こっから毎日ゴスロリデザインしようぜ?
「ちょっと休んでくるから……まだお話は終わってないから、待っているように」
「あなたもです。今一度気を引き締めて貰います……傷つくのはあの子達なのですからしっっっかりとお説教をする心構えをしてくださいね」
「はい……」
お父様は一旦リタイア……ってまぁ当たり前っちゃ当たり前か。兜であんなゴツい一発ぶち込まれたら死んでもしょうがない気もする。つーか出血しなかったのがスゲーわ。
「うーむ……どうしようねコレ。予想外に暇になってしまったわ」
さて、アメリアと二人きりという、この空間。まあアメリアはいい子だから、もうそこまで怯える必要もないって分かってるけど、やっぱ落ち着かねぇよなぁ。
「あ、おねえさま。でしたらこのかみかざり、つけてくださいな。きょうはあさからおとうさま……うん。おとうさまにおよばれして、つけるじかんがなくて」
「あー、うん。いいわよ」
とはいえ、こうして頼ってもらうのは悪い気はしないので、お願いを聞いてあげちゃうメタリアお姉さんなのでした。この髪飾りを当たり前のように着けるのか……逞しいなぁ、アメリア。
あ、ちょっと血が残ってる……拭いとこ。
「これを、こうして……良し、大丈夫ね。綺麗に出来たわよ」
「わぁ、ありがとうございます!」
うーむ。やっぱり可愛い。それでこのアクセサリがあんな扱いをされた後のものじゃなければねぇ……ちょっとお顔が引きつっちゃう。
「また言ってくれたら、着けるからね?」
「あ、はい。いつかまた」
「うん」
「はい」
「……」
「……」
……ヤベェこれ、会話が続かない。だってこのタイミングで他に何を話せっていうんだよ。叱られ途中で起きた珍事で中断だぞ、テンションだって謎状態だよ。私が振る? なんだよ、バナナの話でもするか?
「あの、おねえさま」
とか思ってたらナイスアメリアちゃん! 会話に詰まると、そっから状況を動かすのはガチできついんだよ! ありがとさん!
「なに、アメリア」
「わたしは、その、おねえさまがまちがったことをしたとは、おもってません。おとうさまはあぁ……あの、えっと……ともかく、そこまできにすることもないかと!」
「うん。まあお父様のちょっとアレな様子は置いておくとして」
いやまあ今回の一件では結構私は問題行動したと思ってるけど。その辺りは私も懺悔したいとは思ってるよ。行動が割とゴリラだとも思うよ。
「とはいえ、私としても間違ったことしてたつもりはないのよ。うん、本当に」
「おねえさま」
だって、なぁ、あの時。お母様達が捕まったと聞いた時、いやもう何かせにゃならんと思った。具体的な行動なんか考えるより、まずは動かねばならんと思ったんだ。
「性分なんだ。細々考えるのは、結局苦手なんだよね」
うむ。これに関しては完全に嘘ではない。いや考えなしっていうのは流石に無しにしろ複雑にモノを考えるのはそも無理なんだよね。いや最初の方は色々考えて行動してたつもりだけど……もうそれもほとんど意味なくなってきたし。
「だから、考えるのは一旦やめて、全力で走ったのよ。それだけ」
「かんがえるのを、やめて」
「そ。何よりもまずは動こうかなって。あ、真似しちゃダメよこんなやり方」
「……まずは、うごく。なによりもまず」
私の行動に私の思考は追いつけなかった……なんて大層なもんでもないけど。まあ最終的には行動をしなければ思考も何もかも意味はないので、それならと、いっそ思考を捨てて行動しただけだ。
「まぁだから、そこまで私は気にしてるわけでもないから、大丈夫って事。心配してくれて悪いんだけど。でも、ありがとうね」
「あ……はい!」
まあだからこそ、いつかは絶対蹴躓くんだろうけど……というか、アメリアの吹っ飛んだ行動が、多分私の考え無しの行動が引き起こした問題なんだろうけど。まさかアクセサリがあんな使われ方……あ、そうだ。
「そういや忘れてたなぁ……アレ」
「アレ?」
「ちょうど良い、今渡しておくかな……ねー、扉の前の人!」
多分、お目付役を置いていると思われるので、その人に向けて声を張り上げてみる。
「……どうなされましたか、お嬢様」
「あら、爺だったの」
これはアタリだ。多分爺ならアレの場所も分かってるだろう。
「だったら話は早いわね。アレ、持ってきてくれる? アメリアにまだ渡してなかったからね。ここがちょうど良いと思って」
「あぁ、アレで御座いますか。分かりました。ただいま持ってまいります」
「お願いね」
扉の向こうに消えていく爺を見送って、隣の妹ちゃんに視線を向ける。何の事だかわかんない? ちょっと待っててね?
「お待たせいたしました。こちらで御座います」
「オォウ、案外ゴツい箱ね、これ。ラッピングしたのって……」
「御察しの通り、旦那さまで御座います。徹夜をしておられました」
何やってんだあの人……いや良い事だとは思うよ? 家族にフレンドリーなお父さんはなんだかんだ言って貴重だからね。うん。でも限度も必要だと思う。
「おねえさま、これは?」
「あなたへの二つ目のプレゼントよ……開けてみて?」
ラッピングは私の趣味ではないので悪しからず……
「あ、これ……」
「爺、使用人の誰かに手伝ってあげるよう言ってもらえる。アメリアはまだ、着慣れてないかもしれないし、こういうのは」
「お、おねえさま、おわりました」
「見せて頂戴、アメリア」
さぁ、ご対面。扉が開く、少し、いや大分恍惚としている侍女が扉の横に控えている!
これは、これは来てしまっうぅぅおおおおおおおおおおっ!?
「に、にあう、でしょうか」
「ビューリフォー……オービューリフォー……」
「おねえさま!? どうしてなかれているのです!?」
似合う……実に似合う……この、ゴシックロリータドレス! 最っ高だよ君ぃ、一種お人形さん染みた美しさすらあるアメリアに、これはマリアージュですわ! あー黒レースの長手袋、入れといてよかった……! アクセサリに合わせて、十字の柄をスカートに刻んだのもいいアクセント!
「とっても素敵だわアメリア。最高よ。エクセレント!」
「あ、あの……そんなにほめられると……」
あー待って照れないで頰に手を当てないでその仕草は反則ですよ!
「……こんなにすてきなドレス、おねえさまがえらんでくださったんですか?」
「いいえ、私がデザイン……まぁ、要するに形を作ったわ」
「えぇ!? これをですか! すごい!」
まぁ、ね。チートコード打ち込んで引きずり出したようなもんだから誇れる訳ないけどさ、けど、そんなに喜んでくれるなら、卑劣なやり方をした甲斐があるってものだ。
「……わたしのために、おねえさまがかんがえてくださった、ドレス」
うんうん。気に入ってくれたようで実によかった。作った買いがあるって……
「いっしょうの、たからもの、です。わたし、いくつになっても、てばなしませんわ」
んン……あっ……ふぅぐん……かわ……
「めぇきらきらしてる……むり、くぁわ……」
「おねえさま!?」
もう発言が可愛い。感極まってる表情が尊い。畜生私の妹がこんなに可愛いとは、下手なヤローになんか渡したくねーべや。
「可愛い……くぁいいわ、アメリア」
「お、おねえさま?」
あーぎゅってする、ぎゅうぎゅうする。お母さまとは違った意味で愛おしい。この子が妹とか誇らしさ超覚醒ですわ……もうこの子に近寄る男は不審者、位の気持ちで行こう。片っ端からなぎ倒してくれる。
「……ふたりともかわあああああ! ごふ」
「「ぴゃっ!?」」
とか言ってたらマジで不審者!? あ、いや違うわ……お、お父様どしたん? って、なんか頭から赤いものがぁあああ!?
「……自重なさいあなた。私も、少し危なかったけど」
お母様も……なるほど、お父様のオーバーリアクションを阻止されたのか。あー、でも止めるにしても、さすがにその手に持ったモーニングスターはまずいと思われます。
金髪赤目の美少女にゴスロリ服……正義の一つだと思います。