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力のゴリラ妹と技のゴリラ私の悪役令嬢物語  作者: 鍵っ子
間章:技のゴリラ初等期・休暇
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幕間:王子は大変

「……」

「お、お嬢様ぁあああああああああぁぁぁぁぁっ!? い、一大事一大事! 誰か! 誰でも良いから白鯨騎士団の人を応援に! 急げぇ! お嬢様が攫われた!」


 うむ。彼奴は騒動に巻き込まれる事が多すぎるとは思う。俺と出会った頃からそういう兆候はあったが、ここまでその勢いが伸びるとは誰が想像しただろうかと。正直一種の才能ではないかとも、今は考えている。


「っと、ふむ。一人で降りるには、こうすればいいのか……さて」


 だがその才覚……なのか良く分からんものに振り回される者達も確かにいる。そう言う者たちのケアをするのは、俺の役割だろうと思う。


「あわわわわわ」

「ね、姉さん落ち着いて! 兎に角、僕らも探しに行った方が……」

「それは止しておけアレウス。お前も迷子になって、迷惑をかけるのが精々だろう」

「お、王子……」


 二人分の迷子など面倒見切れるかも分からん。同じ場所にひと塊、なら話も違うだろうが、全く別の場所で迷子になったりしようものなら探す労力は二倍などでは済まない。

「でも! メタリア姉さんが! 初めての乗馬だっていうのに!」

「とはいえ俺達が向かってもどれだけ力になれるか、高が知れている」

「そ、それは……」


 多少の労力程度にはなろうが、それも場所を選べば、の話だ。子供の俺達が活躍できるような場所は、酷く少ないという事。

「それに直接やる事はなくとも、知らせることは出来よう」

「知らせる……あっ!」

「兎に角屋敷中を回るぞ。出来るだけ多くの人物にこの状況を知らせねばならん」


 大公家は決して無能な家ではない。危機を知らせれば、何かしらの一手を打つのは疑いようがない。とはいえ、余り頼りすぎるのも、良くないとは思うが……


「全く、王子と言う肩書だけで、己一人では何も出来ないのが、悔やまれる」


 ……うむ。そんな感じで、大公殿へ知らせる事は出来た。あぁ、無事に出来た、が。


「……白鯨騎士団は賊討滅の為に出払っている?!」

「えぇ……先の賊共、どうやらアレで最後では無かったらしく……地上に出ていた根を地中深くまで焼き尽くしたに過ぎない。その奥には、最後の残りが居た。規模だけなら先の奴らより大きい故、念には念を入れ、全軍を率いて妻が……」

「なんという、何もこんな時に」


 いや、賊討伐も大公家の重要な仕事ではあるが……くっ!


「しかし、事実なのですかそれは」

「乗馬の練習を見ていた五人が証人となります。俺やアレウス、アメリアの証言で不足と言うのであれば、近くにいた馬番の者二人も」

「いいえ、そこまで揃っていれば疑う余地もないでしょう。分かりました……」


 しかし、そう言った荒事や、外での活動を得意とする白鯨が居ない今、最高率での探索は、不可能なのではないか……いや、大公家の力を疑っている訳ではないが、それにしてもここまで悪い流れが重なるのは……本当に、呪われているとしか。


「……」

「王子、顔色が……そこまで、我が娘の事を考えて下さるとは」

「当然です。俺の……彼奴は、俺の婚約者ですから。無事に帰って来てもらいたい」


 心配にならない、と言えば嘘になる。無事に終わればいいと、切に願う。彼奴は『アンタはあんまり感情出さないわねぇ』とか言ってたが、そうでもないのだ。


「メタリアは、幸せ者ですな……本当に」

「えぇ……そこまで、心配してくれる両親を持っている事、幸せだと思いますよ」


 俺から見ても分かる。平静にふるまっている積りだろうが、既に顔色が土気色だ。なまじ声色はあくまで冷静なように聞こえるから、もはや不気味だ。


「いえ、そんな……兎も角、妻に早馬を出さねばなりませんね。討伐を終えたら、出来るだけ早く戻ってくれと」

「そうですね。所で大公殿、手と足が揃って出ていますが」

「ははははは、何をおっしゃる王子。まるで私が気が動転して正気を失い異常な状態になっているのを全く自覚できていないような物言いをなさる」


 自己分析が出来ているのは見事だが、それを自覚できていない辺りは駄目だな。取り敢えず誰かある。あぁ、そうだ。大公殿がご乱心だ。寝かせて差し上げろ。


「あぁお前たち、大丈夫だよ、私は全然平気だから」

「目が白目になっている時点でもうダメだと思われます大公殿。今は寝て下さい」

「白目ぇ? そのような事ありませんよ、ははは。アレ可笑しいなどうして目の前がみえないんだぁ?」


 白目をむいているからだと思う。取り敢えず今は寝ていてくれ。


「……旦那様を寝かせてしまいましたが……ど、どうしましょうか王子」

「俺が指揮を執る……訳にもいかんか。俺はあくまでこの屋敷では他人。家長に近いものが命を下すのが最良だと思うが」


 しかし、ルシエラ殿は出払っている。戻るのにも、間違いなく時間がかかる。そうなると、最も家長に近い、今、屋敷に居る人物は。


「ヴェリオ! メタリアちゃんが行方知れずって……あら?」

「……そういえば」


 この方が居たな。アメリアの母君。俺は余り顔を合わせた事が無かったが……メトラン妃。いや、大公妃と呼ぶのが正しいのか? まぁ今はどうでも良いか。


「王子?」

「メトラン殿、少し、俺にお付き合い願いたい」



頑張れ男の子

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