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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
一章:技のゴリラ幼少期
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頼れる大人が多すぎて盛大に何も始まらない

「……いやマジでどうしよう」


 部屋に戻って考えてみたんですけどどうしようもありませぬ。えぇっと、いや如何にかしようはあると思うんだよ。それは間違いなく。


「えっと、それぞれの対応法は、あるんだよ。うん」


 私がアレウスに対してしなきゃならない事は三つ。きっちりとこの家に馴染める様にする事、ちゃんと怯えさせたりしない様に接する事、そして彼に対してのトラウマを取り除く事。


「一つ目は、まあ何とかなる……」


 表情筋をフル稼働させ、全力で力めばきっちりとしたお嬢様として、彼の面倒を見る事は容易い、のだがそれをするとあっという間に彼を恐怖のどん底送りにしてしまう。


「ふ、二つ目をどうにかする事も出来る……」


 怯えさせない様に出来るだけ自然に接する事は、難しくない。しかしその場合ずっとトラウマ刺激で泣きっぱなしになりそうだ。それは流石に情けなさすぎる。


「三つ目、大丈夫、大丈夫いけるいける……」


 アレウスと接しなければ、冷静に彼を見つめながら、対策を練る事とも出来ると思う。けどそれだとアレウスを放ったらかしになるので馴染める様に助けるのは無理だ。


「そしてまた一つ目の問題に……アァァァァァア堂々巡いぃ!?」


 そーだよ結局おわんねーんだよこの問題! そりゃ一つぐらいだったらどうにかなったよ! 実際アメリア相手した時は……あれ、そういえばトラウマはいつの間にか克服してたっけ。参考にならなかった……


「と、とはいえ少なくともアメリアに対しては……あれ、トラウマが薄れてから接する事が出来たからその他の問題が……アレェ?」


 つまり私は、初めて明確にトラウマを獲得している状態で、しかもその情報の相手に対して、頑張って接さなくてはいかん訳なのか……?


「くっ、どうすれば……い、いや諦めるには早いぞ私……」


 まずはやれる事からやっていこう。




 やれる事その一……こっそり影から観察。ストーカー再び? 知るか。現在お二人はお母さまお二人のお部屋の位置紹介を終えたようで。で、そこからどうやらキッチンに移ったらいい。

 しかし、目に見えてワクワクしてんなアレ。そんなに仲良くなったの? アメリアと。


「ここが、おだいどころよ」

「わぁ、とってもおおきいですね!」

「ここでできたお料理はとってもおいしいのよ。たのしみにしててね」

「ほんとうですか! とっても楽しみです!」

 

 うーむ……将来の面影が垣間見える美形ショタ。ああやってニコニコして、喜びを全身で表している時は可愛いというのに、どうして将来若干ヤンデレ入った困ったちゃんに変身してしまうのか。


「コレガワカラナイ」

「何が、でございますかな?」

「お嬢様、ここから眺めているだけではいけないのでは……」

「一番わかんないのはあんたら二人の神出鬼没だよ」


 統括と忠犬、有能さを無駄に全力で生かして神出鬼没するな。心臓止まるかと思ったでほんま。バカなんちゃう? 平静保ってられたのは半ば奇跡よ?


「おお、お顔を全力で動かして……それほど驚かせてしまいましたか」

「そして平静を必死で保っていたのを見破るな爺」


 我慢していた意味よ……そんなものない? そうかよバァロォ。


「っていうか、何でこんな所にいるのよ」

「いえ、忙しい時期も過ぎましたし、お嬢様の様子を見、その序でにお嬢様のお付きになった新人のシゴキでもしようかなと」

「えっ、それは聞いてないんですが……」


 どうやらこの神出鬼没コンビは連携は取れてないらしい。ご老体統括ととお若い兵隊では合わんのかねぇ……


「お嬢様の側付きになるのだ、きっちりとマナーも仕込まねばならんな」

「あれ、でも私側付きになって結構経つ様な……」

「今までは貴様の資質を見ていただけだ。資質が足りねば、その資質を養うための特別メニューを叩き込む所だったが……良かったな」

「あっ、そうですか」


 いや一応私が主人なんだから私の頭越しに……いや、私名義上は主人ってだけで、お金は大公家の家財から出てるんだし、教育担当はマクレスだし、当然といや当然か。


「それで、またぞろ何か素っ頓狂な勘でも発動させたのですかな?」

「なによ素っ頓狂な勘て」

「いえ、お嬢様が行動される時は、いつもどんな勘を働かせているのかと思う程に、過程を無視し結果へ至ろうとするので」


 アメリア母暗殺防止とかとかシュレクと組んでの誘拐犯撃退とかか? いやまぁ、それに関しては二つとも別の理由があっての事だしなぁ。勘働かせた訳でもなく、まぁ、運が良かっただけと言うか、いや悪かったのかねあれは。


「まぁ、それは兎も角……ちょっと、アレウスとの距離を測りかねてるのよ。アメリアが来た時は、来るって事をお父様から聴かさせれていたから、ある程度は心の、その、準備ができていたから」

「そんな繊細な方ではなかったと思うのですが、お嬢様」

「酷いねぇ爺……いや、今までの印象からしたら仕方ないと思うけど」


 シュレク? ここ辺りのない失礼乱発だったからこっちも気が楽だった。後ファーストコンタクトもだいぶ失礼だったから勢いが出た。いや獣だ雑魚だと全く。ほんと失礼としか言えませんわアレは。


「確かに、今回の事はシュレク王子の時と同じくいきなりではございましたが……それでも貴方はうまく馴染んで、シュレク王子と絆を育まれました」

「使用人統括のおっしゃる通り、私から見ても仲が宜しくなっていくのが目に見えました」

「……」


 まぁ、それはそうだ。実際、シュレク相手なんてもう思い切りだけでやってた様なもんだし、その後どうなるかなんて分からなかったしさ。


「どうなるか、なんて考えず、昔の様に猫を被る事もせず、それで良いのだと思いますよ」

「はい、私、ロイは、そんなお嬢様にこそ、忠を尽くしたく存じます」


 ……うーむ。

 なんだろう。私将来彼氏できない気がする。大人が魅力的過ぎんのよな。ずっとマクレスとかお父様に教わりながら、ロイ君とわちゃわちゃやってたい。


「……まぁ、経験豊富な二人の言葉だし、参考にしようかな」


 二人とも、ありがとね。



ちなみに相棒枠はアメリアで埋まっているので……あれ? このお嬢様恋愛する余地、またはそういうのに発展するポジションが残っているのでしょうか……

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