下手なデザイン、数撃ちゃ当たる。
と、さんざカッコつけた共犯者宣言しても、限界というものはあるもので。
「一週間かぁ、まぁ案外粘れたかな。アメリアの為にありがとうね」
「大したことではないから、礼はいらん」
大したことはしてない……しょーもないことしたってことかな。
「そのクールフェイスから想像も出来なかったが、壮絶に全力でダダでも捏ねた?」
「しない。さすがにそれは見苦しいだろうからな」
うん、正論ですね。私が普通にやりそうだからって一緒にして……いや私もやっちゃまずいだろう赤ちゃんと違うんだぞ私……あれ、可笑しいな、靴が、靴がどっかいったよ。
「こちらに転がってきているぞ……手伝ってもらわなくて、本当に良かったのか」
「サンキュー共犯者、ドレス着る直前までは、自分で出来るようにって昔からお母様に教わってきたからね。これくらいは出来ないとさ」
よし靴もオッケー、これでドレス以外は終わったからっと……
「へいメイドさん方、お願いしまーす!」
「「「「「はーい」」」」」
さあてメイドさん五人がこの部屋に乱入してきて黒と白とのコントラストが目の前を彩って後ゴスロリってメイド服と色合い似てるよね関連性あんのかなはい終了!
「いやー、流石我が家のメイドさんですわー、有能有能」
「……側から見ていると竜巻にか見えんな、早業すぎるのも一種問題ということか」
「いやー私もこの動きに慣れるまでは白目剥いてたわー……」
いやシュレクのは比喩ですよ? ただね、ただね、いやホントそれに例えんのがふさわしい速さでドレス着せて綺麗に整えて、ってやるから。このメイドさんたち。
「お綺麗です、お嬢様」
「あっそう、ありがとう。ところで新作のドレス身につけたあの子と比べてどう?」
「アメリアさまに軍配があがるかと」
「でしょ?」
当然だよねぇ。いやー私も前世の記憶から発掘して作った甲斐があった……あぁ、当然ながら私が新規で書き起こしたのだ。今回は黒と白だけじゃなくて、赤も若干混ぜたちょっと邪道タイプだが、アメリアの黄金の髪にはよく似合うと自負している。
「お嬢様は本当に才能豊かなお方ですね」
「いやーそうでもないわよ? いやホント」
味を占めたので偶にデザインをしている。まぁ服のデザインなんてやった事もないど素人なんで、自分でもアタリと思えるのが出来るのなんざ万回やって一回ぐらいだが。
「いやホント……貴重品の筈の紙をどれだけ無駄遣いしたか……」
マジでさ、木の板とかに形だけ書いて、で、それでまだマシな出来になったやつを紙に書き起こしてるんだけど……数枚の紙と、それの数千倍の数の木の板が犠牲になっているのである。偏に私がど素人であるが故である。
「っていうか、私の絵を元に見事に理想の形にしてくれるジョランゼさんが凄いだけなんだよね……さ、そろそろ行くとしましょうかね」
「アメリアの着ている服はお前が作り上げたものだと聞く。賞賛されるほどの出来で、アメリアがそこまで彩られているというなら、俺としても気にならざるを得ない」
「フハハ奇跡の産物だから再現とか無理だけどね! じゃ、あんたのお別れパーティに繰り出すとしようか!」
といっても我が家の食堂な訳ですが。シュレクがここにいるのがバレたら、折角秘密裏に匿っている意味がゼロになるので、ささやかではあるが……と思ったけど。
「うわぁ料理が本気だぁ……我が家のコック様が大盤振る舞いだよ」
「……俺の目が確かなら、王宮の料理よりもより手が込んでそうに見えるのだが、凄まじいな」
「えっ、嘘でしょ……とは言い切れないわねありゃ、なんかホント全部の料理がツヤツヤしてるように見えて凄いわ」
いやー王族に振舞うからって普段からも張り切ってたけど、今日はひとしおだね。
「冷めさせるのも勿体無い。早く席に着いて頂くとしようか」
「そうね、とはいえアメリアを待たないといけないけど……っと、来たわよ」
この足音の重さは……お父様と、お母様達だな。アメリアも一緒だろう。まぁ私たちは大人に見てもらう必要性がないからね。別行動なわけです。
「遅れてすまないね」
「ま、まさかここまで手間取るなんて……お恥ずかしい限りで」
「いいえ、着慣れてない服にしてはとても手際が良かったと思うわ。自信を持ちなさい」
「おかあさまきれいです!」
「アメリアの方がとても綺麗よ……ホント、私自信無くしちゃいそう」
フゥー! 入って来たお方々が煌びやかぁ! お父様の服は、これはまさか新しく仕立て直した新品の礼服、黒がツヤツヤ! お母様とメトランさんのドレスはお揃いのクラシカルタイプ、色合いはお母様が白主体、メトランさんがピンクパール主体!
「それにしても……彼らに負けず劣らずの輝きを放っているな、アメリア」
「そりゃそうよ! 正直私自身仕上がりを見て自分の想像の遥か上行かれてて『あれこれアメリアに着せるのは若干犯罪的まであるんじゃない?』とか思ったよ」
そして、その煌びやかな中にあって、一際輝きを失わない我が妹……基本は赤、ヒラヒラ部分には黒、飾りには目立たない程度の白! そしてそこにかかる黄金の髪との組み合わせで、正直ヤバイ。お強い。
「おねえさま、どうでしょうか……その、にあいますか?」
「ええ最高よマジ素敵鼻血が垂れあぁ垂れてるわね」
「おねえさま!?」
「メタリア、自重しろ。妹への感情が爆発したのは分かるが、さすがに淑女としてマズイ」
スマンスマン……我が感情が爆発してしまった。いやーかわゆい。媚びてるような可愛さ? 知らんわ、媚びてねーし、どっちかといえばお人形さんみたいな完成された可愛さだろうが。
「っと、流石にパーティを捻り潰すわけには行かないわね……自重しましょうか」
「ぶち壊しと言わないあたりに力強さが溢れているな」
クフフ、褒められて悪い気はせん。
ゴスロリデザインが増えるだけの回。
アメリアを割と溺愛しているお姉さま。




