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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
一章:技のゴリラ幼少期
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無敵、究極、最強! お母様!

「という事で……対策一、お母様に頼る」


 セコイ。

 うむ、自分でも思う。こいつ天性のゴミ野郎かなと。親のスネカジリ虫かなと。

 だがそうではない。決してそうではないのだ。ゲームの展開的には、これは必要な対策なのである。


「まずお父様は、アメリアにメロメロになる。これはどうしようもない」


 かの乙女ゲームでのアメリア最大の味方、それはわが父、ヴェリオ・オーデイン・オースデルクに相違ない。何せ、ゲームの選択肢に『お父様に相談する』という内容が出てきたその回数、全ルート総合計五十一回である。リケジョの記憶力は伊達じゃない! ところで頼りすぎじゃない? アメリア?


「しかも、あのナイスミドルがそれを断った試し……無し」


 権力で無理矢理解決、とかいうダサい真似はしなかった。しかしその代わり、国を切り盛りする大公としての知恵を惜しげもなく振るって彼女の危機を助けてきた。まさにスーパー足長お父様。


「アメリアにはお父様がいる」


 そして私、メタリアには誰もいない……とはならんよ。流石に。そんなんなってたらこんなノーテンキのままいられん。忠臣蔵直前の大石内蔵助みたいな顔しとるよ。外面がゴリラ見たくなっちゃう……。


「……そーっと」


 お部屋の奥を覗き込んでみる。無駄な装飾は、ホホォ、一切見られないと来たか。素材の味を極限まで生かした家具が、最小限。いやあ、無駄を極限まで削ぎ落とした部屋ってのは、まさに美、ですなぁ……あ、カーペットは結構派手だな。


「……居た」


 ああもう、いつ見てもお麗しいことで、プラチナの髪を後ろでまとめて、そっから見えるうなじとか女の私でも興奮するわ。で、これでちょっとキツ目な顔立ち。一種の完成された美しさだよね。


「……メタリア、見ているのは分かっています。入りなさい」

「おふぇ」


 待ってくれ早い、何も言っとらん。見てただけ。どう言うことよ、気配を読むとかしたんですか? 世界観一人だけ違いませんかね?


「は、母……おほん。おかあさま。ごきげんうるわしゅう」


 ヤベェ、パニックで素が漏れるところだった。普通にしてるだけでなんつう威厳……いえすいません自分が勝手にビビってただけです。


「えぇ、ご機嫌麗しゅう」


  まぁ、こんな風にそこ知れぬ人ですよ。我が母、ルシエラ・セドゥ・オースデルク。

 元騎士団長で、貴族なれど過度の贅沢を良しとせず、という座右の銘の元、品の良い貴族として当然のように振る舞う傑物。パーフェクトウーマン。

 そのルビー色の視線が、私の瞳をのぞき込む。


「まどろっこしいのは無しです。メタリア、本題に」

「ぴりぃ」


 鋭い。目も言葉も。やっぱりママンやべぇわ。


「え、えっと……その、わ、わたしにいもうとができる、ときいたのですが」

「そうですね。私も、つい先日、聞かされました……あの人も一人の人間。妾程度何人か囲っているとは思いましたが。一人とは、案外少ないほうでした……」

「ほげぇ」


 こここ後半、小声の部分が凄い。浮気をして『案外少ない』で済ませるとか。清廉潔白のイメージのある女騎士とは思えぬ豪快な発言。理解ありすぎじゃない?


「それで?」

「え、えっと……その、おとうさまは、きっと、そのこに、きっとたくさん、かまうとおもうのです」

「そうね。あの人は家族への情は特に深い。今まで構えなかったことを考えると、妹の方に構うのは、恐らく確実、でしょう」

「はい……それで、ですね」

「寂しくなるので甘えさせてほしいと。分かりました。貴女の珍しく可愛らしい我儘ですから、聞き届けない理由はありませんね」

「はひぃ、そのとおりでひゅ」


 速い。話が速い。さすがお母様、一連の会話だけで有能さが分かる。それでクッソ情けない返事しといて返ってくるのが、マジ大輪の華。要するに笑顔。綺麗。キレイぃ……


「ふふ、あなたも意外に子供だった、という事でしょうか」

「おかぁさまぁ……おかぁさましゅきぃ……」

「私も、貴方の事は愛しています。例え三千世界を滅ぼすことになろうとも、貴方を必ず守りますからね」


 イケメン(時代の革新級)。

 昔……というか前世の喪女時代からどうにも人前でドンくさい私。まあコミュニケーション能力に致命的な欠陥があるから喪女やってたわけで、仕方ないと言えば仕方ないのだが、このバリイケメンお母様に勝てる気がしない。


「だっこしてぇ……」

「ふふ、抱きしめるだけでいいのですか?」

「ふえ」

「膝の上に乗りたいのでは?」

「ふええええええ」


 バレてる。すごい。エスパー。もしかしたら私がクソ雑魚なだけかもしれない。


「良いのですよ。さ、受け止めてあげますから、何処までも預けてください」

「ほひぃぃぃぃおかあしゃぁあああああ」


 もう駄目だ。こんなイケメンな母性とか反則。抱きしめずにゃいられない! さあ許可も貰った所でお膝へドーン!


ふわっ


 あっ(死亡)

 凄い。音が違う。音がもう強い。女性として最上級の擬音が聞こえた気がする。失神する。なにこれ、ここ天国?


「あわわわわわ」

「ふふ、意外と軽いのですね。もう少し食べても、構わないですよ?」

「やだぁ、おかあしゃまにおもいっておもわれうのやぁ」

「貴方が重い? ふふ、貴方は何時でも羽のように軽いのに、可笑しな子。けど気になるなら……私が、痩せるのに付き合いますから、安心なさい」

「やばばばばばば」


 なんだろう。 こんな天国みたいなところで、こんなイケメンバリバリなお母さまに甘えて。私、今一番幸せなんじゃなかろうか。もうお父様いらないくらい。いや例えだけど。


「ふふ、愛していますよ。可愛い娘」


 ……同時に、嫌な予感がしている。

 こんなに完璧で、こんなに無敵で、こんなに不敵なお母さまがいて、私ことメタリアがあんなふうに歪むなんて、絶対にありえない。確信すら持てるわ。むしろこんなお母さまがいるのにあんな風になるとか、羞恥で首を吊りかねない。


ゲームでは描写されなかったけど。やはりお母さまは、ゲームでは何らかの事情で、家にいなかったのではないのだろうか。


 可能性は、ある。

 こういう貴族社会、やってやられてはお家芸。もしかして、そんな中で、お母さまは嵐に巻き込まれ、帰らぬ人になってしまったのではないのだろうか、と。

 ゲームでは、設定すら書かれなかったお母さまの行方。


「……わかるのかもしれない」


 そしてそれは、私が歪んだ一因、なのかもしれなかった。


「何がですか?」

「い、いえなんでも」

「隠し事ですか? ふふ、年頃の娘らしい事、健やかに育ってくれて、私も嬉しいですよ」

「あ、おかあさまやめてなでちゃひゃあぁああおおおおおおおお」


 力強く、優しく、尚且つ丁寧。

 堕ちるわこんな撫で方。完璧で草生える。あ、まってお母さまそれに加えて抱きしめないで、あすなろ抱きやめて、イケ女拳四倍ですか。M禿王子倒しちゃいますか。

 結論、お母さまをすこれ。


皆さん、お母様は好きですか? 理想的なお母様は好きですか?

私の想像するパーフェクトお母様がコレです。エゴまみれで、もうなんていうか……Oh。

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