努力は空回りする(一部のみ)
「……そういえば、さ。お前仔馬って言ってたな。確か……親御さんとは、私会った事あったんだねぇ。今から考えると。っていうか、何。お前ら一族は私に何の恨みがあるの」
ものすごい勢いで誘拐されたんですけれども。すいません。もう楽しそうに駆け回るせいでね下りれないし、逃げらんないし……ホント、あの。降ろしてください。
「いや、ブフルルッ、じゃなくてさ……あの、歩く速度を上げないで、下げて……」
さっき下手に意地を張ったのが悪かったのか……
「お嬢様、いいんですか? 心配であれば、他の馬に変えますが?」
「大丈夫よ。こんな事で一々怯えて、逃げ出してたらキリがないし、迷惑をかけるだけでしょうに。ちゃんと手綱も持ってもらうし、大丈夫。さぁ、やるわよ」
まぁ不安ではないと言えば嘘になるけどさ……ここで退いたら女が廃る、ってね。いなせな姉である為に……あと、普通にお馬さん乗りこなせるようになりたいし?
「……(チラッ)」
「姉さん! がんばってー!」
「お姉さま~! お姉さまなら出来ます! 自分を信じてー!」
アレウスは兎も角、アメリアはなんか最終決戦みたいな事を。これ最終決戦どころか始まりの村段階だからね? 言うてそこまで苦労するような場所でもないからね?
「妹様、弟様のご期待に応えねばなりませんね」
「えぇ。お姉ちゃんだもの……よい、しょっと!」
しかし、こんなミニサイズの鞍なんて良くあったもんだ。普通に考えれば、大人が使う奴を無理くり使って練習する……位かと思ってたけれど。
「じゃあ、初めは私が手綱を引きますので、馬上で揺れる感覚を覚えてください」
「えぇ、分かったわ」
……おぉ、これは。なかなか。まぁ、当然ながら車に乗る感覚とは違う。バイクに近いかとも思ったけど、それも違うな。
「どうです?」
「えぇ、コレは一人で乗って見ないと分からない感覚ね……昔はお父様と一緒に乗ってたからそこまで、感じる事も無かったけど」
動くたびに脈動する背中の筋肉の、独特の動きが、股下からガッツリ。別の生き物に乗ってるって感じがするじゃん。ケツが死ぬって感覚も、分からんでもない気がする。
「凄いわねぇ。確かに、これは乗るのに大分慣れが必要になるわ」
「別の生き物に乗って移動しようっていうんですからね。本来なら絶対にない事をやってるんです。そりゃあ当然ですよ。逆に初めから出来てる……」
? どっち見てる……あぁ、そうか。シュレクの方を。
「あの方が、異常なんですよ。王族の素質かどうかはサッパリですけど? ホント、驚きと言いますか。粗削りですが、人馬一体っていうものが、理解できている」
「へぇ……さっすが我が婚約者様、って所かしら?」
「才能で説明できる範囲を逸脱している気もしますが……まぁ、それはいいでしょう」
ま、今は私の練習に集中しないとね。手綱を掴んでもらってても落ちる時は落ちるし。
「仔馬でも揺れるものねー。揺れ、あんまりないと思ってたけど」
「そりゃあ生き物ですから、サイズが小さいからと言ってそんな揺れが小さくなるようなミラクルありえませんよ。だから油断してると、振り落とされたりなんざ、ザラです」
馬を習う年齢はまちまちらしいとは聞く。その話がマジだとすれば、普通に仔馬から振り落とされて頭カチ割れる子供とかも普通にいるのかなぁ?
「まぁ、普通に居ますね。騎士の子、貴族の子、平等に、年に十人くらいは」
「そんなに!?」
「多い時なんか三倍は亡くなりますよ?」
なんで君はそれを知ってるんだろうか。君、大公に雇われてるんだよね? 他の家の人達の事情まで知らんはずでしょ? 何? 馬番ってそういうネットワークあるの?
「まぁお嬢様はそんな事にならないように気を付けてますから、大丈夫……とは言い切れませんが、まぁ出来る限りの事はしますよ」
「微妙に不安煽るのはやめてくれないかしら。大分私、乗るの嫌になったわよ」
「大丈夫ですって。これでも長い事、馬と付き合ってますから」
じゃあ大丈夫だって言いきって頂戴よ。微妙に不安の種を残さないで……まぁ、今の所暴れっぽいお馬も、この人に手綱退いて貰ってる間は、落ち着いたもんだから大丈夫だとは思うけど。
「さぁて、ちょっと速度上げましょうか。ちゃんと感覚掴んでくださいね」
「りょうかーい。あ、ちょ、そんなに早くしないでまってあわわわわ」
すげえ揺れてる揺れてるがくがく腰に来るからストップストーップ!
「馬っていうモノの動きを掴まないと。がくがく揺られるだけじゃなくて」
「アンタ馬の動きは結構あるって自分で言っておいてあわわ」
「それでも無理矢理に慣れるんですよ。ホラ。頑張れ。頑張れ」
何と雄々しい頑張れコールか。大きいお友達大号泣間違いなし。
「っく、いいじゃない、やってやるわよこん畜生……!」
ただ座ってるだけじゃダメだ……っ! バランスを保つように、変な姿勢してると余計にケツが痛くなる……!
「よーし、良い感じですよ、その調子」
「……っ!」
馬はビビりだ。あんまり大きい声は出しちゃいけない……落ち着いて、落ち着いて。大丈夫だ、頑張れ私っ! あ、でも腰痛い……ちょ、ゴメンなさい休憩させて!?
「まぁ最初はそんなもんです。少し、休憩しましょうか」
「……あ、っはい……」
あっと言う間にボロボロや……ちょっとの間速さ上げただけだというのに。ふふ、お姉ちゃんは弱いなぁ。
「じゃあ、こっちに居ますんで、ゆっくり下りて……」
「あ、すいませ――」
……あれ? なんか、景色が凄い勢いで、流れて言ってませんか?
「……で、一瞬。休ませてもらった直後に……コレよ」
この状況、覚えがあるんだよ、君……学校でね? 馬で攫われた事があるんだけどさ。皆が見てなかった一瞬の隙で攫われたわけよ。
「ここまで状況が同じで、私の呪われっぷりを考えて、気付かない方が嘘だよ」
……なんで学園の馬の仔が、こんな所に来てんの?
呪いの流れは来ている……っ! 君を破滅させる様に……っ!




