神様仏様邪神様、我が身を救いたまえ
「メタリィ? ほんとうにだいじょうぶなの? かお、まだわるいようにみえるけど」
「あーうんぜんぜんへーきよ。だーいじょうぶだからねぇ」
「ベスティアーゼ様! だまされてはいけませんよ! お姉さまはこういうときすぐにむりをなさるんですから! さ、まだ休んでてください!」
ホントに吐き気は大丈夫なのよ。うん。っていうか、吐き気なんざどうでもいいから今は色々と冷静に考えないとまずいのよアメリア……だからちょっと大人しくしててねー
「あ、お姉さま! あたま! あたまを、なでなで、くらいで、わたしが……ふにゅーおねーさまー、おねーさまー」
「あ、あっというまにねこみたいに……!」
ふふ、私もここまで劇的な効果が出るとは思ってなかったけど。でもちっちゃい頃ってお姉ちゃんとかに頭撫でられるの好きだったりしたから、まあやってみた。
「にしてもここまで溶けるとはねぇ……そんなに慕ってくれて、わたしゃ嬉しいよ」
「わたしゃ、なんて、ふふ。おばあさんみたいね、メタリィ」
「よして、そんな年取ってないわ」
……とかいう現実逃避は止めようか。さあ私の前にドカンとそそり立つ問題の壁を考えるで御座候。まぁ、要するに虐めを受けた多感な幼少期の少年のメンタルケアですわ。
「う、受けるって言っちゃったけどさ……どーすんの実際!」
ドゥブルさん『くれぐれもお願いします』とか言って行っちゃったし……今更無理ですとか絶対無理やん! ち、畜生! NOとはいえぬ日本人の血が憎い!
「いや、やることは何となく分かってる……多分ドゥブルさんが期待してるのは、年の近い私と接する中で少しずつ悩みを打ち明けてもらえればとか……そう言うことだと思うけど思うけどさぁ……無理やんそんなんさぁ!」
私そんな繊細な事出来ないよ! ましては相手は多感な幼少期の少年やぞ! 万が一のことがあったら一生恨まれるんやぞ! 関係者各員とかにも漏れなくなぁ!
「重い……責任が、重い……それが分かっていたと言うのに」
まあ落ち着けよ私、何とかなるさ……とか言うのも今回は通じないだろうよ! ミスった場合が致命的すぎるんだよ! それを、考えると、冷静に、なれない!
「……や、やれる事を考えねばならぬ。ただダメだダメだ言ってるだけじゃ意味がないんだよ私、引き受けちまった以上、何かをやらにゃいかんのだ!」
そうしないと悲しみを背負う可能性があるからなぁ!
「……まず出来ることは……話……を聞けるかどうか微妙じゃないそもそも」
私と嫌がらせした相手を重ねてるかもしれんのだろ? そんなやつと話したがるかな普通……いやねーわ、絶対逃げるやろ。
「し、しまった! 私この仕事に根本的に向いとらんじゃないか!」
もっとよく考えておけよこのバカァ! そも達成できないクエストを受注するんじゃあないよ! 私の話術スキルとかそう言う問題じゃなくて前提条件すら達成できてないじゃない!
「ど、どうすれば……ぐぬぬう」
……思い返せば、私が個人的に仲良くなろうと熱意を空回りさせた結果が今の不仲何だよね、どの口で『私が何とかします』などとほざいたのやら……
「……い、いや。ここで諦めるのは違うだろ私」
そりゃあ、クソみたいに面倒そうだなと思うし、正直私自身もトラウマ持ってる相手と付き合うってのは精神がボロボロになりそうだけどさ。
「だが、日記の分は兎も角、私も知らなかったとはいえど、彼のトラウマ刺激してたかもしれんのだ。下手すると死亡フラグに……ってアレ?」
よく考えなくても、もしかして彼がああ言うスチルを発動させたのって、まさかとは思いますがこの一件が原因だったりいたします? え、え、ええええ?
「……ぎゃああああああアアァァァァァッ!?」
音声はイメージです。枕に顔面を押し付けて声は押さえました。いやそうじゃないんだよ、やった、やっちまったぞ私。
「遂に、遂に死亡フラグを踏んづけちまったぁああああ」
今まで、今までなんだかんだ言って、致命的と呼べる死亡フラグを踏んだことはなかったよ。突発的なのもあったけど、何とか凌いできたんだ。
「だ、だが今回は、今回はぁぁぁぁぁあチクショォォォォオ」
踏んだ。もう言い訳できないくらいがっつり踏んづけて踏みにじった。こ、これをこのままにしといたら間違いなくあの世行きウーマンじゃよ、ほほ。
「……ほほ、じゃねぇよそんなの嫌ぁぁぁぁあああ!」
あ、頭の中にイメージが……あの、アレウスくんそのですね、その手に持った金属ヤスリは何事なんですかね。え、それで摩り下ろすの? 何を? 何をですかアレウスさん!
「アッアッアッアッアッアァッアァッ」
あの、目がぐるぐるしてらっしゃいますよ? あとすみません、その、もう片方には何をお持ちで? あ、それは伝説のメタリア殺しのナイフですな。業の深いアレウスくんファンが二次創作で御用達にするやーつですな。あ、案外鋭そうですねそれ。
「ヒギィ、ヒギギ、オヒィ、アヘ、オボボボボボボ」
あっ、やめて、お腹にロックオンしないで、あの、中身出ちゃうから、真っ赤になっちゃうからお部屋とか色々ホントやめてやめろころさないではああああああああ!
「あーあーあーあーあーあー」
「お姉さま、しつれいします、ぐあい、だいじょうぶでそうでないぃぃ!?」
ふんぐ い むぐ なふ く るふ る いえ う =なぐ ふた ん!
「お姉さまきんきゅうにつきしつれいいたします……えっと、このあたりに当てみ!」
「ふっ!?」
はっ、私は何を……あまりの絶望感に、どっかしらの邪神に助けを求めて居たような気がしないでもないけど……あれ、可笑しいな、座って居ただけなのに変に疲れてる……
「だいじょうぶですか!?」
「だ、だいじょうぶ……ちょっと正気を失いかけてただけよ」
と、言ったような感じで、話は現在に戻り、私はSAN値回復に努めているという訳である。
「ホント、どうしようかしらね、アメリア」
「ふにゃー……にゃにゃん」
「ホントにネコみたいですわ、しろくろのネコ……かわゆい!」
あげないわよ〜。非売品よこの子はね~。
私は黄衣の神を信仰したりしてなかったりしてます。いあいあ!