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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
一章:技のゴリラ幼少期
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ほのぼの日常、なお妻妾同衾

 私の部屋から、お父様の執務室や書斎を挟んで反対側の奥に、来賓用の客室エリアがある。その中でももっとも扉の細工とかが凝っている(華美とかそういう方向ではない)部屋に、彼はいる。


「オープン、ザ、ドァア……はて、さて?」


 目的の人物の姿が、直ぐには見つからなかった。起きた直後だろうしベッド近くか思ってたんだが、どうやら違うらしい。あ、窓際にいた。


「……絵になるなー」


 朝日が髪を光らせて……マジでエメラルドで出来てんじゃねえかな、あの髪。切って売ったらそこそこの値段にならないかな……おっと余計で俗っぽい思考はここまでだ。


「おほん……シュレク様、朝食ですわよー、ご準備、よろしくてー?」

「あぁ、特にはない。迎え、ありがとうメタリア、すぐに向かう」


 ――この言葉を飾らぬ真っすぐド失礼王子、シュレク様が来て、もう二週間になるだろうか。特にドラマとかもなく、ふっつうに王子様は大公家の暮らしに馴染んでいる。




「メトランさん、今日は午後から、招待した親戚達にあなたとアメリアの事をきちんと紹介します。少し、心構えをしていてください」

「あ、はい。分かりましたわ、奥様」


 朝食にそっくりな顔が二人そろう珍妙な光景も、うん。慣れた。慣れてしまった。というか気にしてたら負けなのでむりくり慣れた。どっちもきれーだなー。


「……」


 お父様は……もう何て言うか、幽鬼みたいだよ。クマやべーし若干頬痩けてるし、メトランさんの代わりに過労死しそうって言われても納得いくわ。


「アメリア」

「あっ、はい。ルシエラおかあさま」

「……ふふ、娘が増える、というのは、なんとも……んんっ、今日の親戚筋との顔合わせには、メトランと、私が同行しますから、落ち着いて、いい子にね?」

「はい。あっ、きょうきていくドレス、おねえさまにもらった、あのドレスがいいんですが!」

「えぇ、構わないわ。あのドレスなら、万が一にも舐められるようなこともないでしょうし……」


 ……想像していた状況と全然違うのよなぁ、今。アメリアが来てからは、お父様はアメリアにかかりっきりになるかと思いきや、家族にかまう余裕すらなくなってきてるし、その分、お母様がアメリアにも私にもかまってくれてるし、それに……


「メタリアさん」

「あ、はい」

「あとで、使用人さんに、私の作った菓子を、届けるようにお願いしてるから、楽しみにしていてくださいね……あなたのお母さんを連れて行ってしまうから、その、お詫びです」

「あ! いえ、そんな! お母様がいそがしいのは、その、理解していますので……大丈夫ですとも、はい!」

「あら、じゃあ、お菓子は私からの純粋なプレゼント、ということでいいかしら?」


 あっはぁぁっぁああああああ撫でられてるぅぅうう撫でられるのは実に良き~、実に良き~、お母様にも匹敵するほどのナデポハンド強強であぁぁぁぁぁあ……いとおかし。


「ひゃみぃい……」

「ふふ、良い子、良い子」


 ちょっと掠れた声が囁きみたいでまた良き……癒される、浄化されるぅぅぅぅう……こんな風に、メトランさんも、私とアメリアをエライ可愛がってくれている。喜び。


「おねえさま! これ、このパン、おいしいですわ!」

「あらそう……ってうわ、本当に美味しいわね。アメリア、ちょっとそっちのバケットにあるのを取ってくれない?」

「はい! どうぞおねえさま!」


 姉妹仲も実に良きかな……変に拗らせてないのはおかしいって? 逆に考えるんだ、そんな風にどこの家庭でも拗れている方が珍しいと……ウチはほのぼの平和妻妾同衾家庭なんだよ! って自分で言っといて爛れてんなこの家……


「――俺にも、取ってくれないか?」


 そして、その家族の朝のほのぼのとした時間に混ざる、唯一のお客様……


「あ、はいシュレクさま、こちらです」

「すまない。メタリア、バターナイフを貸してもらえないか」

「はーい、どうぞ」


 ……というのがしばらく前までだったが、二週間も同じ食卓を囲めばさすがに馴染んだ。家族に例えるなら……兄貴ポジション、だろうか。常にポーカーフェイス常備とかいう微妙なオプションついてるけど。


「このスープもなかなかに……やはり、毒見で冷えていないというのが大きいか」

「今このタイミングでのその発言ンんンん!?」

「む、見事なハンカチーフの投擲だな」


 けど偶に……いや、だいぶな頻度で言葉の爆弾を放り込んでくるのをやめろ。言葉を選べ。自分で思考して話すようになった結果そうなったならもっと思考して?


「問題があったか、メタリア」

「あぁ問題しかねぇんだよ美味しい食事のタイミングでどんなレベルのシリアスをぶちこんでくれてんだよ! ほら、アメリア青ざめてスープにパン落としちゃったじゃない!」

「……何が原因だったのか、俺には、いささか見当が付かぬのだが」

「毒見だよ!」

「……あ、このスープパンによくあう。おいし」




「さ、気を取り直して……どうしましょうか」


 朝食が済んだらお三方は午後の準備に行っちゃったし。爺はお父様と書類仕事だし。残ってるのって言えば、私と王子と、後……私の部屋なら、ロイくんが居るな。


「どうするべきだろうか」

「だから思考停止しなさんなって。あなたがしたい事を言ってくださいな」

「……とりあえず、お前の部屋に行って、落ち着いて話でもしたいところだ」

「了解しました。まいりましょうか」


 はい、ロイくんも一緒確定。これなら、午後まで暇にはならなさそうだ。


本来なら食堂の雰囲気がギスギスで死んでそうですけど、私にそんな雰囲気は書けないので無理です。

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