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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
一章:技のゴリラ幼少期
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アメリアを元気付けたいお姉ちゃんのエントリーだ!

 今日も朝だよ食パン美味い。あ、シュレクごめん、バターありがと。あーバター付き食パン美味い。いやまぁ、それは兎も角として。

 大人三人が……うん、まあ、昨日の後だし、そうなるわな。


「……」

「……」

「あの、二人とも、どうしてそんな、無言なのかな」


 そういう方向でお話ししたからだと思います、お父様。ほら、メトランさんてまだ顔赤いし。お父様から顔逸らしてるし。お母様は『まだまだね』っていう顔されてらっしゃいますし。


「メタリア……何か知らないかな?」

「いえお父様私大変無知で無垢な少女でございますのでとんと分からずでござりますれば」

「いや、メタリアが無垢なのは至極当然にしても、無知ではないっていうのはもうお父さん十分わかってるけど……まあ、うん、そこまでいうなら信じるよ」


 よし誤魔化すのに成功、あんな脳味噌死んでる会話もう一回再演とか出来んわ。


「メタリア、バターを返してくれ、後バターナイフを取ってくれないか」

「はいはーい……バター好きですね、シュレク様って」

「ああ。好物なのだ。何にでも良く合い、そうして使い方の応用も効く」


 まぁそんなことは忘れて。バター好きとか。やっぱりロイヤルだよね……なんか上級階級の人って、手の込んだ料理よりも割とシンプルな、調味料とかが好きだったりするんだよね、意外とさ。


「しっかし、シュレク王子もここの暮らしに慣れましたね。王宮暮らしに慣れて、それ以外は全然無理、とか言いそう、とか最初は思ってましたけど」

「俺には相当失礼というが、貴様もそれなりには失礼な事を言うな」


 いやーすいませんイメージなもんで。恨むんであれば、私の前世の記憶をお恨み申し上げて欲しいのです。


「ふふ、とはいえ、慣れて来たと言われるのは中々に喜ばしいものだ。お前と過ごすこの愉快な日常に馴染んだ、と言う事だからな」


 あ、笑った。いや、微笑んでるって言う感じだけど。珍しい、あの無表情が。まぁでも、前の憂鬱な表情だったりするより、ずっと無表情だったりするよりはまぁマシかね。


「愉快、は余計な気もしますが……まぁ、良かったじゃないですか」

「うむ」

「シュレク王子、慣れていただいた所、大変に申し訳ないのですが」


 おやお父様、他人の話に割り込むなんて、珍しい、どうしたんだろ。


「時間がかかってしまって申し訳ありません、全て、片付きまして御座います」


 ……もうそんな時期になったか。そりゃあ、大分時間も経ったし、お父様は仕事も早いし……これだけ時間がかかったのを、驚くべきだったかな。


「王宮の中で、王子を狙う不穏分子の粛清を終えました。全てとはいきませんでしたがそれでも、王宮で無事、暮らせるだけの余裕は出来たかと……そろそろ、王宮に戻られる頃合いかと」


 来るべき時が、来たって事か……


「……そうか。大公殿、ご助力とご尽力に、感謝を。ありがとう」

「いえ、王家を守る事は大公として当然の義務。何を感謝される謂れがございましょうか王子……今日、王家の方が迎えに来られます。それまで、私の書斎で」

「分かった」


 何だろうね。元からこうなる予定のことだってのに、やっぱり……うん。寂しいと思っちゃう。もう、会えないって思うとさ。


「メタリア、アメリア……王子に、最後のご挨拶をしなさい」




 お父様とマクレスは王宮にいったか。こういう時でも王宮にはきちんと礼を尽くすあたり、流石と言うべきか。


「シュレクさま、おかえりになるのですか、おねえさま?」

「……そうね。お父様の都合でシュレク様はこの大公家に来ていたのですから、元々その仕事が終われば帰る予定だったから、予定通りといえば予定通り」


 食事終わり、来るとしたらこのタイミングだと思ったが……ま、そりゃアメリアが反応しないわけないわな。私と一緒に、大分わちゃわちゃやってたし。


「あの、おねえさま、さいごに、もういちど……さっきは、とおくから」

「お父様は、書斎には、シュレク様以外出入りさせないように、部屋の前の見張りに言いつけてあるのよ。私たちだけじゃとても入れないわ」

「え……」


 挨拶だけ私たちにさせて、王子様は即座に回収。前のお説教と違って一切の甘さは無いようにも見えた。今回はどうにもガチモードらしいね。


「……」

「やっぱり、寂しい? シュレク様と離れるのは、アメリア」

「それは、その……で、でもそれは、もともと、そうなることで……」


 あ、顔伏せちゃった……まぁ、懸念はしてたけど、そうだろうなぁ。ロイ君からの情報では、お父様は引き渡しまでは、書斎に居てもらって、護衛で固めて、誰も入れさせないつもりらしい。まぁこう言う大事なものって、引き渡しの時が一番危ないって言うし、厳重にもならぁね。


「そうよね……さっきみたいに、適当な挨拶だけで終わらせて、最後の別れもちゃんとさせずに終わらせるって言うのは……やっぱり納得いかないわよね」

「あの……えっと……」


 子供から見て理不尽でも、この子は我慢できちゃうからなぁ……見てて若干痛々しくも見えるって言うか。


「寂しいなら寂しいって、言いなさいな。迷惑かな、とか考えないで。お別れをちゃんと言いたいなら、シュレク王子にちゃんと面と向かって、さ。ほら、顔上げて」

「あ……」


 もちもちしとるなぁお前さんの頬は……ほれほれ、顔を上げなさいな。そして……やっぱり、しょんぼり顔で、ちょっと涙目か。やっぱりまだちっちゃいもんねぇ。しゃあないかぁ。


「……よしじゃあ、行こうか。王子のところにさ」

「……え? で、でもおとうさまが、はいれないように、って」

「ふふん、だからこそ、ここぞって時で使うのよ。()()()()()()()()()を、ね」


いいお姉ちゃんしているように見えるでしょう?

信じられます? 最終的に全部脳筋で解決しようとするんですよこの子。

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