い任せですけどねぇ! もっかいやってって言われたら吐き気と共に臓物を吐き散らして果てますわ! ぬハハハハハ!


「とか言ってはみたんですけど……やれる事は全部やった、でも結局のところ完全に仲良くなれたっていう訳でもなし……その壁を完全に撃ち砕けはしなかったようで」


 お姉さま呼びは兎も角、やっぱりアメリアと比べてどうにも壁を感じる気がする。アメリアは同室だとしたら、拙者は家賃だけしか評価できないレベルの安物アパートの紙レベルの厚さの壁で仕切られた隣部屋くらいはある。


「実質存在しないようなもんだけど。多分声とかダダ漏れだけどさ……」


 ホント、大学への愚痴を爆発させてたら隣の大学生をその呪詛でダウンさせていたとか誰が想像しますか。びっくりしたよ、『怨霊の如き……いや、あれは怨霊の嘆きだ……間違いないよ』とか魘されながら隣室から運び出されてくるんだもんなぁ……


「いや、それは置いておこう……驚天動地だったけど」


 まぁアメリアと違って心の壁(極薄)が存在するのは気になるよね。と言っても今以上に介入してまーた嫌われるのもどうなんだろうって思うわ。


「そうなんだよねぇ……温い温度の関係って凄い離れ難いっていうか……」


 物語で主人公とヒロインが中々くっつかない理由がわかった気がするわ。ホント、丁度良い距離感って、冬場のコタツ的な危うい魅力があるよね……せっかく懐いてくれたのに下手打って壊れるとかシャレにならない。泣ける。


「……よし、このままでいよう。もう良いや、はっはっはっ」


 それじゃダメだと思うけど、でも普通の小娘にやれんのはここが限界ですねー! ドゥブルさんは長いスパンでなんとかしてあげてくれ的なニュアンスで言ってたし!


「こっからノンビリ、微温湯に浸かりつつ馴れ合っていきゃ良いでしょ!」


 という事で、私はもう何も出来んで。


「よーし朝の準備に行くぞー! って髪ボッサボサやん……あかん、淑女失格じゃあ」


 寝癖にしてもちょっとさ。こんな、こんな徹夜明けのブン屋みたいな、女性的な魅力なんざ彼方に投げ捨てたような姿! 鏡で見たかないわ……


「っていうか、私が入ってるせいか優雅な大公令嬢としてのメタリアが薄れてる気がするんだけど」


 乙女ゲーの主人公の目覚めって、もうちょい優雅よね。髪が優雅に布団に流れててみたいな事じゃないの? 流水がごとく長髪がベッドに流れてるんじゃないの?

「……うーん。どっかで私自身、ちょっとメタリアに寄せる必要があるのかねぇ」


 どうやって寄せようかなぁ。あ、いやそれは爺に……猫被んのアウトなだけだっけ。なら心からお淑やかに生きようとするのはオッケーか。ま、それはおいおい。今は髪を整えないとあかんしなぁ。




「おはようございます、お父様、お母様方」

「ああ、おはよう。メタリア。アメリアたちも、もう席についてるから、座りなさい」


 ウィーッス。あ、アメリア隣ごめんねー。え? 全然大丈夫、むしろ隣がいい? そんなこと言って、ホントかわいいね君。


「うわっ美味しそう……今日のパンは焼き目が違うわねぇ……ほら、アレウスも」

「あ、その。ありがとう、ございます」


 うみゅ。順調に丸くなっていっているようでお姉ちゃん何より。まだ姉とはあんまり言ってもらってないけど!


「ささ、冷めないうちに食べちゃいましょう」

「ですね! ささ、さっそくたべましょう!」


 よーし。いっただっきまー……


「あ、そうだ、メタリア。食事の前に、少し聞いてくれ」

「あが?」

「諸々あって、君の誕生日を祝うのが遅れてしまっていたからね……今度、大々的に君の誕生日を祝うパーティを開くつもりなんだ。楽しみに待っていてほしい」


 あ、そうすか……え? あ、そんなんありましたねぇ。誕生パーティかぁ……特別楽しみにするような年、でもありでもないけど。最近色々トラブルとか有り過ぎだし。そういうイベントも良いね。



乙女漫画みたいな優雅な目覚めなんてありえませんよ。いやマジで。

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