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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
一章:技のゴリラ幼少期
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ミラクルストリングレディ

 ……方策を考えよう。ベスティと約束したのだ。ちゃんと守りたい。そう思っている。


「け、けどそう思ってアタックしようとしたけど……無理だったんだよなぁ」


 帰って来て早速話しかけようとしたわけなんだが……まぁ逃げる。上手いこと逃げる。どうやら私がベスティの家に行っている間に家の構造を把握していたようだ。ふ、賢いじゃないか……まさか自分の家で競り負けるとは。


「つーかさ、キッチンの中の二つの勝手口なんて、私も初めて知ったぞほんと」


追いかけてキッチンに入るのを確認したのよ。で勝手口一個押さえたのよ。いよいよ追い詰めたかと思ったよ。したらいつの間にか消えてんだもんね。小窓みたいな勝手口とかよく見つけたなそんなもん。


「……分かっていた事だったとはいえ、最大の関門は接触か」


 まずはそっからどうにかせにゃならん……ベスティ宅で様々な情報をゲットできた……だが現実逃避していた。そもそも根本的に解決をしろっていう話なんだよな。


「では根本的な解決に移るとしよう……」

「お嬢様、そろそろ発言しても構わないでしょうか?」

「あ、はいすいません、どうぞ。知恵をがっつり貸してもらえると助かるわ」


 という事で爺とロイくんにきていただいて、お知恵をお貸し願っております。私だけじゃ絶対どうしようもないしね。お助け。


「……アメリアお嬢様は?」

「ぶっちゃけアレウスとの事に巻き込みたくないっす。あの子は弟と純粋に仲良くして欲しいわけよ。私みたいに奇策を練って絆を繋ぐとかゴミクズだから、あの子宝石、私ちり紙、分かる?」

「斬新な比喩方法ですなぁ……お嬢様」


 そんな悲しい目を向けないで欲しいじゃない……いや私だって自分を宝玉だって言えるくらいの傲慢さがあればよかったけどさ。そんなもん持ってたら悪役令嬢確定事項になるのよ。笑えませんわ。


「まぁ分かりました……では状況の整理に入りましょうか」

「はーい、じゃあこっから進行は爺に任せるわね。あ、ロイは書記をお願いできない?」

「あれ? お嬢様は?」


 私? だって教えを請う立場ですし……そりゃ生徒ですよ。


「ロイ、手元のスクロールにしっかりと頼むぞ」

「は、はぁ……立ち位置が逆転している気がするのですが、それは良いのでしょうか」


 いいんだよ。ぶっちゃけ私に司会進行とか不可能だし。


「という事でお嬢様、今回の問題点ですが……はっきりと申しますと、顔を見られた時点で逃げ出されています。拒否の具合は相当かと」

「えぇ……そんなに? 私視点だとまだマシだと思ってたけど……」


 ハエとか蛾とか、それレベルだと思ってたら目撃したらアウトのGレベルかいな。そりゃ痴漢は社会のゴミみたいな目を向けられるけどさ。そこまで?


「正直、もう顔を合わせての会話は絶望的ですし、他の会話方法を考えるしかないかと」

「顔を合わせての会話が不可能って、その状態でどうやって会話をしろというんですかいな爺。私はおとぎ話の魔法使いとちゃうんですよ」


 顔会わせず会話するって何? どうやれっていうんだ。絶望的や。


「まぁ私もそう思いますが、しかしながら、お嬢様はかの少年と打ち解けようとしているのでしょう?」

「……そ、そりゃあまぁっていうかそれは話してないんだけど、誰から……いや、一人しかいないやんか」

「御察しの通り、ドゥブルからですな。あの優しい少女を支えて上げて欲しいと」


 やっぱりな! いやぁドゥブルさんその気遣いはありがたいけど、マクレス、不意打ち気味なのはほんとやめて。マクレスがそれやるとエライ黒く見えるんだよ。つーかいつ連絡とったのか。


「まぁ、分かったわ。現状が相当厳しいってことは、ある程度ね」

「私の様にある程度経験を積んだ者なら、そうした相手とも段取りを踏めば顔を合わせる事はそこまで難しいという訳ではないのですが」

「私じゃ厳しいって事か……そりゃ若造ですもんねぇ、無理っすわ」


 むしろ爺はそれが出来るんか。人間出来すぎちゃいまっか。人生経験凄いですね。


「と、なれば。お嬢様に必要なのは如何にして接触するか、では無く、既存の会話方法を覆すような奇策ですな」

「なーんで義弟と会話する為にそんな壮大な一手を打たねばならないのか」


 無理難題吹っ掛けとけば何とかなると思ってんちゃうぞ。私はそんな天才児じゃねーぞ。


「……内容を纏めていてなんですが、不可能に近いのでは?」

「まぁ、それはそうですな。会話というのは顔と顔を合わせてする物ですので」

「顔を合わせないで会話するなんざ、どんな妖術……」


 あ、いや、この世界の常識では、か。前世じゃそんな気まずさを飛び越えて相手と会話出来るチートツールがあったよね。リンゴとか銀河とか機械人形とか。


「……いやアレがあったらもう思考停止でどうにかできるけど」


 乙女ゲー世界で薄い板無双? ひでぇタイトルだ。どんな夢女子だって唾吐き出して帰るレベルっすわ……大体アレがあっても一台じゃ意味無いでござるよ御老中。


「あ、でも顔を合わせ無ければ良いのですよね」

「うむ。そこが最大のネックだと思われるからな」

「お互いに袋でもかぶって会話してみる、とか。声しか聞こえないので、絨毯でも引いてある部屋なら近くに居ても気づかれませんよ」


 いやどうなんだろそれは。結構頓智効いてる気はするけど……見た目とか考えた?


「……傍から見れば犯罪者同士の密会だな、ロイ」

「…………全くもってそうですね」


 情景が最悪レベルだ。部屋が暗かったりしたらいよいよそれである。そんなん見たかないやい……いや、いや、ちょっと待て。


「なんだ……なんか、過ったような」

「何か思いつきましたかな?」

「あ、いや、こう……頭に思考が……うーん」


 袋……独立……うー、あと、あとちょっとなんだけど……


「お姉さま、いらっしゃいますか?」

「!」


 やっべアメリアだ爺ロイ諸々の書類とか隠せ隠せ頼むよ私まだアメリアにそんな精神的錘負わせたく無いから頑張ってホント頑張れ頑張れぇ!


「終わった?」

「(グッ)」


 良し。


「はーい、ちょっと待ってねー」


 大丈夫だな……ではお出迎え!


「いらっしゃい、アメリア」

「しつれいします……あら、マクレスさんとロイさんも。なにかそうだんごとですか?」

「まぁ、そんな所。アメリアはどうしたの?」

「お姉さま、このまえししゅうのならいごとのとき、すこしくせんしてらしたから、もしよろしければ、わたしといっしょにれんしゅうしませんか、って、お誘いです!」


 ヴッ(いじらしい)。なに、この子天使か何か……? ダメよそんなことしちゃ、変な男は勘違いしちゃうからねーうんところで刺繍の糸はどこかしらー……ん?


「刺繍……うん、いいわね。練習するわ。するけど、ちょっと待ってね?」

「?」


 小首傾げるの可愛いけど、そうじゃない。なんだ、今、天啓を……あっ!


「それだぁああああああああっ!」

「きゃっ」


 糸で繋がる絆! まさにこれだ、我、秘策を得たり!

なお転生者的革命チート、ではありません。いつも通り。

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