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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
一章:技のゴリラ幼少期
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メタリアの敗北、ゲームスタンバイ!

 うーむ。


「さて、これで……どうだ、メタリア。次はお前の番だぞ。遠慮せずかかって来るがいい」

「おねえさま、あの、もうおいつめられちゃいますよ?」


 ふぅ……さて、ここまで来たら、もう何を言う事も無い。手は一つだ。たった一つの単純で、私のこの状況を変えるためのベストアンサー。


「アメリア……」

「はい」

「たしゅけてぇ……もうむりぃ……」


 妹へのクソ情けないヘルプミーである。


「あ、もうげんかいだったんですね!? わ、わかりました、おてつだいします!」


 チェスみたいなゲームがあったんでやってみました。シュレク様にボコボコにされております。いやー幼いながらにして実に聡いことで。ははははははは……はぁ。

 と、とはいえ頭脳が二つに増えたんだ、演算速度は実質二倍! もう負けはないだろう!




「まさかあそこまでボロ負けするとか、手加減してくださいな王子」

「手加減は聊か苦手でな……すまない。まさか二対一であそこまで圧倒できてしまうとは」


 即オチ二コマだった。二人になってからちょっとして『これ無理だわ』とアメリアと二人して悟ったわ。

 おのれ、唯の暇つぶしのつもりが熱中しちゃったじゃないの……ちょっと練習しよ。大人の頭脳のごり押しじゃ勝てんわ、うん。


「だいじょうぶですよおねえさま、つぎまでにまた、れんしゅうしてかちましょう!」

「そうね、次までに……あ」


 次、次とは言うが、よく考えれば、この滞在が終わった後もう一度シュレク様と関わることなど、あるのだろうか、どうなんだろう。


「……うーむ、意外にも、惜しんでしまっている私がいる」

「おねえさま? どうしたんですか?」

「あぁいや、なんでもないわ。平気よ」


 アカンアカン、アメリアはまだ小さい……でも結構パワフルだし……いやいや、懐いてるイケメンお兄さんがどっかに行ってしまうともなれば、取り乱しちゃうかもしれない。この懸念は、私の胸の内に秘めておこう。


「にしても……」

「どうした」


 この家で初めて見た時は、面倒事が転がり込んできたと思ったが、その面倒事はお父様が全部片づけてしまったし、私は家で、この王子様とわちゃわちゃしてただけ。この王子も、全然悪い人じゃなかったし、楽しかったし。


「いいえ、なーんでも。さ、これでは勝てなさそうですし、別のゲームでも如何?」

「いいだろう。相手になろう」


 ……よーし、今度は白黒じゃなく赤緑のオセロ擬きで勝負だ! チェスよりは単純だしまだ勝ち目もあるだろう、行くぞぉ!




「がっ……だめっ……勝てない……全力でも……!」

「お、おねえさまぁー!?」

「む、どうやら加減を間違えたようだな。すまない、少し楽しみすぎた」


 盤面は緑一色。私の赤は一切ありましぇん。こんなのありかよ、こんな目に優しい盤面見たことないよ畜生め……く、くやしい。


「……」

「こ、こんどはアメリアがおあいてします!」

「いいだろう、かかってくるがいい。俺は逃げも隠れもしない」


 でも、なんだろう。アメリアと、私と、シュレク様と。こうやって子供だけで、子供っぽく遊ぶってのは、もしかしたら初めてかも知れん。私を構ってくれたのって、お父様やお母様、爺とかの大人の人ばっかりだもんなぁ。


「……楽しいな」


 うん。素直にそう思える。いや、この精神年齢で子供たちに混ざって遊ぶの楽しいとか思うのは色々ダメかもしれんけどさ、でも、楽しいもんは楽しいからしかたないよ。


「む、見事だアメリア、ここでこの一手はなかなか打てない」

「ふふん、おねえさまのかたきうちです、ほんきでいきますよ!」


 シュレク王子と遊びで競うのも、こうして、アメリアとシュレク王子が盤面を挟んでにらめっこしているのを見ているのも、とても楽しい。


「アメリア―! 角渡しちゃだめよー!」

「はい、おねえさま! よーし、ここ!」

「む……これは少し考えねばならんか……では、ここを頂く」


 あっ、まってそこは結構ヤバい気がするのだが。


「あー! まっかになっちゃいました!」

「ふむ、これで形成は此方に傾いたか……さて、どうする?」

「うぅ、おねえさま、ごめんなさい、かてないかもしれません……」


 こ、この王子容赦ねぇ……ふ、だが俯瞰で見ているからこそ気づくこともあるというものだ。王子、其処に気づかせないためにワザと下手な一手を早めに打ったな? 畜生賢マンめ。

 

「アメリア、ここよ」

「ふえ? ここですか……あっ!」

「……うむ、其処を取られると、非常に厳しくなるのだが」


 良し、これでもう角を取れる状態にはなったなふふふふ、さぁ王子、どうしのぐ。


「……勝ち目は薄いが、とりあえず仕込んでいた分はひっくり返させてもらおう」

「わわわ、すごいかずとられちゃってますおねえさま!」


 うわ、一つ置いただけで三列くらい一気にひっくり返ったな……だがこっちは一つ角確保してるんだ、残りの角を確保するのも時間の問題よ!




「ばっ……ばかな、こ、こんな事態が……」

「うぅ、だめでした……おねえさま、ごめんなさい」

「何とか成し遂げたか。流石に完全勝利とまでは行かなかったが」


 み、緑は三分の一程度しか残っていない……角を最初に取ったというのに、残りの角をまともに獲得できなかった、なんて……おのれ。


「ふふ、やったぞ……と、いうべきか、こういう時は」

「おのれー! 大人気も無く本気出しよってからにー!」

「こういうのも、適当にやる、の内だろう」

「成程、真剣にやれば手加減を忘れないからね、やかましいわぁー!」


 こにょー! 理不尽だとは思うが場外乱闘だコラー!


「のしかかるな。重い」

「誰が重いか―!」


 あぁ、楽しいな。皆で遊んでるの。もっと、もっと遊ぼう。その時が来る前まで……とか感動的な話を脳内展開しつつ現実ではオラァ! 乱闘、場外乱闘! お覚悟なされませオラー!



小さい頃、親戚のおじさんに従兄弟と共に将棋で挑み、ボコボコにされました。

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