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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
間章:技のゴリラ初等期・休暇
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TRPGにてクリティカルは基本

「……ぁ……ぁ……っ!」


 投擲。命中。移動。さっきより、ちょっとこっちに近寄ったか。もう少し奥へ再誘導する必要がある。だが、これでもう十投目は軽く超えた。腕が持つかも問題になってきた。投擲技能は85はあるはずだからそうそう失敗は……いやこれTRPGとちゃうわ。


「思考がおかしくなってきている自覚はある。さっきから、血と汗が全然止まらん」


 水分も確保できないうえに、血も止まらないとなれば、貧血、熱中症を併発しても全然不思議じゃないのよね。お、死? 死? 全く予想外しない方向からの死?


「……小声で喋るしかないから、助けも呼べない……でもこのままでも死ぬ可能性高」


 しかも夏だからね。日はそう簡単に沈まない、暑さはそう簡単には収まらない。暗くなっても困るっちゃ困るけど。夜目なんざ効かねえから獣共に囲まれてパーティの主食だ。


「……っ」


 後ヤバいのが、手ごろな感じの小石が確実に減ってきている。手で持てて、投げてぶつかればそれなりの音を立てる位の重さはある。そんな手ごろな奴が。


「……近くに、ない、だけだけど……でも、それを拾う、間に……」


 熊に近寄られたら、私は柔らかいステーキに早変わり。仔馬は血も滴る桜肉ユッケだ。すげぇ! 謝肉祭見てぇな肉重視メニューだな! 謝肉祭ってそういう意味じゃないと思うけど、こういうのは雰囲気だ。


「馬の方は……おや?」


 おい待てこの野郎。ちょっと寝ようとしてねえか? いや寝てるねこの子は。楽しく駆けずり回って楽しくなって疲れて倒れて、でそのままおネンネか。いやーマジで子供みてぇだな! 殴りてぇや!


「――呑気してくれちゃって」


 あ、またこっち来た……奥へ帰れすっとこどっこい! お、クリティカル叩き出したかな? 結構良い感じで奥まで行ってくれた。ラッキー……が。


「……ずっとそんな事……言ってられる訳でも……無さそうだねぇ」


 気が付いてたけど。さっきから、ちょっとずつこっちへ……いや、ちょっとずつじゃねえな。石を木にぶつけて気を引いてなければ間違いなくこっちへ一直線だろう。


「はぁ……冗談じゃないよホント」


 気付かれてる。こっちになんか居るって……あぁああああああああ! この世界の神出てこい! ぶん殴ってやる! 徹底的に精神的な凌辱を加えた挙句『私はメタリア様を呪いました 大変申し訳ありません』って言わせてやる!


「クリティカル四回くらい出せばいけるかな」


 もう事ここに至って声を抑える必要性は死んだ。もう匂いで特定されてるんだから。


「つっても、大声はNG……小石の音に反応する程度で」


 あ、やべ。予想よりも距離行かなかった。当たってねぇ……良し落ち着け私! ちゃんと全力で投げれば届くはずだ。まだいける。まだ時間は稼げる。頑張れ私。


「……っ!」

 良し、ちょっと奥の方の木に当たった……! 反応有り! よーし、そのままもうちょっと奥へ行ってくれ~無事に行ってくれ~頼むからこっち来るんじゃないよ。


「なら……あっ」


 やばい。やばいやばいやばい! 周りに石が無くなった! なんてタイミングだ! 誰でも良いから弾持ってこい馬鹿野郎! 何て言っても近くに誰も居ねぇわっはっはっはっはっはっはっ! 呪ってやる!


「……っ、えっと……その、えっと……あ」


 有った! ちょっと離れてるけど……いや大分離れてんな! アレがこっち来るまでに間に合うかアレ!? 大分ふら付いてるし!


「……やるしかない。というか、やらなきゃ、死ぬ」


 後に残す余裕なんざ残ってない。未来までも全て投げ打って、今を生き残る時間を稼ぐのよ! ダッシュしろダッシュ! あ、駄目だふらっと来てる。走るのも無理、あちょ待って足元が覚束ないない、あっ、だめ、たおれ……


「っ! あっ……く」


 ……痛い。けど、何とか、石は掴んだ。よし、後はこれをなげれ……ば。


「……」


――グルルルルルル


 ちゃっちゃっちゃっちゃっちゃーあるぅひー、しにかけてー、くまさんとー、しきんきょりー。わぁ、すっごい険しいお顔をされてらっしゃるねぇ熊さん。ねぇ、もうちょっとその、落ち着いてさ、優しい顔しましょうや。


「――ごめんね、アメリア、アレウス」


 姉は熊のお夕飯に成り果てるようだ。美味しかったかどうかを熊さんに訊いてみてくれや。会話出来れば、の話になるけど。


「――お嬢様! 伏せて……るな! 回収!」

「放てっ! 兎に角撃ちまくれ! 熊相手に油断をするな!」

「殺すつもりでやれ! それで撃退出来れば御の字位で行け! 寧ろ殺せ!」


 っぉお!? このビィンって音は……!? 矢の音か!


「相当の大物ですよ! 隊長!」

「兎に角数だ! 最悪近寄ってきたなら火矢を使う! 準備はしておけよ!」


 は、白鯨の人達! たす、かったぁ……! って火矢!? 森の中で!? いやそれはマズいでしょ!? 森が墨になっちゃうから!?


「良かった……奥様の御忠告通りだった! 流石は奥様だ!」

「今言ってる場合か! ってお嬢様!? お嬢様が出血している! 急いで医者の元へ運べ! 走れ!」


 あ、まって、私だけじゃなくて……その。


「う、まも……いっしょ、に……」

「わ、分かりました! 馬も回収しろ! 急げよ!」

 

 よ、良かった。なんか意地になって助けた仔馬ちゃんが無くなったら私の努力が悲しい事になっちゃうから。ごめんなさい。疲れるとは思うけど、頑張って。

初期値でも全部クリティカル出せばクリアできる。これは基本。

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― 新着の感想 ―
[一言] システムによってはクリティカルしても防御抜けずにダメージ通らないから
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