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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
一章:技のゴリラ幼少期
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お嬢様は家族に恵まれている

 ……うーむ、良い朝だ。それも、唯の良い朝という訳でも無い。


「……スー……スー」


 隣で、可愛い可愛い妹が一緒に寝ている。寝顔が控えめに言って天使。共寝を頼みにくるのはなんでか分からんけど、まあシュレクが居ない事による寂しさを埋めるためだと思うので、半年毎の来訪って形に慣れれば終わると思う。


「少しずつ大人びて来た気がしないでもないけど」


 やっぱりまだ子供だ。親しい人が離れて行ってしまうっていうのは、大きなショックになる。戻ってくるとはいえね。とはいえこうして甘えてくれるのは悪くないので、今一週間になるから、それまではくぁいい妹を独り占めって事で。


「役得と考えますか」


 でも意外っちゃ意外なんだよな。ちゃんと割り切れてたようには見えてたからそこまで寂しい寂しいになるとは思ってなかったから……納得はできるけど。


「うーん……案外、シュレクの事が原因じゃなかったりしてね……あっ」


 お目目開いちゃった……あーでもトロンとしてるね。半覚醒状態ってところか?


「……おねぇさまぁ?」

「おはよ。でもまだまだ早いから、寝てても大丈夫よ」

「そう……でしゅ……じゃぁ……」


 はーい、お休みね。あ、髪かかってる。払ってあげよう……うわ、さらっさら。最上質の髪だなやっぱり。うーむ、私とは格が違うレベルな気がする。


「シュレクは、似合いの姉妹だ、なんて言ってたけど。どう考えても世辞にしか聞こえんのよなぁ。まぁ世辞でも嬉しいけどさ」

 あとどんくらい大丈夫かは知らんけど、ま、それまでは、良い夢を、アメリア。


「えへへ……おねえさま……おねえさま」

「?」


 今、私の事呼んだ? うーん……気のせいかな? 気のせいだな!




 最近、朝ごはんが終わったらアメリアが何処かに出かけている。どこ行ってるかは知らんよ、知ってたらこうやって朝飯食べた後、ロイ君と一緒に散歩なんて……ああいやそうでもないか。


「どこに行ってるの?」

「は、どうやら白鯨騎士団の詰所のようです」

「へぇ、詰所に……あれかな、騎士の人たちと交流しに行ってるのかしらねぇ、ロイ」


 私もやってたから、まあ別に不自然とは思わん。私の場合は、さ、アレだけど、全力に媚びに行ってただけなんだけどさ。


「まあアメリアなりに、色々考えて動いてるみたいね」

「そのようです。ご覧になりに行かれますか?」

「まさか」


 可愛い妹の頑張っている姿を見たいというのはないでもないが、それ以上にあの子が一人で頑張っているのであれば、そうさせてあげたいという気持ちがある。


「私とかお母様方に声をかけないで、態々一人で頑張っているんだから、ね。下手な手出しは無粋、というものよ。ふふん」

「なるほど! 粋、の思考ですね! 素晴らしいお考えかと!」


 そうそう。貴族は誇りと義だけじゃなくて粋も重要だと思う。如何に相手の心意気を汲んだ、洗練された行動をするか、だ。


「お母様だって複数の妻を許容するくらいの粋を見せたんだから、私だってねぇ」

「その年で粋を理解し、実行為される事、お見事に御座います、お嬢様」

「……」


 ふと、気になった。


「ねぇ」

「はい? なんでしょう、お嬢様」

()()()()()()()? 私さ」


 自分でも思うよね。ここまでなんつーか、色々理解しててさ、考えてる子供ってそういない。爺は気にする事でもないって言ってくれたけど、爺はほぼ身内みたいなもんだし。


「いきなりごめんねー、こんな事訊いて」

「……お嬢様」

「いやね、私。なんか急に……ごめんごめん。やっぱいいわ、忘れて」


 あー、チクショウ、色々ごたごたが一段落したからなぁ、気が抜けちゃったか。それでこんな、弱気な……若干、目を逸らしていた部分が。


「賢すぎる子供が、時に疎まれ、時に蔑まれる事、確かに御座います。気味悪がられるとそれを表すのであれば、そうお嬢様を思う方もいると、思われます」


 っ……あぁ、うん。まぁ、そうだろう。分かっちゃいた。けど、それを面と向かってハッキリ言われんのも……色々あれだなぁ……こう、クる、物があるよね。


「その上で、そう申される方は、()()()()()()()()と愚考いたします」

「……へ?」

「私は、この屋敷の方々は、皆知っています。お嬢様がどのように過ごされているか。それを知っていれば、むやみやたらに恐れる必要の無い方だという事も分かるでしょう」

「いや、でも」


 それは、私の事を良く知っている人たちだからでさ……


「人と付き合おうというのに、付き合おうとしている人の事を良く知ろうともせずにその突出している部分だけを見て、それに怯える。そのような輩なら、始めから付き合う必要もないでしょう。互いを知る、其処から付き合いというのは始まるのですから」

「……」


 互いを知ろうとして、初めて付き合いが始まる……か。


「成程ね。ロイも、そうなの?」

「当然でございます。私は、知っています。お嬢様が、聊か調子に乗りやすい事」

「おいいきなり悪口ぃ!?」


 まって、容赦なさ過ぎて笑えない。どういう事なの? 理解ってそう言う事なの?


「それだけではございません、興奮すると聊か口調が乱暴になる間の抜けた方である事やアメリア様に対してはあっという間にメロメロになってしまう事」

「いや流れるような悪口ぃ!?」


 ないていいでつか。


「……それに」

「あによぉ……もう乏す所なんて残ってないわよぉ」

「家族の危機に真っ先に立ち上がる熱い心をお持ちである事、私のような罪人であっても受け入れて下さる器の大きい方である事、そして、コロコロと表情の変わる、感情豊かな方である事も、知っています」


 ――っ!? イケメン忠犬スマイル!?


「な、なななななんっ!?」

「お嬢様、私は、お嬢様と『付き合って』います。故に、これくらいは直ぐに分かります」


 く、くそっ! ロイ君てばイケメンだからこういうセリフ言われるとちょっとドキッとしちゃうじゃないの!


「そして……この屋敷には、そういう方が沢山います。もし、先のような心無い言葉を言われた時は……その事を思い出して、弱気な心など吹き飛ばしてくださいませ!」


 う、うぅ……この忠犬スマイルには、弱点突かれちゃうよ……あーでもなんだ。


「……ありがとね」

「はい!」


 うん。すっきりした。お母様も言ってたけど……ホント、ロイ君を無理言って引き取って、良かった。結果的に、だけどさ。


「はー、いやー弱気な気分も吹き飛んだら、なんかお母様にでも甘えたくなってきたわねぇ、ロイ君、供を頼まれてくれる?」

「承知いたしました……おや?」


 およ、どうしたって……アレは?


「爺だ……うん? ちょっと待ってどうしたんだろう」


 なんか、表情が……凄い、こう、マジですけど。え、なんでこっちに手招きしてんのホントなんか私になんか用事?


家族に恵まれるかどうかで、物語がザマァ系になるかギャグ物になるかが決まったと思います、本作は。家族に恵まれたので、ギャグ物になりました。

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