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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
間章:技のゴリラ初等期・休暇
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知っている天井だ。

 ……ぬぐぐ、ヤメロ、ヤメテくれ……そこまで調べたかった訳じゃないんだ……もうSAN値は限度いっぱいなんだ、今度の判定は潜り抜けられねぇんだよ……その壺は完全に地雷だって分かってんのに、畜生、こんな隠しトラップ仕掛けるとかGM汚すぎる。


「――リアちゃん、――タリ――しっか――医者――」

「――丈夫――必ず――処置は――後はお嬢様の――きっと――」


 つーか可笑しいでしょう……探索でクリティカル出したら明らかに怪しい壺出てきてキャンセルも不可とか、何なんその謎クリティカル対策は……は? 六ダイス? おのれGM覚えておれ、今度は……


「まけ、ないからな……?」

「……メタリアちゃん? メタリアちゃん!? 分かる!? 私よ! お母さんよ!」


 メトラン母様。それに、この天井は……我が家だ。間違いない。って事は私、帰ってきたのか。あぁ、そうか……生き残ったか私……はぁー! っしゃおらあぁ!


「メトラン、かあさま……はい、わかりますよ」

「あぁ良かった……! 本当に……心配したのよ……っ!」


 むぎゅ……ハグが柔らかいからあんまり苦しくない……寧ろ癖になるなこの触り心地はムフフ……まて、まるで私オッサンみたいじゃないか。いやオッサンっぽい女子が居ても全然いいと思うが、品が無いのは流石に頂けん。


「はぁ、峠は越えていたので大丈夫だとは思いましたが、それでも目覚めて下さるとホッとするものですな……ご無事、とは呼べませんが、目を覚まされて、なによりです」

「……わたし、は? どう、なって、たの?」

「危なかったですよ……血を流し過ぎていた上に、とても乾いていらっしゃって、体力の消耗が激しい。正直、峠を越えるまでは生きた心地がしませんでした」


 え、そんなピンチだったの私……いや、出血多量と熱中症のダブルパンチだろ? 寧ろよく生き残ったよホント。子供の体力の無さ侮っちゃいかんからなぁ。


「兎に角、いま旦那様をお呼びいたします」

「……お母様……ルシエラ、お母様は?」

「……その、ですね」

「ルシエラさんは……あの、ね? ちょっと、その。調子が悪いみたいなの」


 ……ごめんメトランさん、誤魔化すの一歩遅かった。見えちゃったんだよ。隣をなんでか見たお医者様、その視線の先に……なんか、盛り上がってる布団が。後、『メタリアがんばるのよ……今、母が参りますからね』とかいう唸り声が……はい。


「……お母様、どうなされたんですか?」

「えっと、お嬢様の体調を、ご帰還途中で聞かれるや否や、気を……」


 そうですか……心配してもらえてうれしいやら、申し訳ないやら……後で土下座でもしようかなぁ。いや、いきなりやられたら困惑するだろうし、普通に謝ろう。うん。


「と、兎に角旦那様を呼んでまいりますので! 失礼いたします!」

「あ、はい。お願いします」


 うーん。考えられはするけど、口が回らん。こういうのって本当にあるんだねぇ。疲労でマトモにどうにもならんとか。カカカ。いやぁ貴重な経験が出来たかこりゃあ。


「――ともあれ、良かったわ。目が覚めて」

「はい……あぶなかった、と。しょうじき、そういう、の、無くて」

「あぁ、無理にしゃべらないの。大人しくしてなさいな……そうだわ、あの子たちに教えてあげないと……じゃあメタリアちゃん、お大事にね……兵士さん、くれぐれもよろしく」


 え? あぁそうか、アメリアとアレウスと、後シュレクか。はい、行ってらっしゃい。


「……良く生き残ったな、私」

「ホントですねぇ、お嬢。学校でも襲撃食らうわ俺に攫われるわ、帰って来てからは馬に攫われ命がけで熊と一対一、酷いもんじゃないですか。呪われてるんじゃ?」


 ……聞き覚えがあるぞ、このオッサンボイスは。


「――無事の就職、おめでとう、って言うべき? 元誘拐犯さんよ」

「どーも。まぁ、今のところは針の筵。お優しいメトラン奥様からも苦笑いですよ。これから働きで認めさせるつもりですがね」


 いや、こんな状態の私を任せられてる時点で、結構働きで見せつけてんだろお前。ホント食えないやっちゃ、この誘拐犯。


「後、誘拐犯って言うのは止めてくださいや。一応カチスっていう名前があるんで」


 え? 某国親衛隊がなんだって? いやそれ全然関係ないだろいい加減にしろ私。


「じゃあカチス、いや、呼び捨てはちょっとどうなのかしらね」

「ちゃんと呼ぶなら好きに呼んでくだせぇや。そういう呼び方にはあんま頓着はせんで」

「じゃあ……カッちゃん」

「……いや、お嬢が構わないならそれでいいですけど」


 せっかくだからたっちゃんも欲しいかなぁ、なんて。それだとたっちゃんが亡くなるからダメか。いや亡くなるのカっちゃんだっけ?


「じゃあ改めて、元気そうね? カッちゃん」

「えぇまぁ。良い思いさせて貰ってます……未だ雑用係と兼任ですけど」

「あら、キツイ扱きって奴? 白鯨騎士団にもあったのかしら、そういうの」

「扱きっていうより、当然の処置でしょうよ。自分達が可愛がってるお嬢を誘拐したクソ野郎がその周りで働こうってんだから。徹底的に従順になるようにしても普通では?」


 私の事、酷い扱いした、とかじゃないんだから良いと思うんだけどねぇ。


「――あまり寄るんじゃないぞ、貴様」

「おう、怖い番犬のお出ましかい……お嬢は俺の雇い主の娘だ。何もする訳ないだろ」

「俺もその手合いだ。故にあまり言えた義理ではないが、それでもあまり信用する訳にはいかんからな」


 あ、ロイ君だ。今日は確か……どっか行くって言ってたけど。


「王子、此方の部屋です」

「あぁ……目が覚めたか。メタリア」

「ん、一応生きてるよ、シュレク」


因みに冒頭、地の文の一連の流れは作者の実体験です。

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