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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
一章:技のゴリラ幼少期
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幕間:少女と少女の出会いの物語 一つ

 メタリア・ホルク・オースデルク。この世界においての彼女の友達というのは意外に少ない。外面を大分偽っていた幼少期など、近付く者は多かったと思うかもしれない。だがそれには、実は理由が存在する。


「(っだぁぁぁぁぁ……ちかれたわー。とはいえ、せっかくのお母様の気遣いを無駄にする訳にも……どーするかねこれは)」


 メタリア、当時は四歳を迎えたばかり。この先の悪役令嬢人生に、いまだ怯えていた年でもある。両親との仲を良好に保ってせめてもの対策にと、悪戦苦闘していた。


「……そーっと」


 その一端で、お友達を作ろうと、同年代の少女たちの社交界デビューに参加した彼女。というより誕生パーティにかこつけたご紹介パーティでもあるので、参加は確定していたのだが。


「お母さまは……貴族の奥様方と歓談中。私には特に意識を向けていない。休むならいまかしらねぇ……」


 こっそりとパーティ用の広間から抜け出し、館内の探索をしだした。ここは勝手知ったる我が家ではなく、来賓歓迎用の別館であり、詳しいことを調べなければ隠れることすらできなかった。


「……社交界デビュー、か。いやー、やっぱりキツイかなぁ」


 そして……まだ諸々の騒動に巻き込まれて吹っ切れる前、彼女は未だ貴族の礼儀やら何やらを手探りで行っていた頃で、不器用ながら『貴族』を意識していた頃だった。

 しかし、その生活と言うのはどうにも疲れも何も貯まる。


「って事で、知らない場所で手を抜くに限るってわけだ……ニヒヒ」


 頻繁、という訳ではないが、こうして母親の目を逃れ、自由に過ごす……一種の歪みが出ていた頃合い。それは、マクレスがかつて危惧していた事。彼にいろいろ漏らして最悪の事態は避けていたとはいえ、その影響は取り去りきれるものではなかったのだ。


「……しかし、広いねここも。本館ほどじゃないにしても、やっぱり来賓を歓迎するために作られた場所ってだけはあるのか……で、なんだが」


 その影響から、彼女はこの日、ある問題を引き起こしてしまった。


「……ここ、どこなんだろ」


 人曰く、この状態を、迷子という。




「落ち着け……おちけつするんだ私……まず、冷静に状況を確認だ」


 右を見た。どこまでも伸びる廊下と部屋。左。同上。全く場所が分からない。そして真っ暗。夜なのだから当然と言えば当然。


「やっべぇぞコレは……じ、自分の領内で迷子とかいよいよもって悪役令嬢の陥るパティーンじゃねーかよ……マズイ、良くない、悪い」


 自らの失態に、思わず、頭を掻きむしった。


「ちくしょう! こんなんだったら爺に頼んで着いてきてもらうべきだったかなぁ! そうしてもらえりゃ、物置で埃かぶってるソファとか貸してもらえたかもしれんのに!」


 一応大公家の私物になるので、貸すじゃなくて使わせてもらう、が正しい。のだが、幼子がたった一人という危機的状況にパニックになり、彼女の前世の一人暮らし生活での素が出てきてしまっていた。それ程に余裕がなくなっていたのである。


「あー……普段使ってないからほかの部屋にはカギ掛かりまくってるだろうし。ホントどうしたもんかなぁ。あ、いやワンチャンここの管理を任されてる人の部屋なら……」


 そもそも今、普段使っていない屋敷を使用しているのだから、逆に管理を任されている者の部屋は施錠されていてもしかりなのだが、それを全く考えられていない。いよいよもって余裕はなくなっている。


「よ、よし。そうと決まれば……あ、そもそも私その場所知らなかった……」


 そしてもっと根本的なところで問題のある案だったことにも気づかない。いよいよもって思考回路がショートしている気がする。ダメである。


「うぬ、ぬぬぬぬぬぬ……ど、どないするべきか」


 そこまでなってもパーティ会場には戻らないという強い意志。どうにも、自分は根本から貴族に向いていないと、このころの彼女は思っていたのだ。


「……まぁた、歩き回るしかない、か。ったく」


仕方なし、そうつぶやき、メタリアはまた歩き始める事しか出来なかった。目的地が特に有る訳ではない。気ままな散策という名の徘徊である。


 彼女がパーティ会場に戻らない、というのは、しかし気質と疲れ、それだけが理由だけだったわけではない。


「……貴族っぽく、か」


 マクレスには素の自分で良いとは言われたメタリアだが、しかし流石にそれをそのまま実行する気には、まだなれていない頃。吹っ切るための、何か大きな事件が必要であったが、この頃にはそんな大事件は起きなかった。


「やっぱり、多少なりともそういう、化けの皮ってのは必要なんじゃないのかな、爺」


 故に、自分の素と、貴族の令嬢。彼女はその二つの間で揺れていた。そんな不安定な状態で人前に出るのは、さすがに憚られた。というのが、最も大きな原因。


「どっちに寄るべきかな……」


 目の前の左右に分かれる廊下を見て、そんな風につぶやく。何方にも寄りたくない、と適当に考えていた……その時だった。


「……?」


 何かが聞こえた気がした。

 微か。本当に。隙間風の音が遠くから聞こえているのか? と思ったがしかし。


「……それにしては、どうも。声っぽい気がしないでもない」


 泣き声。その音が、彼女にはそう聞こえていたのだ。


「うーむ、まあ行く当てもないし……肝試しでもしてみる?」


 ……お気づきになられている方もいるだろうが、この少女、基本的に考え無しで能天気な現代系若者タイプである。




 ――……ぇ……ぅぇ……ぁん……


「……あっ、これ聞き間違いかと思ってたら違うタイプですね、そして戻れない奴ですかまさかの乙女ゲーで裏ファンタジーですか」


 そしてヤバさに気が付き、今更震えだす。自分がとことんダメな奴だと、思わず頭を抱えたくなっていた。若干涙目で、ちょっとマクレスに助けを求めたくなっていた。否、大分助けを求めたくなっていた。


「こ、この先の、部屋か?」


 ――……ぁぁん……こぉ……けてぇ……


「いや隣の扉だぁ!?」


 ビビりあがって思わず扉に突撃した。恐怖と勢いと先程までの情緒不安定が限界突破ミックスされた結果の奇行だった。


「いやぁああああああ!?」

「おぎゃあああああああ!?」


 直後、部屋から響いた悲鳴に、本当に幽霊か何かが扉の向こうにいるものと思っていたメタリアも絶叫した。と言うかこんな奇行されたら、本物の幽霊でも悲鳴を上げそうなものだった。


「いやぁああああああああああ……あれ?」

「悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散……ほへ?」


 とはいえ、そんなファンタジー的なことはなく。

 メタリアは、その中に居た薄いブロンドの髪の少女と、運命……かどうかはよくわからない邂逅をしたのである。



という事で、ここらがちょうど良いかとメタリアベスティアーゼの出会いを三回くらいに分けて投下します。

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