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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
一章:技のゴリラ幼少期
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幕間:妹兼主人公から見たお嬢様

 お母様に、あなたのお父様は大公様なのよ、と言われた時、驚いた。

 だって、大公様といえば、この国で、王様の次に偉い、とっても偉い人だ。そんな人の子供、なのだという。


『急な事で驚かれたでしょうが、あなたのお母様は偽りを申して居るわけではございません、レディ……真実として、受け止めてください』


 立派な服に身を包んだお爺さんも、そう言っていた。

 良くは分からなかったけど、それでも、何か、何かが変わって行くような、予感が。のんびりと、お母様と一緒にいるだけの今では居られないという、そんな気がした。




「さぁ、どうしたの? 遮二無二、突っ込んでらっしゃい」


 でもだからって、こんな状況になるなんて、誰が想像できたんだろう。というか、ただの子供の私には、無理でした。ごめんなさい。私のもう一人のお母様、お父様の奥様の大公妃様、とても頑張ってらっしゃいます。


「ぐっ」

「げびゃっ!?」


 通路につまってる人たちに、しゅっ、しゅっ、と。線が見えたと思ったら、どんどんバタバタ倒れていっちゃいます。とても、とても怖い事が目の前で起きている。と思うんですけど、そうとは思えないんです。


「流石、大公妃様……悪漢相手に一歩も怯まず圧倒的に」


片手で軽々と重そうな剣を振るってらっしゃいます。とてもカッコよくて、そっちに目がいってしまって、そして、戦っていても、とても、華やかに見えますから、だから、平気に見えるのかもしれません。

……でも、それだけじゃ、ないとも思います。


「お母様控えめにいってヤベェよ……軍神だよ軍神……」


 私の隣で、一緒にお母様の手に抱かれている、急に出来た、私のお姉様。

 最初に会った時とは全然違う。おしとやかなお嬢様、だと思っていたけど、お屋敷で会ってみたら、とっても活発だった事がわかったお姉様。


『さ! おねえさまに、なんでもいいなさいな!』

『さぁさぁさぁさぁいきますわよ走りますよ全力ダッシュでゴーゴーですわー!』

『ご、ごひゅぅ……ぜひ、ぜひゃぁ』


 なんというか、ちょっと残念だった。はしゃいで、私を案内して、でも結局疲れてしまって部屋で眠ってしまって。でも、冷たくされるよりも全然よかった……と、思っていたらお母様が攫われて。


『え、えっと、その……だ、大丈夫よ! 私がなんとかするから、まーかしておきなさいな!』


 その時も、お姉様は、真っ先に飛び出したのだ。

 まるで嵐のような人だと思った。突然現れて、周りを巻き込んで、散々暴れまわる。

 そんなお姉様について行こうと思ったのは、どうしてだろうか。


『それじゃあアメリア、少し留守にするわ。大人しくしていてね』


 置いていかれる、と思った。何かをしようと走り出したお姉様に、置いていかれてしまう。それが、無性に怖かったのだ……あ、なんかちょっと赤く汚れた飾りが転がってきた。


「ひえっ……争いが激しくなっておられる……こわ」


 お姉様が怯えている。でも、別に怖がる事はないと、思う。大公妃様は、私たちを助けようと戦ってくださっているのだから、かっこいい、とすら……そして、それはお姉様にも言える事だと、そうも思うのです。




 お母様達の元にたどり着けたのに、助けに来た私たちは動けなかった。

 上手に助けないと、私たちも危ない。だから、危なくない時を待って助けるんだって。


「お前、本当は弱いんじゃねーのか?」

「……は?」


 その間に大公妃様がバカにされ始めた。その時のお姉様の表情は、凄まじかった。顔色があっという間に変わって、真っ白になった。本当に怒った人の顔だった。


「なんも出来ない、負け犬ってことじゃねーの?」

「ころしてやるクソ野郎」


 大公妃様をバカにされて、お姉様は、どれだけ悔しかっただろう。私だって、腹が立ったのだから、お姉様は、一体、どれほど。


「ゴラァアアアアァァッ! この腰抜け三下野郎……お母様を、バカにしてんじゃないわよぉおおおおおおっ!」


 きっとそのまま我慢していた方が良かったと思う。けど、それでも大切な家族の誇りを傷つけられた事が、我慢できなくて、炎みたいに怒るお姉様は、その、背中は。

 今の大公妃様に負けないくらい……いや、きっと大公妃様よりも雄々しかったと思う。




「おわぁあっ!?」

「手が…………おれ、の、手がぁ!?」

「どんどん来なさい……無駄な時間を過ごすのは、苦手なのです」

「うっわぁ、手がズッタズタだよ……ありゃ一生食事できないぞ」


 さっきとは全然違って、普通の女の子にしか見えないお姉様。でも、この人も、やっぱり大公家の血を引く、とてもかっこいい、貴いお方。

 急な事だったけど、でもこの人の妹になれるのは、きっと、とても幸せな事だ。


『フフッ、そうしんぱいせずともへいきよアメリア。それより、もうすこしむねをはってあるきなさいな、ここは、あなたのだいにのいえなのよ?』


 第二の家、そう、お姉様は始めに言ってくれた。

 大公家のお屋敷で、そんな風にお姉様と一緒に暮らせたなら、それは、とても……あぁ分かった。いいや、分かるのが、遅すぎた。

 ここに来た時じゃない。きっと……


『まぁ、ずいぶんと、あさましいことをされていることで、そちらのおさんかた』


 初めて会って、助けてもらった時。あの時にはもう、私はきっと……メタリア様に、お姉様に、きっと憧れてたんだ。立派で、堂々としてた、お姉様に。


「……? どうしたの?」

「いいえ、なんでも」


 この、とってもかっこいい、自慢のお姉様に……あ、お姉様の顔に何か赤いものが。


「ほぎゃあああああああぁぁぁぁ肉ヘエェンっ!?」

「お、おねえさましっかり!?」


 ……ちょ、ちょっと元気すぎるかもしれないけど……うん。こんな風に、逞しく、華麗に成れたら、いいなぁ。


主人公視点を、オールひらがな、か、漢字を交えるか、最後まで苦悩しました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公さん、凄く残念臭いですが、もしかしたら案外に格好いいかも!
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