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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
一章:技のゴリラ幼少期
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幕間:常識的(?)な弟から見たお嬢様 その2


「……メタリアさん、どこにむかうつもりなんだろう」


 こんな珍妙な品、何処から仕入れたんだろう、メタリアさん……ある意味凄いとは思うけど、会話する為の努力としては……どうなんだろう。


「からまわり、してますわよね。お姉さまのどりょく。そういうところがあるのよ」

「え」


 アメリア姉さん、結構ズバッと言うんだな……僕もそこまではっきり言う事は……うん。多分出来ないと思う。というか、こっそり陰から見張っていたのが、どうしてこんな事になったんだろうか。


「たぶん、あなたがお姉さまのまえにあまりかおを出さないのを気になさっていたのだとおもうのよ。お姉さま、そういうところは気にする人だから」

「そう、なんですか……それは、その」


 なんだろう。案外繊細な人なんだろうか、メタリアさんは。


「お姉さまは、べつにこわい人じゃないの……ひどい人でもないわ。さいしょは、ちょっと、その、ざんねんだったと思うけど、ね」


 うん。アメリア姉さんが苦笑いするくらいだ。繊細、という事はないらしい。


「でも、アレウスはどこかお姉さまに()()()()()()をみる目をむけているように見える」

「っ、そ、それは……いいえ、そんな、ことは」

「それは、どうして? わたしたち、まだいっしょにくらしはじめてみじかいから、言ってくれないと分からないの」


 ……何も言えない。心当たりはあったからだ。知らないうちに、僕は……あいつらとメタリアさんを、重ねてみていたのだろう。パーティのあの時、僕に絡んできた、アイツら。


「……」

「なんて。きゅうにそんなこといわれたって、言えないわよね」

「……はい、ごめんなさい」


 でもそれは僕の問題で、アメリア姉さんにいう必要の無いことだ。メタリアさんをそういう目で見てしまった居た事は、確かに問題かもしれないが……


「まあ、でもいいのそれは。しょうじき、おしえてもらわなくても、おしえてもらったとしても、とくに気にしなかったわ」

「え?」

「だって、お姉さまがほんきになったんだもの。そんなあなたのつごうなんで気にせずにお姉さまはどんどんきょりをつめてくるわ」


 え……あ、あの。それはいったいどういう事なんでしょう。


「お姉さまはね、ほんきとなったらすごいの。それを、おぼえておきなさいね」

「は、はぁ」


 凄いんですか……えっと、どんな風に凄いかはさっぱりだけれど、口に出して言う位だからとっても凄いんだろう。僕も、少し覚悟を決め方が良いのかもしれない。




「では、ここの山の名前を、ですね……えっと、この、三つの中から……」

『それは、えっと……三十ページにヒントが載ってるわ、探して見なさい』

「……はぁ」


 こういう時まで来るなんて聞いてない。っていうか、凄い。本当に凄い。ご飯の時までなんか布袋を被って、そこから伸びたこの『イトデンワ』でどんどん会話してくる。圧力が凄い。というか、あの、大公妃様……ああいや、ルシエラお母様に怒られてましたけど。


「あ、ホントだ……えーとじゃあ、上から三番目、で」

「正解……なんですけど、えっと……すぅ……メタリアお嬢様!」

「なあに!」

「その! 直接お話しされないのですか!」


 それは僕も思う。っていうか、もうメタリアさん、家庭教師さんと二人とも大声で扉越しに会話しちゃってるし。イトデンワ居るかどうか微妙ですよね。


「顔みせちゃうと! この子が微妙な表情になるからね!」

「根本的に! 何かが! 間違っている気がいたします!」


 僕もとてもそう思います。というかもう最近は見張りとかする暇もなくてこれで会話する事の方が多いです。でも、アメリア姉さまが手渡してくるし、こんなもの用意させてしまったというのは申し訳ないので……断り切れないのが悔しいです。


「はぁ……お嬢様、あれで素直な好意を元にやってるのが質が悪いと申しますか」

「な! あ! に!?」

「なんでもございませんよー!」


 二人共別に怒ってるわけではないが、こうして大声で会話を続けられるとビクッとしてしまう……どうも、思い出してしまうから。




『おれたちより下なくせによ!』

『さからうんじゃねーぞ! さからったら、とうさまにいいつけてもんくいってもらうからなぁ! ほら! 分かりましたって言えよ!』

『なんなんだよ、そのめ! こっちみるんじゃねぇ! 』




「っ!」

『どしたー、なんか虫でも踏んだかー?』

「……いいえ、なんでもないです。っていうかそんなんでビックリしませんよ」


 なんだろう、このイトデンワといい、心配の仕方といい、好意の向け方といい、やっぱりズレてるなぁ、この人。


『嫌なことがあったら言いなー? 美味しいお菓子用意しておくからさ』

「……いや、いいですよ。というか、モノで釣るつもりですか」


 まぁ、美味しいお菓子に興味が無いと言えばウソだけど……けど、自分はまだ貴女への警戒を解いたわけじゃないので、いただきませんよ。


『まぁそう言わずに。アメリアと一緒に食べればいいじゃない。お菓子に罪は無いんだしさぁ、ね? そうだ、お母様と食べるのはどうかしら、もっと打ち解けるチャンスかもしれないわよ?』

「……」


 そ、それは……確かに、誰か他の人と美味しいモノを食べるのは、とてもいいことだと思うんだけど……うぅ。


『……警戒されてるわね。しょうがないけど。分かった、今日はここまでにしとく。後お菓子は置いておくから、好きに食べてねー』

「え、あの、いやお菓子は」

『じゃあね。また後で。あ、残ったらアメリアに言いなさい。残りは私が食べるから』


 ……行ってしまったらしい。アメリア姉さまがもう片方を持って行ってしまった。部屋には、お菓子があるのだろうか。


「……残すのは良くないから、ちゃんと食べよう……お礼も、ちゃんと、言えたら、言おう」


勉強しながらの糸電話はあまりにもシュールだと自分でも思います。

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