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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
一章:技のゴリラ幼少期
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幕間:少女と少女の出会いの物語 二つ

「……えっと」

「……きれい」

「え、あ、きれい。そ、それはどうもありがとうございます、おほめいただいて?」


 思わず呆然とつぶやくメタリア。若干猫かぶりを忘れそうになって、しかし途中からギリギリで再開できたのは、いっそ呆然としていたからこそ、と言うべきらしい。


「その、あなた、は? どうして、ここに?」

「え? あ、わたし。その、ベスティア―ゼ。たいこうさまのパーティによばれて」

「あ、そうなの、ここのパーティの」


 とりあえず普通の招待客と理解できてただただほっとしたメタリアだったが……違うと頭を振った。そもそも、どうしてこの子はこんな所に来たのだろうかと。親と逸れたのか、だとすれば連れて戻らなくてはマズいのではないかと。


「(よく見りゃエライかわいい子。お母さんがこんな可愛い子を野放しに……いや場合によってはするか)」


 しかし直後に『人って色々あるしネ』という結論になって、やっぱりやめた。万が一そういう家庭で育った少女だった場合が問題。連れていって目の前でそんなひどい目に合ったら罪悪感うなぎ上りになること請け合いだった。


「そ、そう……あ、そういえば、あなただけになまえをいわせてしまって。わたしはメタリア。よろしくね、ベスティアーゼ」

「メタリア……うん、おぼえた。よろしくね、メタリア……あ、そうだ」

「うん? なに?」

「ここ、どこかわかる? メタリア……」

「(……あぁ、なるほど。元々からパーティ会場に戻る気はゼロとはいえ、流石にこれは考えたほうが宜しいかもしれないわねぇ……)」


 迷子が合流して、二人組の迷子になった瞬間だった。




「で、そこからずーっとよ!? ホントにつかれたの……わたし、こんなパーティはじめてで……」

「メタリアも? わたしもパーティはじめて! でも、わたしはぜんぜんつかれたりしなかったのよ、すごいでしょう!」

「でもげんきすぎて、おかあさまとはぐれたんでしょ? うっかりさんね」

「う……」


 ちょっと図星を指摘され、うつむくベスティアーゼ。しばらく話して、大分打ち解けだ同年代と思われる少女を、メタリアはよしよしと撫でて慰め……そして、ため息を一つ。


「(……いつまでも戻らないっていうのは出来ないし。しかしながら私もこの子も迷子なわけだしさ、どうしたもんかねぇ)」


 会話を始めて少しした時から危惧していた事だった。このまま迷子になったまま自分とベスティアーゼが見つからなければ、間違いなくパーティを打ち切って探索が始まる。自分の母親主催のパーティだ。母親の面目は叩き潰される。


「……私のワガママで、お母様がバカにされるのは……ダメだろ」

「うぅ……なにかいった?」

「いいえ、なにも。もう、きげんなおして。ごめんなさいってば」


 という事で。ここでのんびりしていている訳にはいかない。この少女を連れて、戻らねばならないのだ。その為に、今自分が不機嫌にしてしまった少女を何とかしなければならない。メタリアは、慣れぬ思考を何とか回し始めた。


「ねぇベスティアーゼ。その、しつれいなことをいったのは、あやまるわ。ほんとうにごめんなさい……その、えっと、だから……」


 だが駄目である。小さい子の機嫌の取り方などメタリアは全く知らない。謝って謝り倒したところで、恐らく意味はないだろうとは思っていたが、そこまでである。


「うぬ、うぬぬぬぬぬぬぬ……むしゅー……」


 そして頭を抱え、謎の動きをしだす始末である。ヘドバンに近いが、ぎくしゃくしていてロボットダンスっぽい。油差そうか? とか言われそうな勢いである。


「プシー……しゅぽー……ギギギギ……ポポポポ……」

「……くす」


 だが、それが良かった。


「へ?」

「くすくす。なにそれ、おっかしい! メタリア、へんなうごきね! ぎこぎこしてる!」

「あえ、あ、その……おもしろい、かしら?」

「とっても!」


 怪我の功名と言うべきか。悩みを暴走させた挙句に無意識下の苦悩を表した奇妙な踊りは、ベスティアーゼの心を捕えた。意外にも、と言う感想しかメタリアには浮かばなかったが、結果オーライ。


「(こんなんがウケるって、子供って分からない……私だったら『ウワキモ』で終わりそうなもんだけどなぁー……まぁ、いいや、機嫌戻ったし)」


 いや良かったと内心思いつつも、取り合ず当初の目的を果たすことにした。


「そ、そう。良かったわ……でも、こうしてたのしんでばかりもいられないわ。ベスティアーゼ、わたしたち、そろそろもどらないと」

「え、どこへ?」

「パーティへ、よ。きっと、みんなしんぱいしてるわ」


 メタリアの言葉に、ハッとした様子のベスティアーゼは、序で申し訳なさそうな顔になって、そうね、と呟いた。


「おかあさま、しんぱいなされてるわ、きっと」

「そうよ。ふたりともまいごだけれど、ふたりならもしかしたらなんとかなるかもしれないわ。(まあ根拠なんざないですけど)」


 とはいえ、行動したほうがしないよりは万倍マシ。兎も角ベスティアーゼを連れ、帰り道を探さなくてはならないのだが……そこでメタリアは、ある事に気が付いた。


「……ベスティアーゼ、どうしたの、おかおがまっさおよ?」

「あ、いえ、ちがうの! いくのがいやなんじゃないの。けど、けど……」


 その時だった。ふと、部屋に近づく足音がメタリアの耳に入った。助けか? これは天の助けかとメタリアは思い、扉に向かって歩き出した……が。


「あ、ダメ! メタリア、いっちゃダメよ!」

「えぇ? でも、たすけかもしれないのよ? かくにんしないと」

「おとなのひとのあしおとじゃない! ちいさいこよ! たぶん、あのこたち!」


 そう言った直後、バンと扉が開いた。そこから入ってきたのは三つの影。そこに丁度良く、月明りの光が当たり、三人のドレスを着た少女達が闇に浮かび上がった。


「ふふ、ローバルト。ちゃんとここにいたのね……って、だれ?」

「ほんと、つれてきたのはそこのこだけだったわよね!」

「エーナ、あんたがかってにべつのこを!? かってなことしちゃだめじゃない!」


 自分を見た反応、その表情、そして連れてきたという言葉。ヒントは多い。頭脳が大人のメタリアが状況を察するのはそこまで難しくは無かった。


「……なるほど、なんとなくからくりがよめてきたわ」


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