ガードマンがエアー属性を獲得!
全く、一体なんだというんだお父様は。折角のお散歩を中断してまで書斎まで来い、だなんて。ロイ君にも付き合ってもらってるけど、すごい悪いよ。
「申し訳ありませんお嬢様、また、面倒事でございます」
「えぇぇぇええ……前のが終わってから一週間しか経ってませんけど?」
大公家って案外平和だなと思ってた……多分、三ヶ月くらい前の、えっと……アメリアと出会う直前くらいの私を返して。怒涛のイベント尽くしってホント辛いんですけど。
「っていうか、何故また私を? まぁロイ君もいっしょだけどさ」
「今回は、お嬢様を中心に骨を折って頂くことになると、旦那様が仰っていて……」
どうして? 私は厄介事が好きな訳じゃないのよ? というか今回は前振りも欠片も無しかい! いや、日常で起こる厄介事なんて、リアルで考えれば前触れもなんもないもんだけどさ、いやどうしても理不尽に思えちゃうやん。
「……はぁ、まぁ貴族の娘ですし? そういう覚悟は……いやこの年じゃ普通出来て無いと思うんだけど、どうなの?」
「私の私見で申すのであれば、無いかと」
「そうよね。私の想像も、あながち間違いじゃないわよね」
良かった。的外れとか言われてたら泣いていましたぞ。そんな厳しい世界と違うよねお貴族社会って。
「ったく……」
「さ、中でお父様がお待ちです。お話は、其処で」
ホント急に呼び出して……文句ぐらいは言わせてもらおう。後でだけど。
「はいはい。ロイ、行くわよ」
「分かりました」
とは言えお父様の頼みを無下にするってのも無理。はいはい、今入りますよーっと。
「お父様、メタリア。今参りましたわ」
「失礼いたします。メタリアお嬢様の護衛、ロイ・オーランド、入ります」
「あぁ、二人とも。待っていたよ」
お父様は、シュレクが居た頃よりは健康そうに見えるようになった。まあ仕事も一段落してしっかり休めるようになったからだろうか。
「まぁ、立ち話もなんだから、先ずは座ってくれ」
「はい……ロイ、後ろに居てね?」
「は、万が一お嬢様がひっくり返っても受け止めさせていただきます」
いやそんな、某猫型万能ロボットの生みの親の漫画じゃないんだから……そんなギャグみたいなひっくり返り方せんよ。という事でソファに腰を降ろしてっと……このソファ、確かシュレクと会った頃にも一回座ったっけ、ここに。
「それで……何の御用で私を呼び出したんですか」
「……あの、メタリア、その、視線とか、言葉とか、冷たくないかい?」
「いえ。別に」
前回のごたごたが終わってから流れるように追加の問題を持ってきたお父様に対してダメなお人だなぁとか思っておりませんよ? お父様は好きだけど、ダメモードのおとんは微妙なところよ。
「えと……まぁ、マクレスに聞いてると思うけど、ちょっと、メタリアの力を借りたい。借りたいのだけど……えっと、大丈夫?」
「まぁ、それは構いませんよ。断るつもりはないですし……」
「あ、そうなの……じゃあ、えっと、説明するね?」
顔がそう言ってないんだよなぁ……じゃないですよ。多分お父様だったら私じゃどうしようもない事を無責任に任せるなんてしないって信じてるから頑張ってみようって思うんだから。
「普通だったら、金的か投石ですよー」
「あ、そのあたりはちゃんと信じてくれてるんだ……ありがとうね」
「いいえ」
おとんもお父様も、どっちのモードでも信頼していない、と言う事はないから。
「……私の所為で皆が危ない目にあった。私としては、その危ない人達を王宮から追い出して、もう大丈夫、と気楽には言えないんだ。そうやって信じてくれている、メタリアの為にも」
そしておとんからお父様へモードチェンジ。うん、もう茶化せないし真面目に聞こっと。
「故に、次の手を打つ事にしたんだ」
「次の手、ですか」
「そう。味方を増やそうと思ってね」
おや、お父様、棚から何を……あ、オセロもどき! って言うか私が遊んでた奴だ。あれお父様の私物だったんか。
「このゲームのコマ、緑と赤が表裏に描かれている……我が国で生まれたこのゲームの色には、ある意味が存在するんだ」
「意味、ですか?」
「うん……この国の誇りとも呼ぶべき、二つの色。それがこの緑と赤」
って言うかこのオセロもどき、ウチの国の生まれなんか……知らなんだ。そういう謂れなんだこの二色。この国の文化の歴史を初めて学んだ気がする。
「緑の面……君も知っているだろうダリア君が所属している騎士団。『緑鷲騎士団』を示す色だ」
「あ、それシュレクから聞きました。王都を守ってる騎士団だって」
「そうか、シュレク王子が……まぁ、兎も角、そうだ。王都、及び王国を守る役目を負った、この国が建てられた頃からの古い組織だ、そして……これに相対する、赤の色をもつ組織も当然ながら、あるんだ」
へぇ、そうなんだ。いや私としては特に興味もないけど……あれ、そう言えば。
「お父様、大公の家も、色と動物の名前を」
「うむ。大公家は王家を守る最も大きな血筋だからね。故に王家の危機にいち早く参じる為にと、代々大きな兵力の私有を王家から直接認められているのさ。表向きは、私設の騎士団という事になっているけどね」
成る程。となると、シュレクがうちに預けられたっていうのも、その辺りから来てるのかな。万が一の時のシェルターみたいな……白鯨騎士団すげぇな、この国を守る為の騎士団と同レベルの扱い受けてんのか。
「そして緑鷲と並ぶもう一つの最古の組織……赤の名を冠し、かつてこの国を構成する土地を諸外国から奪う為に奔走した、赤狼騎士団。彼らなんだが……」
あれ、なんかお父様の表情がすごい事に……え、どしたん?
「彼らが、此度の私への謀略、シュレク王子への襲撃を行った、黒幕になる」
……いや、あの、すいません。ちょっと待って?
そんないきなエェェェェエエッ!? そ、そんな話なんでしてんの!? えっ、それに関して、私に何をしろっての!?
ロイくんはずっとお嬢様の後ろにいます。
追記:いくらなんでも見過ごせない致命的な書き損じを致しました。大変申し訳ございません。