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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
一章:技のゴリラ幼少期
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幕間:ロイヤルプリンスから見たヴィランレディ

「言い訳とかどうでもいいんで泣いて喚いて本音を吐き出してください。兄弟仲良くわちゃわちゃしたいんでしょうが」


 目の前の少女の発した一言に、また思考を止められる。思うが、この少女はいつも真っ直ぐ、しかも遠慮皆無に突っ込んでくる。


「何をゴチャゴチャ考えておりますか、いいですか、仲良くしたいなら仲良くしたいでいいじゃないですか。王位継承者とか関係ないです、家族の絆を深めるためならそんなもんクソですクソ。便所に流して構いません」


 この大公家に来て、一番驚いたのは、この大公の娘、メタリアについてだろう。


「……メタリア、聊かどころではない勢いで口調が荒れているが」

「言い訳は良いって言ってるでしょうが。ほ、ん、ね! はい、ほ、ん、ね!」


 慣れきっていない言葉で、それでもしっかりと貴族らしく振る舞おうと努力する。そんな健気だが、聊か頼りがいに欠ける、そんな同年代の貴族の息子息女を見ていた。

 その所為か、彼女の異常さは、際立って分かった。


「ジッと見て誤魔化そうったってそうは問屋が卸しませんからね」

「誤魔化そうなどという意図はない。後、怖い」

「さぁ早く吐き出してください。こっから先ずっとそんな表情で私とアメリア見られるのは聊か通り越して気になりますからさぁさぁさぁ!」


 先ず慎みは間違いなく不足しているだろう。しかしその分、彼女は良くも悪くもしっかり物を言う。と言うより、最近そうなった、らしい。


『あの妻の誘拐事件で吹っ切れて以降、娘は、より明るく、素を曝け出すようになって活発になりました。何かと誤魔化しがちである事をマクレスから聞いて、心配しては居たのですが……良かった』


 その代わり、聊か素っ頓狂な物言いが増えた、とヴェリオ大公は苦笑していたが。


『淑女として、少々お転婆が過ぎるようになってしまったのは、嘆かわしいと思ってはいますが……それを踏まえても、今の、何物にも縛られる様子の無いのびのびとした姿はとても、とても、喜ばしく思います』


 以前よりより華やかに、より躍動的に、ますます自慢する点に暇なくなっている、とルシエラ殿は大輪の笑顔で言っていた。


「誰だって、メタリア、お前の様には出来ないのだ」

「私の様に? 何言ってんですか」


 彼女は、彼女の両親の言う通り、あまり自分の本性を胡麻化さない。力強く、粗野だがしなやか。まるで猛獣の如き、その烈火の情熱が、彼女の本性だ。

 必死になる時も、呆れた様子でものをいう時も、誰かを可愛がる時も、可愛がられるときも、彼女は兎も角感情を外に曝け出して見せる。以前はそうでもない事も多かったようではあるが、最近は顕著らしい。


「じゃあどうすんですか、このまま兄弟に嫌われてしょぼくれて終わりですか」

「いや、それは……その」

「嫌なんですかそれでもいいんですかハッキリどうぞ!」

「嫌に決まっている。それは当然だ」


 それと圧が凄い。グイっと前にでてくる。実に生き生きしている、と思う。


「だったら、そんなしょぼくれないで、しっかり覚悟決めてください。王宮に戻って、兄弟と仲直りするんだって」

「……いや、悩むのは必要だと思うし、今決める必要は」

「ずっと大公家にいる間、そんな顔してるつもりですか? アメリアだって気を使いますしお父様の胃も死にますし、やめてください。後、私も、そんな顔してるのは見たくないです。気になりますし」

「う、うむ」


 俺の事を一切考えず、正直に物を言う。聊か呆然とさせられてはいるが、しかし。


「考える必要なんざないですよ。っていうかゴチャゴチャ考えるのがしょぼくれる原因だと思うので考えないでください」

「思考をしろと言っていたのに、思考をやめろというのか」

「極端なんですよ。極端。適当に考えて、適当に行動すればいいんです」


 だからこそ、本音を叩きつけられるからこそ、その言葉は私に良く響くのだと思う。側近の慰めの言葉よりも、教師の教える格言よりも、何よりも。聊か理不尽な発言ではあるとは思うが、むしろそれも、彼女の感情をしっかりと表しているように思える。


「適当、って言葉、ご存知です?」

「その物事について、丁度いい塩梅である事、だったか」

「あーいえ、そっちじゃなくて。雑にやってみるとか、そういう意味の方ですね?」

「雑に」

「そうそう、雑に」


 雑に……雑に、か。


「それは、不義理に当たる行為ではないのか?」

「シュレク様くらい有能なら、雑でも丁度いいから大丈夫です。寧ろ家族の間でなら『オレが仲良くしたいからする! 文句は言わせない!』位でもオッケー。気安く、気安く」

「ほ、本当に雑な言い方だな……うむ」


 うむ。だが、彼女に言われて何となく分かった。彼女の態度が、恐らく、彼女の言う『適当』に最も近い。というより『ソレ』その物なのだろう。


「……気安く、というのは確かにそうだな。家族とは、隔てなく、気安く接する事が世間一般的な普通、か」

「まぁ……そりゃあ、それが普通だと思いますよ」

「そうか。ふむ。なるほど、参考になる意見だった。ありがとう」


 根本的なアドバイスをされた訳ではない。どうこう言えば、兄弟仲が改善する、といったような、伝説の知恵の神のような、天啓にも近い意見ではない。

 正に『適当』な助言と言っていいだろう。


「そして、すまなかった。面倒をかけたな」

「まぁいいですよ、別に。そのしょぼくれた顔は見たくなかったので」

「お前の憤怒の表情の恐ろしさよりは、マシだとは思うが」

「相談相手に対してのその罵倒、調子が戻ってきたな、良し、戦争だオラ」


 だが、その雑さが、俺にとっては好ましく映った。そして、その助言を、受け入れてみようと思う、きっかけにもなった。

 ここに来た事は望外の幸運、だと思える。


「改めて、感謝を」

「感謝されても許したりはせんわ、おら覚悟ぉ!」

「葉っぱを投げつけるのは聊か品がないぞ……しかし意外によく飛ぶものだな」

「躱すなぁ!」


 うむ。心晴れやかに、じゃれ合うのも、良いものだな。


感情的だが、言葉は飾りません。その代わりゴリ押してくるので圧力が凄いです。

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