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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
一章:技のゴリラ幼少期
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お嬢様流相談室(脳筋)

「お嬢様、こちら。メトラン様からのお菓子になります」


 おぉ来た来た。うーん、いい香りだ、バター成分の香ばしい、あの独特の食欲を誘うアレ。紅茶も準備されてるし、良い感じ。


「ありがとう、ロイ。あなたも食べる? メトランさん謹製のお菓子」

「え、ですがこれはお嬢様のために用意されたものでは」

「いいのよ、前の一件、そして最近も、貴方には世話になっているから、お礼」

「……ありがとうございます、お嬢様。お言葉に甘えて、一つ」


 ふふ、気分はまんま、わんこの餌付け。こういうご褒美も上げるからくれぐれも私を恨まんといて……いや、こんな忠犬みたいな顔してる子が裏切るようだったら色々諦めもつくか……はは。


「……メタリア」

「うん? どしました王子様?」


 っと、今はこっちこっち。流石に王子様ほっとくわけにもいかんし……とはいえまだ恨まれるような事はしてないし、必要以上にビビる必要はない。こっちは気楽にいこう。フハハハ、まさか『お前に対し思うところがあってな』とか言われないでしょ!


「この大公家で暮らし、一つ、思った事がある。今も、そう思った」

「はぁ、それは私に対してって、事ですか?」

「そうなるだろう……どうした? そのように滝にも勝る汗など掻いて、何かあったのか?」

「いいいいいいいえ? 決してそのような事はありませんが?」


 やったなぁこれやったぞぉこれどーこで地雷踏んだかなぁやめてくれないか見えない地雷配置とかそりゃ普通だったら無礼討ちになる喧嘩だとかモノ投げたりとかしたけどさでもそれだって子供のじゃれ合いの範疇と違います!?


「うむ……そうだ、それだな」

「へ?」

「その、良い意味で貴族らしくない。なんといえば良いのか、俗っぽいといえばいいのだろうか、別の言い方で言うのならば、貴族っぽさが足りないと言うべきか」

「えっっっっっっっ? なんか急に罵倒か賞賛かよく分からないことされたんですけど?あれなの? 怒っていいのか?」

「うむ、そう言うところだな」


 どう言うところだよ? なに、これは喧嘩改めて売られてるってことでいいのかな?


「お前の相手への態度というものは、表面上はある程度敬語を交えるなど小細工をしていても、根本では大して変わっていない。不思議だと思った」

「おうこれは喧嘩売って……る顔でもないんだよなぁ……うーん」


 嘘ついてたらこんな真っ直ぐ相手の目見れないよねぇ……うわぁ目が、目がすっごい透き通ってる。透明だぁ、こんな赤ちゃんみたいな目ぇ初めてだぁ……


「誰にでも平等に接するというのは、人として、とても素晴らしいことだと思う」

「は、はぁ……」

「それを実に自然に行なっているというのは、実に驚愕するべき事だ……メタリアのその区別を一切しないというそのあり方には、憧憬すら覚える」


 うーむ、まぁ、仕方ないというか。中身が中身だからさ、どうしても現代人だから露骨に身分の差とかを意識するのが難しいというか。っていうか……変に差別的態度取るのも断罪につながりかねないから、まぁ。しない。


「特に、アメリアに対する態度というのは、瞠目する程だ。複雑な事情があり、複雑な間柄であるというのに、彼女との接し方は正に本当の姉妹同然、出自の差を感じさせる事はない……それは、君が彼女を区別していないという何よりの証拠だろう」

「まぁ、そりゃあ、家族ですしねぇ」


 ちょっと前なら向こうの方が特別だからって若干向こうに対してバリバリの恐怖抱いていたけど……それは今はいいか。うん。言っても誰も分かんないでしょ。


「……俺とは、違うと、思った」

「そりゃ違うでしょうよ、私とあなたは別人ですよ?」

「あぁ、いや、そうではなく……少し、聞いてくれるか? まぁ、愚痴に近いものだが」


 おや、珍しい。この家にいる間、質問とかお願いとかの類じゃなくて、自分から話題を振るなんて事、あんまなかったのに……いや、最初の一回以外除けば、これが初めてか? しかも愚痴なんて。


「まぁ、構いませんけど」

「そうか、すまない」


 顔色が全然変わらないから分かりにくいけど、これは……若干顔色が、悪く、なっている、気が……しない、でもない?


「……突如として、自分の弟達が俺より上位の継承者になると決まった。それに関しては、俺には一切の否やはなく、文句もなかった」

「それも中々王族としてはどうなんだと思う部分もありますけど」


 ゴーマン、ゴーヨクでゴーゴー、とは流石に言わんが、せめて『おうさまになる』くらいのさ、欲を持ちなさいよ、幼児レベルでいいから、ね? まあ話から外れてるから言わんけど。


「それで」

「あぁ。俺自身に文句は無かった。しかし、しかしだ。弟達には、その事について何らかの異論があったのやもしれん」

「弟……ディラン様とゼン様が、貴方に何かを?」

「そうだ。弟達は……敵対する、そうだな。露骨に敵対するようになった」


 おっとぉ、ここで思わぬ事実が判明。知りたくなかったなぁ、え、なにこんな若い頃から王族同士ってバチバチしてんの? 姉妹仲云々家族仲云々ってそう言う事?


「仲が良かった、と思う。昔は。しかし私が第一王位継承者を退いてからというもの、その態度は、あからさまに、冷たくなっていったように、感じる」

「勘違い、ってことは?」

「無い。共にいる時間は減り、向こうから近づいてくる事など、全くない……遠巻きにされている、というのは、誰でもわかる」


 ここまで来るとハッキリ分かる、と言うか普段が無表情だから逆に分かりやすくなってると言うか、明らかに沈んでるよねぇ、これ。


「……だが、それも仕方ないことだとは思っている」

「え?」

「二人から見れば……オレは兄でありながら、臆病風に吹かれ争いから逃げ出した卑怯者だ。軽蔑し、厭うのも、当然、だと……」


 ……あーあーあーあーあーあーっ! ホントこの王子様はもー! そんな顔してそんな大丈夫ですよーなんでもないですよー的なセリフ吐くなぁ! そんなしょぼくれた顔されてたらこっちまで凹むんだよ! 自分で話して自分で凹むなバカヤロー!


「シュレク様」

「……なんだ、メタリア」

「言い訳とかどうでもいいんで泣いて喚いて本音を吐き出してください、兄弟仲良くわちゃわちゃしたいんでしょうが」


今でもお嬢様の断罪に対する恐怖は残ってます。薄れては来てますが。

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