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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
間章:技のゴリラ初等期・休暇
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土下座と母親

 ……心を乱すな私。姿勢を維持しろこの美しい姿勢を崩せば、私の誠意というモノは崩壊するに違いない。いいか。明鏡止水だ。明鏡止水を心がけて、大人しく。だ。


「め、メタリアちゃん!? どうして!? どうして急に床に頭を!? ちゃ、ちゃんと寝てないと元気にならないわよ!? いえそうじゃなくて、先ずは頭を上げて!」

「どうか……どうか……お見逃しを……母上様……我が身にお慈悲を」


 まるで家族を疎み、策略を練っているかの如きじゃないか。ご家族のいない空間を喜ぶとかさ。こんな所で悪役令嬢認定とか嫌です。お願いですお母様。話を、お話を聴いて頂けはしませんか……!


「お、お慈悲? えっと、良く分からないけど、兎に角何もしないから、大丈夫、ね?」

「な、何もしない……お話も聞いて下さらない!?」

「いえそんな事は無いわよ。というか、お話を聴いて欲しいの? じゃあ、先ずはそう言わないと。頭を下げてるだけじゃ、分からないわ」


 あっ、そういえば……だ、ダメだ。パニックになってブレインがオーバーヒートでノーセンキューだ。どうした私、なんでルー語をマスターしてる。クールになるのだ。


「話をしましょう」

「わ、分かりました……なぜそんなに畏まった言い方で、背筋を伸ばして、立ち膝?」


 いいえお母様。こちらは日本の伝統的な謝罪姿勢、SEIZAでございます。立ち膝ではございません……慣れていないからかすっごい辛いけども。


「私は、我が家族に一切の不満がある訳ではございませぬ。天地に誓って、誠の事」

「は、はい……えっと、そ、そうなのね? 急にそんな話になったのかは、えっと、そのね、私にはサッパリと分からないけれど」


 お戯れを……私にとって致命的な一手を、無邪気に指した貴方が……ふふふふ。


「ご母堂に置かれましては、もうお分かりでしょうに」

「ご母堂!? ご母堂って何!? メタリアちゃん本当にどうしたの!?」


 全く……誤魔化すのが本当にお上手な事……いや、それにしちゃあメトラン母様の顔に一切の余裕がないんだけど。あれ? これ本当に分かって言ってるの?


「……えっと」

「メタリアちゃん、私も答えてあげられる事には答えてあげたいのだけど。分からない事は何もしようがないのよ。ごめんなさい」


 ……はー。


「すいません、ちょっと腹掻っ捌いてきます。赤い花裂かせますね」

「ちょっと待って、本当に落ち着いて! さっきからどうしたの!? 変よメタリアちゃん!? 一体どうしたの!?」


 分からない! 私もどうして変な勘違いしたのか! 確かに直前のメトランさんの物言いが恐ろしすぎたのは……いやそこまで恐ろしかったか? ちょっと冷静な感じにしてはいたけどさ。


「……いえ、その。私、皆の事が嫌いになったとかじゃなくて、だから」

「あ、あぁそういう。成程ね。そう思われるのが嫌だったのね。それであんなに必死になって……大丈夫よ。そんな事は思ってないから」


 ……酒が欲しい。いっそ飲んで記憶を飛ばしたい。ひぃい、恥ずかしい。


「ごめんなさいね、不安にさせるような言い方をしてしまったかしら」

「い、いえ。お母様は悪くないんです。私が、ちょっと大げさに反応してしまっただけで。お気になさらないでください」


 警戒するのは被害妄想に取りつかれるのとは違うっていう話。頭をもう少し回せ私。


「ちょっと気になっちゃったのよ。なんだか、悪戯を成功させた子みたいな顔してるなーなんて、ね。だからそこまで気にする事なかったのに」


 あ、その辺りの勘は鋭いんですねあはははは……はい。めっちゃ悪だくみしてました。申し訳ございません。


「正直、無意識だったので自分では分かりませんけど。お母様が見た、と言うのであれば疑う意味もありませんし……」

「あらそう? そうなの……じゃあ、多分笑ったのは間違いなくても、悪戯っ子に見えたのは気のせいだったのね。私の勘も鈍ったからしら」


 いいえ。鈍っておりません。めっちゃ当たっておりますが、アレウスと私の一件については、正直メトランお母様には話し難く……だってめっちゃ倒れそうじゃん。ショックとかでさ。少なくとも私は、自分の子供がそんなヘビーな話してきたら倒れる。


「ごめんなさいね、騒がせちゃって」

「ああいえ、私が原因ですし……あ、ちゃんと寝ないと」

「そ、そうね……さ、私に掴まって」


 ……気まずい。凄く気まずい。


「あ、あの。えっとですね」

「……ごめんなさいね。メタリアちゃん。なんだか、色々困らせてしまって」


 へ? いや別に。お母様が私を困らせたなんて、むしろ逆では?


「私の所為なのに、気にさせちゃって。ホント、私ったらダメねぇ」

「い、いえ。さっきの下りはお母様のせいでは」

「そうじゃないのよ……私が、貴女になんであんな風に笑ったのか、聞いたでしょ?」


 えぇ。はい。


「本当は、聞かなくても良かったのに、聞いてしまったのは……ちょっと母親っぽい事がしたかったから、なのよ……私が、ね」


 母親っぽい事?


「――最近、ちょっと自信が無くなって来てね。お母さんとしての」

「メトラン母様……?」

「ちょっとだけ、お話聞いてくれるかしら? メタリアちゃん」


土下座の初めの一回は両親のどちらかへ向けて。あると思います。

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