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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
一章:技のゴリラ幼少期
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ピッチャーメタリア、二度目の登板!

「シュレク、お迎え?」

「いや、迎えは俺の側付きのはず。声が違う……二人は奥のクローゼットに。万が一の為だ。俺が応対しよう」

「分かった、アメリア、こっちへ。後、声は抑えてね」

「おねえさま、あのこえ……」


 奥のクローゼット、ギリギリ二人なら入れるな……あ、そうだ。一応何か使えそうな物をば……書斎ならアレ、アレは……机の上だったけ?


「そら、ペーパーウェイトだ。二つほどある、持っていけ」

「あ、どーも」


 良く分かったなペーパーウェイト探してるって。いや、今はいいやそれは。

 で、肝心のペーパーウェイトは……掌にすっぽり収まるサイズ。これなら投擲に支障なし。いざとなっても二度だったら攻撃いける。良し。


「じゃあ、シュレク、気を付けて」

「大丈夫だ。俺とてそこまで間抜けではない」


 そしてクロークイン。ちょこっとだけ隙間開けとかないと……あ、服の後ろに隠れるのも忘れちゃいけない。明けたら即座にバレるとかギャグだよ。


「……あの、おねえさま」

「シッ、アメリア、気づかれちゃいけないから静かにしてないと」

「いえ、あのこえ、そのききおぼえがあると、いいますか」

「ええ? そんなの気のせいやまって聞き覚えがあるってそれマジですか?」

「は、はい」


 ど、どう言う事だ……アメリアが聞き覚えのある声って、え? どういうこと、まさかこのタイミングでめくるめくアメリアの過去編とかがスタートしちゃう系?


「あのこえ、かんちがいじゃなければ、きのうわたしたちにむかってきた……」

「あ~あ~あ~そっちかそっち系か~」


 あの親戚のおっさん。王宮に仕えてるとか言ってた人……アレ? なんでそんな人がここにいるんだ? え、もしかして普通に迎え……だとしてもなんでロイ君の声がしなかったんだろ。


「あ、おねえさま、シュレクさまがとびらをあけました。はいってきます」

「……どうなってるんだホント、状況が読めないんだが」


 とはいえまずは状況チェック……あ、ホントだ。あのオッサンだ。ハゲで狸腹。


「昨日の……貴様が俺の迎えか。人員が変わったのか」

「左様に御座います、側付きの方は大公と話がある様で。さ、馬車を表に止めてありますので、お早く」

「そうか。所で、先ほど外で物音がしたが、何かあったのか」

「あぁ、それは……外に不審な人物を見かけたので、念のためにと、連れてきた騎士達を向かわせたのです。外の見張りにも、向かってもらいました」

「……そうか」


 ……これは、アウトだ。デマだ。大嘘だ。

 ロイ君が、そんな事する訳ない。彼は、良い人だ。私みたいな小娘にも手を貸してくれる、すごい人だ。そんな彼が、時間稼ぎすらしない、中に一つの声も掛けない……ありえない! やっぱりアウトじゃねーかこのオヤジ!


「おねえさま」

「あの狸オヤジ、ロイ君になにしやがった……事と次第によっちゃ、もっぱつ金的だぞ」


 というか、もう金的は確定だ。あとは、それがどれだけ猛威を振るうかの、程度が変わるだけだ。もういっそ潰した方が早いかこの野郎。


「……ふむ、そうか」


 だがマズイ、シュレクは、外の見張りがロイ……というか、私の信頼できる人だったとは知らない。信じてもおかしくない。あのオヤジ、クソ怪しいって、どうにかして伝えないとシュレクも危ない……


「……いや、そんなんまどろっこしい」

「おねえさま?」


 良く考えたら無理だ。そんなスパイ映画みたいに、こっそり護衛対象に危機を知らせるとか。繰り返すが無理だ。そんなチート染みた頭脳は持ってない。持っていたとしても面倒くさいからやらない。


「アメリア、準備なさい、ひと暴れするわよ」

「っ、はいっ。おねえさま」


 よっしゃ、じゃあ先ずは、ペーパーウェイトを準備。


「アメリア、合図をしたら、私の目の前の服と扉を開いて道を作って。コイツを彼奴にぶち込んで、隙を作るわ」

「わかりました、わたしはかみつけばいいんですか?」

「あ、いやそれはしなくていいわ。というか淑女がそんな勢いで噛み付くのはヤバいからまぁ……もうちょっと、やり方を選びましょう」

「わかりました」


 うん。暴力はアメリアには似合わないよ……あのバイオレンスアメリア事件を繰り返してはならないんだ、姉として、しっかり妹の軌道修正しなければ。


「しかし、態々王宮からここまで来たのだ、疲れているだろう……少し休んでから出発すれば良いのではないか?」

「あぁいえ、一刻も早くお連れするように言われていますので、それは」

「そう焦るな、そら、座ると言い」


 ……って言うかシュレク様何やってんだろう、アンタ目の前にいるのは不審者レベル最高クラスでございますよ? いやまあ状況的に疑えってのは厳しいけど……?


「……そら、この椅子にでも」

「ちょ、王子」


 あれ、こっちを見てる? なんで……いや、成程、そう言う事か!


「ふふ、いやー、友人が有能だと助かるわ」

「おねえさま、じゅんび、おわりました」

「ナ~イス……じゃあ、行くわよ」


 ピッチャー、振りかぶって……結構広いなクローゼット、振りかぶれるぐらいは奥行きがあるというのは随分なセレブ仕様だねってそれはどうでもいい!


「良~く見えたわ……あの狸オヤジの、後頭部。シュレクがこっちに向けてくれた、人間の急所」


 いま、全力を賭して、諸々の怒りを込めて、あと先日実は消費しきれてなかったアメリアへの仕打ちへの怒りも序に添えて! 行くぞぉ!

 改めて、ピッチャー、振りかぶってぇ……ウィンクでアメリアに合図! 


「投げたぁ!」


 ゲットオープン&フライングストーン! びっくりしてるが、振り返る暇はないだろうよ!


「ごっ!?」


 よっしゃ、オッケー不審者の後頭部にクリーンヒットぉ! 良い音がしたぞぉ!


「へ、宣戦布告よ不審者」

「良い一発だ、メタリア」


ペーパーウェイトって、案外重いんですよね。当たったら痛いです。

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